
子どもの創造性を引き出すiPodで新しい芸術教育をデザインする。
—北海道立近代美術館のアクティビティー・デザインとは、主にどういったものを指しますか?
佐藤 我々は1977年の開館以来、芸術教育の重要性に着目し、全国でも先駆的に取り組んできました。アクティビティー・デザインの核になるのは、幼い頃から芸術に触れ、観察し、感じ、自分の心に起きたことを他者に伝えるアートの読み書き能力、主に鑑賞力を養う「アート・リテラシー」です。この能力は人間性を育む上で非常に重要なものですが、学校の授業だけでカバーすることは難しいのが現状です。今後、美術館に求められるアート・リテラシー教育の高まりとともに、iPodによって新たなデザインの方向性を探っていけるのではないかと期待しています。
—現在計画されているiPodを使った教育活動にはどのようなものがありますか?
土岐 小学生と保護者を対象にした夏休み恒例の「ミュージアム・スクール」で、iPodを用いたワークショップを企画しています。子ども自らが発見した作品の魅力や、初めて見る美術館の舞台裏などを自分で撮影し、映像とナレーションで紹介するオリジナルガイドを作ります。ガイドの制作を通して作品鑑賞の楽しさに気づいてもらえることはもちろん、クリエイションの面白さも同時に味わってもらえます。出来上がった映像ガイドは、DVDにして参加者にプレゼントすることもできます。また、「子どもの目で見たミュージアムガイド」としてオリジナルガイドを一般公開しますので、iPodはさらにインフォメーション・ツールとして活用されるというわけです。
アートの入門編から上級編まで鑑賞者に合わせた作品解説も可能。
—将来、iPodの導入によってどのようなサービスが可能になるのでしょうか?
佐藤 iPod向けのコンテンツは非常に低コストで制作できるので、利用者に無料で貸し出すことができます。また、作品を熟知した学芸員自身が外部の手を借りずにコンテンツを制作できるため、作品の著作権問題さえクリアになれば、将来、出来上がったコンテンツを学習教材として、教育現場に提供することも可能になると思っています。もし今後、美術館と医療機関の連携が生まれると、美術館へ来館できない入院患者が病院に居ながら楽しめる美術コンテンツや、心のケアに有効な美術コンテンツを制作し、医療機関向けにiPodを貸し出すことも可能だと思っています。
土岐 iPodは情報蓄積能力が高いので、より高度な情報を提供できるのではないかと思っています。例えば、作品の解説をする際に従来であれば展示パネルを制作し、ある程度のスペースを設けなくてはならなかったのですが、iPodなら場所をとりません。ですから、子ども向けの解説や美術入門者向け、上級者向けというように、鑑賞者のレベルに合わせた複数の作品解説を編集することも可能だと思います。それにiPodのコンテンツにゲーム性を持たせて、楽しみながら作品理解を深めるという作り方もできます。利用者が聴きたいコンテンツを自由に選べるスタイルは、美術館のサービスにおいて今後ますます求められていくと感じています。
—デジタルツールへの取り組みも含めた、北海道立近代美術館の今後のビジョンをお聞かせください。
土岐 本展でもiPodガイドのコンテンツを用いた連携授業を札幌平岸高校デザインアートコースと行いますが、今後は教育現場と連携して、学校で活用できるデジタルコンテンツの開発・制作などもできたらよいですね。また、iPodの楽しみ方をいろいろと探りながら、一時期だけの展覧会情報を提供するだけではなく、美術館そのものの利用法や常設展の作品解説など、コンテンツ内容を充実させたいと考えています。
佐藤 美術館も作品以外のソフトが求められる時代になったと感じています。ですから、iPodを知財として活用できるよう、今後は教育的価値を高めるコンテンツづくりに力を入れていきたいです。
Information
- 会 期
- 2007/6/12(火)〜7/14(土)
- 開館時間
- 9:30〜17:00
※7月中の金曜日は19:30まで - 会 場
- 北海道立近代美術館
野田弘志展 写実の彼方に








