
美術館は美意識を刺激する場所。iPodはその点でも優れている。
—従来の音声ガイダンス機器と比べ、iPodはどのような部分が優れていると思いますか。
美術館は美意識を刺激する場所ですので、まずiPodがデザイン性に優れているのが一つのポイントです。またiPodはコンパクトでさらに片手で簡単に操作できるので、通常の大きなガイダンス機器よりも使用感が良いですね。感覚的に操作ができますので、実際に操作に関してのトラブルは今のところほとんどありません。 一番優れている点は、なんといっても音声と共に手元で映像を見ることができることですよね。iPodを使って展示作品のディティールを映像と音声によって紹介することで、改めて作品の表現の面白さや特色に気付いていただける場合もあるのではないでしょうか。
—実際にこの企画展には何台のiPodが用意されていたのでしょうか。
iPodを採用するのは札幌芸術の森美術館としても初めての試みでしたので、貸し出しの業務がスムーズにできるかといったことも含め、10台を無料貸し出しすることに決めました。現在までのiPodの稼働率は約34%ですが、有料貸し出しの平均的パーセンテージをかなり上回ってます。入口でお貸しするタイプの展覧会であれば、稼働率はさらに上がっていたでしょう。
—プログラムの内容に関して注意された点、工夫された点は?
お客さまにはiPodが置いてある最後のスペースに辿り着くまでに十分に時間を使って展示を鑑賞していただいているはずですので、その後にiPodを使用していただくにはプラス30分が限界だろうと考え、3〜4分の番組を8プログラム作成しました。
しかし実際のiPodの貸し出し時間は短くて30分、中には一時間以上と長時間借りられるお客さまがほとんどでした。それはiPodを手にしてまた展示室に戻っていくからなんですね。iPodを借りたその場にある椅子に座ってゆっくり見られるのかと思いきや、再びiPodの映像と解説を聞きながら作品に向かわれるのは意外でした。
内容に関しては展示作品の解説の他に、基本的な情報として作家のポートレートや制作現場の写真などを入れています。興味を抱いた作家に関しては他の作品も見てみたいと思われるはずですので、今回は出品されていない同一作家の作品も映像で紹介しています。
アンケートでは、「iPodの解説は目新しく面白かった」、「作者の事がわかりやすいし、展示されていない作品も見られて良かった」などと、お客様にとってもiPodというツールが新鮮に感じられたようで非常に好評を得ています。
iPodによる音声ガイドは、文字パネルを外注するより低コストで制作することができた。
—プログラム制作の実作業はどのようにして行われたのでしょうか。
プログラム制作は全てiMovieやGarageBandを使用しました。これまで、音声ガイドを制作するのは来場者数の見込める大規模な巡回展というのが一般的で、更に映像制作に関しては外注で行うためにコストと時間が非常にかかることから、利用するにしても有料のものが多かったんです。しかし今回のガイドに関しては文字の解説パネルを外注するよりも低コストで制作することができ、さらに短時間で制作することができたので、無料で提供することができました。
—学芸員である土岐さん自身がプログラムを制作されたということですが、クオリティに関しては満足できるものができたのでしょうか。
私自身が徐々にテクニックを覚えていったので、最初に作ったプログラムよりも後に作ったものの方が色々なエフェクトを駆使しているという差はありますが(笑)、クオリティ的には十分に満足できるものが出来上がったと思います。
またプログラムを制作することで様々な可能性が見えてきました。自分で制作できるということはアップデートも容易にできるということですから、会期中に新しいアイデアが生まれたら更に良いプログラムにすることもできますし、また公開制作のような進行形で見せていく企画であれば、解説を更新していくことも可能です。ソフトを簡単に使えることが、いろんなアイデアを可能にするんです。今後、こういった映像と音声のガイダンスを展覧会デザインの中にいろいろな形で組み込む事が出来るだろうというのが、今回iPodを導入したことでの大きな発見ですね。
作品写真
最上段/高橋禎彦『花のような』(一部)
左段/深井隆『逃れゆく思念−青空または瞑想』北海道立旭川美術館蔵(右)
『逃れゆく思念』中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館蔵(左)
Information
- 会 期
- 2007/1/20(土)〜3/14(水)
- 開館時間
- 9:45〜17:00
- 会 場
- 札幌芸術の森美術館
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