ビジネススキルと語学力を伸ばす
商学教育でのMacとiPodの可能性
名古屋商科大学
配布されたiBook G4を利用する学生たちの風景。
名古屋商科大学では、1992年から続くノート型Macの無償譲渡に加えて、2005年からは新入生全員にiPod shuffleの配布も開始しています。人と人とのコミュニケーションを重視し、ビジネスの現場で必要なスキルを伸ばす同大学の先進的な教育に欠かせないアップルソリューションの可能性について、詳しくお伺いしました。
Macは計算機ではなくコミュニケーションツール
毎年、新入生全員に無償譲渡されるノート型Macと、教室などに設置されたデスクトップ型Macを合わせて、5,000台ものMacがキャンパスで活用されている名古屋商科大学。広大なキャンパス全体にワイヤレスLANを設置し、個人別の時間割から休講や求人情報に至るまで、Webベースの掲示板システムで学生に提供するという充実した環境を誇る同大学では、Macが理想の教育用コンピュータとしての役割を果たしています。
「ビジネスのスキルを教えている私たちの大学では、問題を分析して評価し、解決のためのプランを立てる力をとても重視します。それをサポートするコンピュータは、使いやすくフレンドリーであるばかりでなく、コミュニケーションツールとして優秀でなくてはなりません」と語るのは、名古屋商科大学の母体である学校法人栗本学園の経営企画室長としてMacの導入を推進してきた栗本博行氏です。
学校法人栗本学園の経営企画室長を務める栗本博行氏。
同大学が10年以上に渡り、学生に1人1台のMacを無償で配布している理由について、栗本氏はこう続けます。「コンピュータを直訳すると『計算機』になりますが、単なる計算機ならば他のプラットフォームでも事足りるでしょう。しかし、私たちが求める理想の商学教育には、ビジネスの現場におけるプレゼンテーションを強力にサポートしてくれるMacが不可欠だったのです」。
ビジネスというものは、職務に関する知識や技能などの「ハードスキル」と、コミュニケーションやリーダーシップに関わる「ソフトスキル」によって成り立っており、一般に日本人は前者に秀で、後者に疎いと言われています。このソフトスキルの向上に適しているコンピュータとして、同大学では他の教育機関に先駆けてMacに注目しました。
ビジネスに必要な感性を養うiLifeとiWork
データベース実習の授業風景。学生たちは自分のiBookを実習用コンピュータとして使用しています。
カリキュラムでよく使われるソフトウェアとしては、アップル純正のプロダクティビティスイート、iWorkに含まれるプレゼンテーションツールのKeynoteが挙げられます。感性に訴える高品質なプレゼンテーションを作成できるKeynoteは、ビジネスプランの実行のために周囲を説得する上で大きな効果を発揮し、先生方の使い方を学生たちが見習ううちに自然とソフトスキルが身に付いていくようです。
また、授業の一環として仮想店舗のプロモーション用Webサイトを英語ベースで構築するという演習もあり、そこではアップル純正のクリエイティブスイートiLifeに含まれるiPhotoやiMovie、GarageBand、iWebが活用されています。これらのソフトウェアは学生が所有するノート型Macにプリインストールされているため、授業中はもちろん、常に持ち歩いて、アイデアを思いついたときに課題に取り組めることが大きなアドバンテージとなっています。
栗本氏は、Mac OS XがUNIXベースであることやMacにIntelプロセッサが採用されたことで、教育用コンピュータとしての応用範囲が広がった点も評価しています。「大学では、UNIX系のプログラミングも扱いますし、カリキュラムの1割程度はWindowsマシンが必要な場合もあります。後者の例は、コンピュータ会計用ソフトの実習などですね。しかし、現在のMacならUNIXのターミナル的な利用もでき、次期Mac OS Xで正式採用されるBoot CampによってWindowsもそのまま使えるので、最小限のハードウェアへの投資で最大限の活用が可能になります」。
