Podcastによる「いつ、どこででも」受けられる授業
同志社大学 神学部
同志社大学では2000年からストリーミングによるインターネット授業をスタートし、今年4月から神学部でPodcastを利用した授業を開始しました。これによって、学生が教室に集まって授業を聞くという今までの授業形態が、大きく変わる第一歩となりました。日本全国でも初の試みとなる「Podcast授業」について、詳しくお話を伺いました。
教室での授業という既成概念を、Podcastが解放
神学部・神学研究科教授の小原克博氏は、今年の4月から2つの講義をPodcastで行っています。一つは「建学の精神とキリスト教」で、創立者の新島襄の略歴や教育思想などに ついて学びます。もう一つは「戦争・正義・平和―宗教多元社会の中で」(宗教学6)と題し、現代世界における紛争,戦争,テロなどの問題を比較宗教学的な視点から考察していく授業です。
「そもそも私がインターネット授業を始めたのは、1000人もの学生に対して教室で教えるということに対して、限界を感じたからなんです。それほど大きなスペースを毎回確保するのも大変ですし、1000人クラスになってくると授業を聞いてもらうだけでも大変なんですね。これでは質の高い授業を提供することはできない、何か他の方法がないかと考えていたときに、まずはストリーミングによるインターネット授業をやってみることにしたんですね」(同志社大学 神学部・神学研究科教授 小原克博氏)
ところがストリーミング放送の場合、学生はブロードバンド回線に繋がったパソコンの前にずっと座っていなければならない、という制約がありました。普段からiPodのヘビーユーザーだった小原氏は、CNNやBBCのニュースなどをiPodで見ているときに、“これを授業で使ったら、いつでもどこでも勉強できるのでは?”と直感したそうです。
「iPodの普及率は学内でもかなり高いですし、仮に持っていなくても大学のパソコンなどで授業を見ることができます。学生には私のPodcast授業を見た上で、年14回のレポートを提出してもらうのですが、今までの授業に比べてより自由な環境で、じっくり勉強をしてもらうことが可能になりました。就職活動でなかなか学校に来られない学生たちにも、非常に好評ですよ」(小原氏)
今年は“Podcast授業元年”ということで、まだPodcastを理解していない学生や、他学部の教授たちに対しての啓蒙期間としても考えているそうです。神学部からスタートしたこの試みが、やがて大学全体に広がっていく可能性も十分感じているそうです。米国の有名大学の教材を無料で提供する「iTunes U」にも刺激されたという小原氏は、これからの大学は学内に対するコンテンツの提供だけでなく、中学・高校や社会に対しても授業の質そのものをアピールしていくべきだと語ります。
「社会に対して開かれた大学というものを実現するには、Podcastのような誰もがアクセスできるテクノロジーが有効だ思うんです。実際、今公開しているPodcastコンテンツも、卒業生から「見ていますよ」という声がたくさん届いたことに驚きました。こうなってくると、今度は高校生もいろんな大学の授業をPodcastで見た上で、大学を選ぶという可能性も十分出てきますよね。当然、大学側も授業の質や内容について今まで以上の努力と工夫を迫られますが、学びたいという意欲がある学生にとってはとても良いことじゃないでしょうか」(小原氏)
授業の編集は、1〜2日で完成
Podcast授業について多くの人が気になるもう一つのポイントは、制作時間がどれくらいかかるのか、と制作方法ではないでしょうか。実際に小原氏の授業をPodcast用に制作している大学院生の横田氏に伺いました。
「主にMac miniで編集を行っています。撮影に1時間、撮影素材の編集で1時間、その後小原教授のPowerPointのレジュメを取り込んだり、動画全体の編集をFinal Cut Studioで3時間程度行います。あとはエンコーディングとデータ書き出し、サーバへのアップに3時間といった ところでしょうか。私は元々は動画編集の経験はありませんでしたが、今では早くて1日、最大でも2日もあれば1回の授業を編集できますよ」(横田氏)
“最小限の手間で、最大の結果を出すために、Appleの製品とソリューションは大きな力になってくれますね”と語る横田氏。今後はFinal Cut Studioのもっといろんな機能を駆使した映像を作ってみたいとのことです。
小原氏の授業では、屋外の映像とスタジオの映像を織り交ぜながら、なるべく見ている人が飽きないような工夫が凝らされています。ただ先生が同じ場所、同じアングルで話しているだけではつまらないので、TV番組感覚で見られるようなコンテンツ作りを心がけているそうです。こうした工夫の積み重ねが、Podcast授業をもっと面白いものにしていくのでしょう。今後、小原氏の授業が横田氏の手によって、どんな風に進化していくのかが楽しみです。

新島襄が1875年に同志社英学校を設立したのを始まりとする。以来130余年、「キリスト教主義」「自由主義」「国際主義」を教育理念とし、校祖が「同志社大学設立の旨意」で唱えた「良心を手腕に運用する人物の養成」を常に目指してきた。近年は時代の要請とともに、様々な改革を実践している。長く続いた6学部(神・文・法・経済・商・工)体制が長く続いていたが2004年以降は政策学部、社会学部、文化情報学部を開設し、今春には生命医科学部とスポーツ健康科学部を新設した。工学部を理工学部に改編し、来年設置予定の心理学部を含めると12学部となる。2013年を目処に、今出川校地(京都市内)は国際主義、リベラル・アーツ、京田辺校地(関西文化学術研究都市)は生命、情報、先端技術、人間をキーワードとした教育研究拠点に再編する。今後もますます「国際主義」を推し進め、世界的教育研究拠点を目指す。