ICC

iPod touchで体験する映像と身体の不思議な関係

アニメーション・ワークショップ「指で見る 目で触る」


研究の延長から生まれたiFlipBook

今回のワークショップ「指で見る 目で触る」の講師を務めたのは齋藤達也氏と井高久美子氏。お二人は東京藝術大学大学院の映像研究科に所属しており、映像体験と身体性の関係についての研究を進められているそうです。井高さんは以前、ハンドル、ネジ、鉛筆削りなどを回すと映像の時間軸を制御できるという、ユニークな映像の再生装置を開発したそうです。
「実はコマ送り、コマ戻しといったように、単に映像の時間軸をコントロールしているだけなんです。たとえば鉛筆削りを回すと、映像の中でリンゴがむけたり、風車が回ったりするんですが、実際に自分でリンゴをむいたり風車を回しているような感覚になるんです。まるでそこに映っている対象を操っている気分になれるのがすごく不思議なんですね」(東京藝術大学大学院 映像研究科助手 井高久美子氏) 今回のiPod touchを使ったワークショップでも こうした研究と同じような感覚を得られることができました。使用されたソフトウェア、iFlipBookを開発した齋藤氏は、今回のワークショップでiPod touchを採用した理由をこう答えます。

“iPhone SDK、実機(iPod touch)ですぐに試せる環境は、情報を得るための手段としてだけではなく、クリエイションの為のツールとして可能性を感じる。”

—東京藝術大学大学院

映像研究科 齋藤達也氏

「iPod touchのカバーフローを、指でさっと動かすその身体的感覚がすごく心地いいなと思ったんですよね。目で見るのではなく、指で触れるという新しい映像体験でした。そこでまずは、みんなが使えるツールを用意することで、その映像との新しい関わり合いを探索するということをやってみようというのが動機でした。」(東京藝術大学大学院 映像研究科 齋藤達也氏)
また、タイミング良くソフトウェア開発キットiPhone SDKが公開されたこと、そしてiPhone 3Gの発売と同時に公開されたApp Storeの存在がiPod touchを選んだ大きな理由にもなったようです。「iPhone SDKという開発環境として使いやすいものが出てきたことと、それによって実機上で今回のようなアイデアをすぐに試すことができたのが大きいですね」(齋藤達也氏)

井高氏と齋藤氏は、今回のワークショップでの子どもたちの反応についてこう答えます。
「やはりすごく驚いていたのが印象的でした。動画のアクションを選ぶときも、子どもたちはすごく感覚的に選ぶんですよね。大人だったら頭で選んでしまうところを、子どもたちはこうしたら気持ちいいだろうと。そういう部分は子どもってすごいなあと思いましたね」(井高久美子氏)

「自分でコマ撮り撮影したものが、iPod touch上で指の動きに合わせて反応する。そのフィードバックがすごく鮮やかに感じるんでしょうね。指で操作するという、自分が撮った写真に能動的に関与する感覚がすごく嬉しいんだと思います。また、iFlipBookは子どもだけではなくて、メディアアートや映像インスタレーションなどを本格的にやっている人たちにとっても、面白い素材なのではないかと思います」(齋藤達也氏)

iPhone SDKの公開により、iPod touchの可能性はさらに広がる

齋藤氏は今後iFlipBookを世界中で公開し、映像と身体の関係性を探るための実験場にしたいと考えているそうです。またiPhone SDKの公開によって、今後様々なユニークなソフトウェアが続々と公開されることにも期待を寄せています。
「iPod touchは元々、音楽を聴くのがメインのハードですが、iPhone SDKの公開によって誰でもソフトウェアの開発ができるようになったことで、アップルが想定していなかったユーザーベースの面白いアイデアが出てくると思います。教育の観点から考えると、受動的に情報を得るための手段としてだけでなく、アイデアを実現するためのクリエィティブなツールとしても可能性を感じます。カメラがついているiPhoneであれば、iPhoneで撮影したものを使ってそのままインタラクティブなコンテンツが作れるものとか。今後はそういうものにも挑戦していきたいですね」(齋藤達也氏)

「君の身体を変換してみよ」展は8月31日まで開催中です。 会期中には4台のiPod touchが設置され、今回のワークショップで子どもたちが作った作品も8月19日から31日までの期間特別展示されます。是非訪れて、この不思議な感覚を体験してみてください。
「iFlipBookは今回子どもたちに体験してもらいましたが、今後は様々な年代の人にも体験していただきたいと思っています。
現在ICCではSDKのライセンスを申請中です。今回のワークショップを皮切りに、今後ICCならではの特徴のあるコンテンツを提供していければと思っています」(伊村氏)