
音楽は音楽。その先に繋がる文化の一端だ。
─インターネットでの音楽配信は、音楽をすぐにファンに届けられるのと同時に、ファンの反応もまた、アーティスト側にすぐに伝わるという利点がありますよね。こうしたネットの利便性を意識されているのでしょうか。
それほど意識していない。新作が出てその評判を気にするのは、むしろファンなのではないかと思う。ネットではそうしたファン・コミュニティの評判が、作品の評価に繋がっていくこともある。
DaisyMusicでは『COYOTE』の特集サイトを通じて、新しい試みとして「ブログプレーヤー」というブログパーツを無料で配布しています。これは、『COYOTE』収録曲のミュージック・クリップを皆さんのブログに自由に貼り付けて、視聴できるよう開放しているものだけど、こうしたアクションはメジャー・カンパニーにはできないだろう。ブロガーの方々には、このブログプレーヤーを『COYOTE』の作品レビューやコメントとともに活用してもらえるとうれしいです。
─そうした試みによって、音楽から広がる別のなにかが見えてくるかもしれないですね。
僕は70年代の音楽を多感な時期に経験しました。ロックンロール音楽やポップ音楽は、その先の未来やそこから繋がっていく何かを僕に見せてくれた。そこには決められた値段以上の価値があったんです。しかしその後、レコードビジネスがシステマティックになると、今やレコードやCDは、コンビニエンスストアで買うハブラシやティッシュペーパーと同じような扱いだ。それがいいことか悪いことなのかはわからないけど、ちょっと残念な気がするよ。
音楽はデータではなく、インフォメーションではなく、コンテンツではなく、音楽は音楽だ。その先に繋がる文化の一端なんだ。ブログプレーヤーといったブログパーツなんかを作ってコミュニティーに開放して行く先に、新しい音楽の楽しみ方が待っているんじゃないかと僕はポジティブに捉えているよ。
ファンと同じようにiPodを持って、いろいろな場所で聞いてみる。
─アップルが2004年にインタビューさせていただいた時に、佐野さんはiPodを使い始めたとおっしゃっていましたが、現在はiPodをどのように使われているのでしょうか。
最近は僕のファンの間でもiPodで音楽を楽しむという人が増えています。音楽を外に持ち出して、移動しながら聞くのは楽しい。僕の場合はレコーディングやマスタリングが終わったあとにチェック用としてiPodを使います。リスナーと同じようにいろいろな場所で聞いてみるんです。それは自分の曲を俯瞰から眺めるということでもあると思う。そうするとアルバムの曲順とか構成とかが見えてくる。今回の新作『COYOTE』でも、iPodで試し聞きしながら曲順を考えました。
─最後になりますが、Macのようなコンピュータや、デジタル技術が現代のロックに変化をもたらしているとするならば、どのような面だと思われますか。
安易なノスタルジーが許されなくなってきている。それがいいことか悪いことかわからない。でもどうだろう? 多くの人は案外ノスタルジーは悪くないと思っている。僕もそうだ。現代はデジタル技術によって、音楽でも映画でも劣化することなく保存することができるようになっている。
最近面白い試みをしました。僕は1981年に「ガラスのジェネレーション」という楽曲を出した。もちろんテープで録ったアナログサウンドですよね。それから20数年経ってからベスト盤を出したいという依頼を受け、過去の「ガラスのジェネレーション」のマルチテープを使って、僕のボーカルとピアノのみ当時の音を残し、残りを現在のバンドで演奏するという試みをやってみた(2006年発売の『THE SINGLES』に収録)。一種のマッシュアップですね。結果的には興味深い作品となりました。デジタル技術によって時代を超えたということです。23才のときの心の叫びが一瞬の内にフリーズドライされました。それはデジタル技術の恩恵がなければ実現できなかった。
─非常に面白いです。しかし、そういったデジタルにおける恩恵はあっても、先ほどもおっしゃっていたように、佐野さんが伝えたいものは音楽。その部分はいつの時代も変わらないということなのでしょうか。
はい。それが僕のフィロソフィーですね。
─ありがとうございました。
(2007年6月12日 Apple Store, Ginzaにて)
Profile
- 佐野元春
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1980年デビュー以来、一貫して重要なロック・アルバムを発表してきている。1992年、アルバム『Sweet16』で、日本レコード大賞アルバム部門を受賞。日本語をビートに乗せた独特なソングライティングはその後のソングライターに大きな影響を与えた。活動は音楽だけにとどまらず、DJ、雑誌編集、インターネットなど多岐に及ぶ。2004年、音楽レーベル「DaisyMusic (デイジーミュージック)」を設立、2007年6月、新作アルバム『COYOTE (コヨーテ)』を発表。
Gallery
『君が気高い孤独なら』ビデオクリップを上映
『Coyote』セッションメンバーも全員参加
メンバーお気に入りの楽曲をiTunesで紹介
大勢のお客様に楽しんでいただきました
新作『COYOTE』にまつわる充実のトーク








