一人一台のMacによって実現した最先端の教育環境
京都造形芸術大学
学生全員が自分のノートパソコンを使って当たり前のように授業を受け、課題を制作している学校は、日本においてまだそう多くありません。京都造形芸術大学には多数の有名現役作家の教授陣が在籍していますが、その中でも学生たちから高い関心を集める情報デザイン学科・宇川直宏教授は、アップルの最新テクノロジーを駆使したユニークな授業を行っています。また、2007年からスタートした、大学と学生の共同作業による大学ホームページのコンテンツ制作への取り組みについても紹介します。
学生の自由な発想をすぐに実現する、一人一台のMacBookとiMovie
宇川教授による情報デザイン学科1回生の映像編集クラス後期最後の授業では、学生たちが自分のMacBookとiMovieを使って制作した映像作品の発表が行われました。今回の課題は、「既存の映像を自分で好きなように組み合わせてコラージュし、編集だけで新しい意味や物語を持たせ、自分のアイデアを視覚化する」。自分の見た夢を忠実に映像化したちょっとグロテスクな作品や、映画『Taxi』の登場人物の動きにお笑い芸人の台詞をアテレコした爆笑モノの作品、四畳半のお茶の間にウルトラセブンがお父さんとして登場するユーモラスな作品など、それぞれの個性を発揮したハイレベルな作品が次々にスクリーンに映し出されました。その作品一つひとつに対し、先生と他の生徒がコメントを語り、自由なコミュニケーションが広がっていきます。宇川教授は映像編集の技術以上に、学生が作品に込めた意図や視点に着目し、学生たちの個性をより自由に解放するアドバイスをしています。
「2006年まではずっと3回生を教えていて、iChatAVを使ったビデオチャットに友人の著名人たちをゲストとして呼び、東京・京都間で双方向リアルタイムの番組を生放送し合うという、世界でも類を見ないスタイルの授業をやっていたんです。2007年から1回生を教えるようになったので、書画カメラを使ってのVJスタイルのパフォーマンスで、リアルタイムに映像と音楽をシンクロさせたり、彼らの自由な発想を刺激する実験的な授業にチャレンジしています。彼らは僕らには思いつかない、未成熟だけど絶対的にフリーフォームなアイデアをたくさんうちに秘めていると実感していますね」(宇川氏)
宇川教授の授業には、「先生」対「学生」という一般的な学校の構図がほとんど感じられないことも大きな特色です。先生が学生たちの自由な発想を心から楽しみ、彼らと同じ目線で映像編集の面白さを伝えています。宇川教授が意図しているのは自分が生徒に何かを教えることではなく、学生が自分の発想をどんどん形にしていく面白さを実感してもらうことなのでしょう。
「今回の授業で掘り下げたかったことは、端的に言えば“オリジナリティって何?”っていう究極のお題なんです。世の中に、誰にも影響を受けずに存在している人間なんていませんよね。だからこそ自分が受けた影響をどうやって編集したら、新たな表現として昇華させる事が出来るのか?これはモノを創る人間全員が再考すべきクリエイティブの共通テーマなんです。それと先程お話しした書画カメラを使ったLIVEパフォーマンス、脳のチューニングが施されていない1年生に、この2つにかなうカリキュラムは無いと思うし、予想通り生徒の内側には底知れないアイデアとセンスが眠っていました。もう一つ重要なのは、“テクノロジーとどう向かい合うか?”ということ。今僕らがMacやiMovieを気軽に使えるのは、この時代に生きているからできることで、それを利用しない手はありません。最新のテクノロジーを使って実験し、創作できることが、僕らの最大の武器なんですよ」(宇川氏)

1991年開学。前身は京都芸術短期大学。現在千住博学長のもと、10学科31コースの芸術学部と12コースの通信教育部、大学院を設置。約1万人の在学生数は国内の芸術大学としては最大級の規模を誇る。キャンパスは、東山三十六峰の一つ瓜生山に位置し、既存樹木との共存がはかられている。歌舞伎やオペラなどにも対応した劇場「春秋座」をはじめ、一般に開放されたギャラリーなど充実した設備に加え、2008年春には建築家隈研吾による新キャンパスが完成する。文部科学省「GP」に選定されるなど教育内容も注目を集めており、秋元康、辻仁成、寺脇研、宮本亜門、宇川直宏、ヤノベケンジ、竹村真一など各界を代表するアーティストが指導に当たる。