
北海道の、そして道都・札幌の文化拠点として北の美術をリードしてきた北海道立近代美術館が、今年で開館30周年を迎えました。同館は現在開催されている特別展「野田弘志展 写実の彼方に」から、従来の音声ガイダンス機器に替わる音声・映像ガイドとしてiPodを導入し、話題を呼んでいます。「iPodは教育効果が高く、鑑賞能力を養うことができる」と語る、北海道立近代美術館・学芸副館長の佐藤友哉さんにiPod導入の狙いと美術館の未来像についてお聞きしました。さらに、「どこの美術館も視聴覚機器やデータベースによる情報提供などのデジタルツールやハード環境はほぼ完成されているが、今後は美術館の活動を広げるためのソフトを充実していく必要がある」と言う、同館学芸員の土岐美由紀さんに、新たな活動の可能性を探る同館がiPodを特別展でどのように活用しているのかを、特別展開催を前にお伺いしました。
音声・映像・文字情報を一体化できるiPodは、ミュージアムガイドに最適。
─開催中の特別展「野田弘志展 写実の彼方に」の見どころを教えてください。
土岐 日本の具象画壇を代表する画家、野田弘志先生の10年ぶりの回顧展で、1960年代の初期作品から今年の新作まで約90点を一堂に集めた大規模な内容になっています。実は野田先生は北海道にゆかりのある方で、現在北海道の洞爺湖畔にアトリエを構えておられます。また、北海道から国際的な作家を育成したいと、「だて噴火湾アートビレッジ」の絵画塾で後進の指導もされています。本展は野田芸術の集大成を多くの方にご覧いただたける、またとない機会です。
─iPodの導入を決めた理由を教えてください。
土岐 今年1月、派遣研修先の札幌芸術の森美術館で、iPodを活用した鑑賞ガイド「iPodガイド」の導入を手がけました。そこでiPodに今までの音声ガイドにはない可能性を感じたことと、iPodを利用したお客様から「作品と深く向き合えた」という感想がとても多かったので、北海道立近代美術館でもぜひ活用してみたいと思いました。1点の作品と向き合った時、見ているようで実は認識できていない部分というのもあると思います。でも、iPodを使えば認識できていなかった点を映像で示し、さらに音声で特色を伝えられます。従来の音声ガイドでは気づけなかった表現のポイントを理解することができるので、作品との深い対話を促せるのだと思います。また、iPodを活用する決め手として、Apple Storeが札幌の中心部にあったのも大きいですね。スタッフから直接トレーニングを受けられるなどのサポートがあったおかげで、イメージしたガイド・コンテンツの制作ができたと思います。
─iPodガイドの制作にあたり、どのような点にこだわりましたか?
土岐 札幌芸術の森美術館では、展覧会会場の文字情報をできるだけカットしてiPodのみでの解説を試みました。しかし、こちらでは別の形でiPodの魅力を最大限に引き出したコンテンツを作ってみたいと思い、会場で目にすることができないような映像情報を豊富に盛り込んでいます。画家の幼少期の貴重な写真をはじめ、担当学芸員が開催直前に野田先生のアトリエ内外で撮影した映像などです。どんな環境で画家が制作しているのかがイメージできるようなアトリエ近郊の風景や室内風景で、作品に描かれている動物の骨などが部屋いっぱいに並ぶ様子もご覧いただけます。
─従来の機器と比べてiPodが優れていると思われる点はどこですか?
土岐 自分のペースでガイドの順番を選択できるところが利用者にとって魅力的だと思います。作品を見ながら解説を聴いたり、椅子に座って展覧会概要を聴いたりと、思い思いの場所で使える点ですね。さらに、学芸員自身がコンテンツの制作・編集・アップデートを簡単にできるところもメリットです。ですから、開会前日の作家インタビューを追加することも可能なわけです。iPodは決してガイド機能だけに留まらない、展覧会そのものをデザインできるツールだと感じています。これまでは、作品と解説パネル、DVDなどの固定式映像、音声ガイドなどが展覧会を構成する要素となっていました。でも、iPodは音声と映像が一体で、しかもフレキシブルなモバイル機器ですから、展覧会はもちろん、ワークショップなどの教育的なアクティビティーのデザインをも変えていくのではないかと、大きな可能性を感じているところです。
Information
- 会 期
- 2007/6/12(火)〜7/14(土)
- 開館時間
- 9:30〜17:00
※7月中の金曜日は19:30まで - 会 場
- 北海道立近代美術館
野田弘志展 写実の彼方に








