Special Report
iTunesでリーズナブルおすすめコンピを楽しもう
現在、iTunes Storeでは1,100万曲を超える楽曲が配信されています。その中でも、アルバムチャート上位に常に並び、ロングヒットとなっているのが、今回紹介する「リーズナブルおすすめコンピ」のシリーズです。カフェやインテリアショップなどで流れているお洒落なジャズやポップスを、手頃な価格で楽しめるのが人気の秘密。Blue Note やMotownなど、名レコードレーベルの貴重な音源を収録したコンピレーションも用意されており、音楽マニアの方にはもちろん、様々なジャンルの音楽を簡単に楽しむ方法としておすすめのアルバムが、毎月のように続々と配信されています。
先月iTunes Storeに登場した『Coolin' Vox 〜after beach party with kula〜』は、R&Bチャートで1位、総合チャートでも3位を獲得するなど、まさに今年の夏を代表するコンピレーションとなりました。このアルバムの選曲とミックスを手がけたのが、OLD NICK aka DJ HASEBEさん。DJ/サウンドプロデューサーとして20年のキャリアを誇るDJ HASEBEさんに、コンピレーションの楽しみ方や、iTunes Storeで配信中の作品について、お話を伺いました。
iTunes Storeならではの手頃な価格が
リスナーにとっての大きな魅力。
─『Coolin' Vox 〜after beach party with kula〜』はどんなきっかけで生まれたコンピレーションだったのですか?
湘南・江ノ島の近くにある腰越海岸に、KULA RESORT 2009という新しいスタイルの海の家があったんです。7〜8月限定で昼間は海の家、夜はバーになって、DJイベントやライブイベントもできる場所で、僕もここでDJをやりました。『Coolin' Vox』は元々、このKULAのためにつくったコンピレーションです。いわゆるラウンジ系のリラックスしたアレンジによる、洋楽ヒット曲のカバー曲が31曲入っています。僕はミックスをつくる時に31曲というのがなぜか好きなんですよ(笑)。
─昔からDJ HASEBEさんを知っている人たちにとっては、ダンスフロア向けの選曲じゃないことに驚いた方もいたでしょうね。
コンピレーションのサブタイトルにもあるように、お客さんがビーチパーティで遊んだ後、その帰りがけに聴いて欲しいと思ってつくった選曲なので、パーティの余韻を味わいながら、徐々にクールダウンしていくような内容にしています。僕はDJを長いことやってきましたが、こういうユルい感じの選曲でミックスしたのは初めてだったので、自分でも新鮮でした。昔から僕のDJや作品を聴いてくれている人たちには「どうしたの?」って思われるかもしれないけど、僕の中では自然な流れなんです。
今回、『Coolin' Vox』と『VERY DELICIOUS』という2つの作品をiTunes Storeで配信したのですが、どちらも「OLD NICK aka DJ HASEBE」という新しい名義で出しています。音楽のジャンルやクラブという場所に縛られるのではなく、よりクロスオーバーに自分のやりたいことをやっていこうという理由で始めたのが、「OLD NICK aka DJ HASEBE」なんですよ。だから、この2つのアルバムのリリース後、すぐにiTunesのリスナーから大きな反響をもらえたことは本当にうれしかったです。この名義でやり始めたのはまだ最近なので、これからもっといろんなことをやっていって、みんなを驚かせていきたいですね。
─今、コンピレーションがiTunes Storeでたくさんの人に支持されている理由をどう分析しますか?また、これからもっといろんな音楽を聴いてみたいと考えている人に、どんな楽しみ方を提案したいですか?