Macの導入と同じ可能性を見出せたiPod
Macを初めて採用した時もそうですが、私たちはアップル製品が持つ可能性を自らも開拓するつもりで教育利用に取り組んでいます。
学校法人栗本学園 経営企画室長 栗本博行氏
名古屋商科大学がアップル製品を採用するもうひとつの理由。それは本質を見極めた製品開発と、将来を見据えたアーキテクチャの優秀さにあると栗本氏は言います。たとえばiPodは、音楽プレーヤーとしての本質は初代モデルからほとんど変わっていないにも関わらず、時代の変化に合わせてiTunesを進化させることで用途が広がり、付加価値が高まったと分析しています。その点を踏まえて、ビジネスのための情報教育と語学教育をカリキュラムの2本柱に据えている同大学では、2005年から学習用ツールとしてiPod shuffleの採用を決定しました。
「Macを初めて採用した時もそうですが、私たちはアップル製品が持つ可能性を自らも開拓するつもりで教育利用に取り組んでいます。iPod shuffleを導入した頃は、USBメモリ自体がまだ教育現場で活用されていなかったので、音声データの再生以外にも先進的に利用できるとの見込みがありました」(栗本氏)。
基本的な利用方法は生徒の自主性や創意工夫に任せている部分もありますが、語学関連では市販の音声教材を取り込んだり、Podcastingをシンクして使われるケースが多いようです。今後はさらに用途を広げていきたいということでした。
聴くだけでなく制作することにも意義があるPodcast
学生の学習意欲の向上を研究テーマにしているナンシー・ブーク講師。
名古屋商科大学では、英語の授業でPodcastingを積極的に取り入れています。ナンシー・ブーク講師は、BBCやBritish Council(英国の教育、英語学習、科学技術、芸術などの分野をカバーする文化交流機関)、ELT Podcast(会話を重視した英語学習向けのプログラム)といったPodcastコンテンツの購読を学生に勧める一方で、授業でも実際にPodcastを制作してきました。
「私の学生は携帯電話の動画撮影機能を上手に使い、iMovieやGarageBandを仮想ウェブショップの紹介をするときに活用しています」(ブーク講師)。最初は戸惑うことも多かったという学生たちも、数ヶ月間の実習を経て、ブログを通じて学内向けにPodcastを公開できるようになりました。
また、同大学で英語を担当するマイケル・トマス助教授は、Podcastのメリットを「教材のダウンロードからディストリビューションへの変化にある」と語ります。つまり、従来は特定のサーバなどに学生側からアクセスして保存する必要のあった教材データが、iTunesで購読の登録をするだけで自動的に送り込まれてくるようになるため、最適なタイミングで配布を行うことができ、ダウンロードを忘れるということもないわけです。トマス助教授は、授業で積極的にPodcastを活用するほか、学内で開催されている英語スピーチコンテストのスピーチをPodcastにまとめ、学生の学習意欲向上に努めている。
ラーニングテクノロジーの専門家でもあるマイケル・トマス助教授。
「ただし、最近ではPodcastのコンテンツがあまりに充実しすぎて、うっかりすると一般の学生にとっては情報過多になる可能性もありますから、バランスをとることが大切ですね。もちろん明確な専門分野を持っていれば、そういう心配はないと言えるでしょうけれども」(トマス助教授)。
こうした取り組みの結果、学生たちからもiLifeを使ったPodcastの制作やKeynoteによるプレゼンテーション作成を通じて、英語学習に対する面白みや興味が増したというフィードバックを得られるようになりました。また、学内でのiPodの利用率に関する調査でも、外国語学習におけるポジティブな効果がすでに現れているとのことです。
新入生全員がMacとiPodを所有するという理想的な環境の中で、先見性に富む教育を実践している名古屋商科大学。これからも最新のテクノロジーを採り入れながら、ビジネス界に新風を吹き込む人材を育成していくことでしょう。
