─でもそれは田村さんならではの発言かも。現役時代もX JAPANの曲で滑ったりして、お客さんの度肝を抜いていましたよね。
エキシビションでhideの曲を使ってみたりね!こんな曲だからって衣装も合わせて、髪もピンクに染めてみたりして、楽しかったなあ。Xの曲も好きでしたから、スケートと関係なく何度も聴く。すると聴いているうちに、この音楽だったらどう滑ろうかな?と、どうしてもそこに行き着くんですよ。
─スケーター、みんながみんな、そうなんでしょうか?ただ好きだな、と思った曲でプログラムを作ってしまえる?
うーん、プログラムの音楽の選び方は、人によって様々かもしれませんね。例えば有名な、誰でも知っている曲を選ぶことが多い選手、メジャーな曲はあえて避ける選手、それぞれいます。「カルメン」や映画の「仮面の男」などは人気がありますが、そうした曲を選んで誰かとかぶるのが嫌だから、あまり知られていない曲を選ぶ、という人は多い。でも僕はむしろ、良く知られた曲のほうが「あ、カルメン!」って見ている人に伝わりやすくていいんじゃないかな、と思っていました。同じカルメンで滑っても、結局は人によって様々なカルメンを見せられるのが、フィギュアスケートの面白さですから。
─誰もが知っている名プログラムの音楽は、なかなか使いづらい、という声もよく聞きますね。
確かに。でも「仮面の男」といえばソルトレイクシティ五輪でのアレクセイ・ヤグディンの演技が有名ですけど、ヤグディンのおかげで「仮面の男」のどの音楽が戦いを表しているか、スケートのお客さんはみんな知っている。すると多少表現がまずくても、ここは戦いの力強さを出しているんだな、とわかってもらえたりもしますよね。それがメジャーな曲の使いやすさかな。人とは違う音楽で滑りたい、という気持ちも分かりますが、あまりマイナーすぎる曲だと、よほどうまく表現しなければ「この音楽でいったい何を表したいのかな?」と首をひねられてしまう。音楽選びってそんな難しさがあるし、選手それぞれのこだわりもあります。
─フィギュアスケート、音楽にも注目して見ると興味が広がりそうですね。
コーチとしてさらに音楽と関わっていく
─そんな田村岳斗さん、これからはコーチとしてたくさんのスケーターにプログラムの音楽を提案していく、そんなお仕事も増えてきそうです。
今は京都のスケートクラブで濱田美栄先生というコーチといっしょに、小さな子どもからベテラン選手まで、たくさんのスケーターの練習を見させてもらってます。僕がプログラムを作るのはちびっ子スケーター中心なんですが…。20数名いる選手たちのプログラム、シーズンになると一度に音楽を決めて、曲を規定の分数に合わせて編集して、振り付けをして…と、すごく大変!まずは選手たちに僕のiPodを渡して、ここに滑りたい曲を5、6曲入れて来てよ、と言うんです。子供たちの方が僕よりiPodの扱い、慣れてますからね(笑)。さらに映画のサントラやクラシックなどもたくさん入れ、ちょっとした時間のある時にどんどん聞いて、選手ごとに滑らせたい曲を探すんです。そんな仕事にもiPodはいいですよね。で、選手たちの入れてくれた曲がその子にいまいち合わなかったら、却下(笑)。先生の選んだ曲はどう?となります。
─音楽選びからはじまって、小さなスケーターをプロデュースして行くわけですね。
実は…僕は音楽の成績、5段階で2だったんですよ。そんな僕が、こんな仕事をすることになるとは(笑)。でも様々な音楽を聴けば聞くほど、選手たちに滑らせたいな、と思う曲がたくさん見つかります。
─これから作っていきたいプログラムは、思い描くものはありますか?
数シーズン前からフィギュアスケートはルールが変わって、今はちょっとプログラムが全体的にごちゃごちゃしています。ステップではターンをたくさん組み込めば点数が上がる、スピンはいろいろな姿勢で回って…と、多くの要素を詰め込みがちなので。でも、ただ滑るだけの美しさ。複雑なポジション変化などなくても、きれいなキャメルスピン(体をT字にして回るスピン)をただ長く長く回り続ける気持ち良さ…そんなフィギュアスケート本来の良さを見せられるプログラムも、選手たちには滑らせてみたいんです。エキシビションナンバーなど、採点されない場ならば、それも可能かな。そこでフィギュアスケートっていいな、と思ってもらえるプログラムを作るためにも??動きが映えるための音楽選び、やはり大事になってきますね。
─田村さんがコーチとして銀盤に描き出すプログラム、その音楽、期待しています。
Profile
- Name
- 田村岳斗(タムラ ヤマト)
- Birthday
- 1979/5/28
- Blood type
- A型
- Speciality
- スポーツ観戦
Gallery
プリンスアイスワールド東京公演直前の練習風景。
iPodで「ヤマト」を聞きながらプログラムの通し練習。
リンクサイドでウォームアップ。アームバンドで腕に固定することも。
生徒たちのプログラム音楽を語るとき、コーチの表情に。





