2005年11月タイでの刑務所マッチにおいてTKO勝利、WBC女子世界ストロー級初代王座を獲得した菊地奈々子選手。2006年には初防衛にも成功し、今後も活躍が期待される菊地選手に、世界王座奪取までの道のりと女子ボクシングの魅力、さらに音楽がボクシングに与える影響について詳しくお伺いしました。
刑務所でのタイトルマッチ
─ボクシングをはじめようと思ったきっかけは?
10年近く前なんですが、たまたまTVで『あしたのジョー』の一挙放送がありまして、そのときに「これは私がやるものだ」と勝手に思ってしまったのがきっかけです。それまでは、世界戦があるときに父と一緒に見るくらいで、特にボクシングが好きだったわけではないんですが…、ジョーを見ているうちにどんどんボクシングの魅力に惹かれていきました。
─では、ボクシングを始めようと思って…その次の行動は?
すぐにボクシングジムに入ったんですが、当時、私はカメラマンのアシスタントをしていて、時間が不規則なこともあってジムを8ヶ月くらいで止めてしまったんです。そのあとも、やりたいという気持ちを持ちながらも、撮るほうに集中していたんですね。でも、たまたまウチの会長と知り合う機会があって、会長から『公園で何人か集めて練習しているから、よかったら来ないか』と誘っていただいたんです。やりたいという気持ちだけはずっと持っていたので、これが最後のチャンスだと思って26歳のときに始めました。
─始めたときの周囲の反応はいかがでしたか?
最初はボクササイズくらいだろうと周りも見ていて、『頑張ってね』くらいしか言われなかったんですけど、いつの間にか真剣にやるようになって、みんなビックリしていましたね。でも、試合が決まると『観に行くよ、応援するよ』と言ってくれて嬉しかったです。ただ…父親だけには試合することは言えませんでした。
─その気持ちは分かります。
父はそういうのが大っ嫌いなんです。ボクシングを始めた時も『なにをやっているんだ』という感じでした。その時点から父には何も情報を入れずに、デビューしたのもいつ試合をしているのかも伝えませんでした。母は知ってましたけどね。
─それは今も?
世界タイトルを奪ったときにはさすがにバレました。新聞に載っちゃったので…。父が新聞を見て、『これはウチの娘だ』と(笑)。でも、ちゃんと説明したら、『ここまで来ちゃったなら頑張りなさい』と理解してくれて、和解しました(笑)。
─話にも出ましたが、世界タイトルを獲得したのが7戦目。タイトル獲得のチャンスはどういう経緯で訪れたのでしょうか?
はっきり言うとピンチヒッターだったんですね。王者決定戦をする予定だったのが、一方の選手が怪我で急遽出場できなくなったんです。それで、世界中探したんでしょうね。話が来たのが一週間前で、しかも『刑務所でやりませんか?』と(笑)。すごく迷ったんですが、これはすごいチャンスだということで挑戦することに決めました。
─そして、タイでのタイトルマッチになったわけですが、大変な状況だったようですね。刑務所の中で観客は全員現地の囚人。完全アウェーで誰一人味方がいない。これはとても勝算があるとは思えません。
そうですね。タイでやる前に中国でも試合をしているのですけれど、そのときも自分では勝っていたと思った試合を判定で落としてしまっていたんです。そのときに、アウェーというのはそう簡単には勝たせてもらえない…倒さないと勝てないというのを始めて感じたんですが、それがあったおかげで、タイの試合でも、普通にやったら勝てない、絶対に倒しにいくという気持ちで臨むことができました。
─実際にタイトルマッチではTKO勝ち。これしかないという勝ち方ですよね。
はい。判定になったら、ほぼ諦めるしかないいう覚悟でやりました。
─現地の雰囲気はどうだったんですか?
やっぱり、ちょっと…普通とは違いましたね。自分のパンチが当たってもシーンとしているし、逆に向こうのパンチが当たると物凄く盛り上がる。それだけムードが相手に優位に働いていましたから。だから、TKOになってレフェリーが止めたとき、今まで騒がしかった観客席が水を打ったようにシーンとして。私自身が「何が起こったの?」って戸惑うくらいでした。あの雰囲気は日本では味わえないですね。
─その中で勝ちに向かっていく気持ちはどうやって保っていけたんですか?
プレッシャーもあったんですけど、逆に「これも“ジョー”っぽいじゃん?」って思えたんです(笑)。刑務所で試合ができるなんて普通に生活していたら絶対にできないですからね。ある意味ワクワク感もありました。
iPodで劇的に生活が変化
─菊地さんがiPodを使うのはどのタイミングなのでしょうか?
かなり多くの場面で使っています。朝起きて、電車の移動時間、練習ではランニングやシャドーで。家で料理を作っているときなどにも使いますね。iPodを携帯して音楽を聴くのが生活の一部になっています。
─ボクシングには音楽が必須というイメージがあります。
そうですね。やはりリズム感を養ったり、気持ちを盛り上げるために音楽は必要不可欠だと思います。
─試合の前に聴くことは?
聴いていますね。アップテンポな曲を聴いて、自分をガッと戦闘モードに切り替えています。
─場面場面で音楽を使い分けているといえますね。
それはありますね。例えばロードワークだったら、そんなにアップテンポじゃない、リラックスできる曲を聞きますね。それから、シャドーのときには、試合に近い状態にするためにハイテンションな曲をかけます。アドレナリンが一気にボンっと出ますからね。
─その中でiPodはどのように携帯しているのでしょうか?
いままでは大きいiPodを使っていたので、基本的にジャージのポケットに入れていました。でも、最近shuffleも使うようになって、使い方の幅が広がりましたね。ランニングでもまったく気になりません。
Profile
- Name
- 菊地奈々子(キクチ ナナコ)
- Birthday
- 1975/3/25
- Blood type
- A型
- Speciality
- 読書、仮装
Gallery
リング上で激しく打ち合う菊地選手
試合で見せる眼光の鋭さが印象的
iPod shuffleをポケットにクリップしてのランニング
シャドーボクシングにはiPodが欠かせません






