歌詞もアートワークも楽しめる「日本初」のスペシャル特典
──今回、ニューアルバムの配信では、楽曲にボーナスビデオ「Forgiveness」と「インタラクティブ・ブックレット」が付属しています。
そうですね。音楽配信というのが今は過渡期で、面白い時代だなと思います。「インタラクティブブックレット」は、日本人では初の試みなんですよね? もともとビジュアルはすごい大事なんです、私にとって。80年代にはヒプノシス(*ピンク・フロイド、レッド・ツェッペリンなどのアートワークを手がけたイギリスのデザイン・グループ)とコラボレーションしてますし、CDになってからも信藤三雄さんに初めてCDジャケットのアートワークを担当してもらったりして。今回の配信でも、そういう新しい世界を切り開けたら楽しいなって思ってます。
──音楽とプラスアルファのアートワークが楽しめるということで、リスナーもさらに広がりそうですよね。
私自身はよく読めてないんだけれど(笑)、プロデューサーやスタッフの決定に私は従うんです。私は「ユーミン」って存在に肉体を与える立場なので。
──「自分は『ユーミン』の一部」という認識は、すごくユニークですね。
そうですね。たぶん素材として「これは外せない」という揺るぎないものがあるから、後はまな板の上の鯉になれるんだと思ってます。コスチュームにしてもそうですよ。デザイナーとスタイリストが持ってきたものは絶対いいと思うし、その衣装に自分から身体を合わせるし、それがちゃんと合わせられる自分にしておく、っていう考え方だから。
──今回の配信でいくつかの新しい試みを実現していますが、楽曲制作の中でも「今」という時代の空気を意識された部分はありますか?
意識はしないんですけど、自然に表現された部分はあるかもしれない。本当の海を見るには出かけなければならないし、人も会わなければわからない部分がある。珍しい花の香りも、嗅がないとわからないっていうのが、いろんなツールの発達によってより実感できるようになった。便利になることと、本当にそこにいないとわからないことが対比的に認識できるようになったのは、すごくいいことだと思うんです。
──実際に体験しないと得られない「何か」があることにみんなが気付きはじめる、ということですね。
そう。今度のアルバムの中でも携帯電話を歌った歌詞がいくつかあるんだけれど、そこにはやっぱり「声が聞きたい」「声が聞けたら」という、ツールによって気軽に飛んでゆける気持ちと同じだけ、肉声が欲しいということを、自然に歌詞にしていた感じですね。
好きなときに好きな場所で楽しめる「茶飲み話」感覚のPodcasting
──今年からPodcasting「あなたのおしゃれを守ってあげたい」がスタートしましたが、通常のラジオとPodcastingで楽しみ方は変わると思いますか?
時間も空間も縛られずに聞けるっていうのはすごくいいことなんじゃないかな、と思うんです。やっぱり寂しいときって、時間・場所関係なく訪れるから。肉声で、ワイワイガヤガヤしている雰囲気を、いつでも聞いて楽しんでもらえたらと思います。
──松任谷さん自身がPodcastingをやっていて楽しいな、と思うことは?
やっぱり自由な部分ですね。通常のラジオ番組だとお送りする時間帯とか、リスナー層も意識するけれど、ポッドキャストは気軽に茶飲み話をする感覚で気楽に出来るから。そういうお気楽なバイブレーションがきっと伝わると思うんです(笑)。
──松任谷さんはこれまで、ラジオ番組、インターネットラジオ、そしてPodcastingと、さまざまなメディアでトーク番組を続けられていますが。
ラジオやPodcastingみたいなトーク番組はすごく好きなんです。嘘がつけないんですよ。調子悪いときに空元気でしゃべったとしても、必ず聴き手には伝わっちゃいますよね。気持ちの中にざらついたものを持ってると、どんなに丁寧に優しくしゃべっても、そういう気分は伝わっちゃう。逆にぞんざいな冷たい言い方をしても、あったかいものを持ってると、不思議とそれが伝わるメディアなんですよね。嘘つけないからこそ、そこは開き直って。だからやってて楽(笑)。皆さんも、好きなときに好きな場所で気楽に聞いてもらえたらと思います。
(2006年5月8日、Apple Store, Ginza にて)
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