学びを誘発するモバイルツール、iPod touch
芝浦工業大学柏高等学校
10年前から生徒さん一人に対して一台のノートパソコンを持たせる1 to 1環境を実現するなど、常に先端の情報教育を提供してきた芝浦工業大学柏高等学校。平成16年度に文部科学省によりスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定された同校では、日本で初の試みとなるiPod touchを活用した授業が行われていました。
iPod touchで映像を見ながら、高度な実験をわかりやすく安全に
この日、理科実験室には高校1年生の生徒さんたちが集まり“生命科学”の授業が行われていました。大腸菌にクラゲの遺伝子を取り込ませるという高度な遺伝子組換え実験です。ピペットやシャーレなどの実験器具と共に、生徒さんたちが手にしていたのはiPod touchでした。
このiPod touchの中には授業を担当する理科教諭、奥田宏志先生が自らiMovie '08で制作した実験の映像が入っていました。
通常の授業であれば説明書きのプリントを見て実験の手順を確認し、わからない部分があれば先生や実験助手にアドバイスを受けるのが一般的でしょう。しかし今回の授業ではプリントに加え、iPod touchに収録された実験手順の映像を見ながら実験を進めていきます。その映像を見ることで、生徒さんたちは実験手順で迷ったり、間違えたりすることなく実験を進めていくことができます。
実際にこの日の実験は、安全でスムーズに行われました。
また生徒さんたちはiPod touchの映像を見るだけでなく、反応時間を計測する際にもiPod touchのタイマー機能などを自在に活用しており、すでにiPod touchは実験の授業には欠かせないアイテムになっているようでした。
奥田先生は今回のiPod touchの導入の背景に関してこう語ります。
「2年前からノートパソコンを実験台毎に一台ずつ置き、映像を見ながら実験を行ってきました。必要に応じて実験中に映像を確認することで実験の安全性は増し、失敗も少なくなりましたが、ノートパソコンは実験台に置くには大きい。では携帯電話やiPodなどの携帯端末で同様のことができないだろうか?
というところから研究を進めたのですが従来の携帯端末では画面が小さく、またインターフェースの問題がありました。しかしiPod touchは画面が大きく、操作性が非常に良いですね。
それに一度iPod touchに映像を入れてしまえば好きなときに授業の予習復習をすることもできます。学校側としてはこれ以上ないツールが現れたと思いました」(芝浦工業大学柏高等学校 SSH研究部 副部長 理科教諭 奥田宏志氏)
iPod touchは生徒たちが能動的に学習をするためのツール
芝浦工業大学柏高等学校ではSSHの授業で使用するために16台のiPod touchを東京理科大学の協力も得て導入し、SSHの授業に参加する生徒さん一人に一台ずつ貸し出しをしています。生徒さんたちは奥田先生が立ち上げた専用のウェブサイトからPDFの予習プリント、そしてiTunes経由で映像コンテンツをダウンロードして、実験の予習と復習を行います。一連の流れは教材を一方的に与えられるという従来の方式ではなく、生徒さんたちが能動的に情報を得られるようにと工夫されています。
また、貸し出されたiPod touchの使用に関して、厳しい規定は特に設けておらず、生徒さんたちは授業以外のプライベートでは音楽を聴いたり、YouTubeで動画を見たりと、自由にiPod touchを楽しんでいるようです。
「中には音楽を山ほど入れて楽しんでいる生徒もいるようですね。生徒たちには“勉強だけ”のツールを押しつけてもダメです。勉強もできるけど音楽も聴ける。無線LANとインターネットで必要な情報を得ることができるといった、生徒たちが能動的に学習できるようなツールが必要です」(奥田氏)

昭和2年(1927年)、当時29歳の東京帝国大学工学士であった有元史郎が東京高等工商学校を創設。昭和の激動期を歩み、戦後の学制改革で昭和24年(1949年)芝浦工業大学となる。創立以来わが国の工業界を中心に幾多の人材を送り出し、工業教育の専門大学として高い評価を得るようになる。本校はこの学園の歴史をふまえ、昭和55年(1980年)に高等学校が、さらに平成11年(1999年)に中学校が、新しい教育を目指して設立。所在地は千葉県柏市増尾。「創造性の開発と個性の発揮」を建学の精神とし、次世代を創造する人材を育成し、特色あるカリキュラムにより個性を伸ばす教育を行っている。