まず、iTunes Storeならではの900円から購入できる価格設定が大きいでしょうね。この価格なら、リスナーが気軽に買ってみようかなって思えるはず。その中でも、この『Coolin' Vox』は31曲も入っていて、すごいお得感があると思います。
そして何よりも、コンピレーションをきっかけに、今まで知らなかった音楽に出会えるのは素晴らしいこと。『Coolin' Vox』のようにカバー曲のコンピレーションなら、気に入った曲があればその曲のオリジナルもiTunes Storeで検索して聴いてみたいって思うだろうし、OLD NICK aka DJ HASEBEって他にどんなアルバムを出してるんだろう、って思って聴いてくれる人もいるかもしれないし。とにかく自分の直感を大事に、自由にいろんな音楽を楽しむことをおすすめしたいです。
今の若い世代は、ロックしか聴かないとか、ヒップホップしか聴かないとか、そういう人は少ないんじゃないかと思うんですよね。アメリカでもヒップホップやR&Bは、もうロックやポップスと同じぐらいメジャーな存在。今はあらゆるジャンルがミックスされた音楽の時代だから、これからいろんな音楽を聴きたいという人にとって、コンピレーションの役割は大きいと思いますね。
カフェで流れているようなラウンジ系もあれば、ダンスミュージック寄りの選曲もあっていいだろうし、その時の気分やシチュエーションに合ったいろんなタイプの選曲があっていいんじゃないかな。僕も今後は2〜3ヶ月に一度とか、自分なりのペースを決めて、新しいミックスをつくってどんどん配信していけたらいいなと考えています。
音楽配信でもいい作品をつくれば確実な手応えを得られることを実感した。
─『VERY DELICIOUS』も人気のアルバムですが、選曲がユニークですね。
カバーアルバムをつくらないかっていう企画をもらって考えたのは、70年代や80年代といった昔の曲ではなく、2000年以降の比較的新しい曲を自分なりの解釈でカバーしたいなっていうことでした。しかもクラブヒットではなく、Tahiti 80やMaroon 5などのロック/ポップ系の曲を選んだんです。あえて、誰もが「あ、これ聴いたことあるな」って思える曲にしたんですよ。
そして今回僕が選んだビート(=ブレイクビーツ)は、僕が大好きだったDe La Soulとか、90年代のヒップホップのアーティストが多用していました。それを今のテクノロジーを使って、今の音にしたいっていうのが今回のテーマでしたね。結果的に、今までにないテイストを感じさせるユニークな作品になったんじゃないかと思います。
─マニアックな選曲で勝負するのではなく、耳馴染みのある最近の曲をいかに新鮮に、ポップに料理するかという視点でつくられているのがこのアルバムの面白さですね。
僕はイベントによっては、あえてヒップホップやハウスといったダンスミュージックをかけずに、ロックやポップスだけの選曲でプレイすることもあるんですね。だから、『VERY DELICIOUS』もそんなに普段の自分とかけ離れたことをやったわけじゃないんですよ。
アルバムをつくるにしても、イベントでDJをやるにしても、その時々のテーマが必ず決まっているわけですが、そのリクエストにはしっかり応えつつも、そこでいかに自分の色を出すかを考えるのが僕は楽しいんですよね。DJとしてのキャリアはもう20年ありますから、どんな音楽でもミックスできる自信はあります。でも、同じことをやり続けていても面白くないので、今まで自分が培ってきた知識やスキルを自由自在に使って、常に壁を壊していきたいなと考えています。
─DJ HASEBEさんはDJとして、レコード、CD、データという音楽流通の移り変わりをずっと目撃してこられたわけですが、今後はどうなっていくと思いますか?
アメリカでは音楽配信が既に大きな市場になっていますよね。日本はまだパッケージなのかデータなのか、現時点ではまだはっきりした着地点は決まっていませんが、やがてはアメリカのようになっていくのではないでしょうか。僕の場合、DJも全てデジタルでやっていますし、音楽配信でもいい作品をつくれば確実な手応えを得られることは実感しましたから、もう後戻りすることはないと思いますね。
─今後は、どんなことに挑戦していきたいですか?
自分の作品の幅を広げることによって、現場での活動の幅も同時に広げていきたいと思っています。コンピレーションももっとつくりたいし、ここ数年の自分の仕事をまとめた作品もつくりたいし、やりたいことはたくさんあります。クラブやカフェ、ラウンジなど、場所はどんなところでも構わないんですが、自分の同世代も若い世代も関係なく、幅広い客層が楽しめるようなイベントにも積極的に関わっていきたいですね。
─ありがとうございました。
(2009.8.26 iTunes Japanオフィスにて)










