東京大学 情報基盤センター
3万人が利用する情報教育システム
iMacとMac OS Xで構築した大規模NetBoot環境



導入の中心的な存在だった安東氏は、「UNIXベースのMac OS XとNetBootの存在、統合的なサポートとTCOの削減、これらがECCS2004には必要不可欠だった」と語る。
マルチプラットフォームのインテグレーション

新ECCSの構築にあたって、東京大学の仕様策定委員会は、学生への教育面や管理・運営、数年間に渡って使用するための発展性や将来性など、総合的な視点から仕様を決定しました。仕様書には、OSやネットワークの満たすべきさまざまな条件、クライアントPCのキーボードのサイズに至るまで実に細かく指定されていましたが、東京大学が最も重視したのは、1)UNIXシステムを中心としたマルチプラットフォームであること、2)管理リソースが低減できること、3)ハードディスクレスシステムであること、でした。

東京大学では、入札するシステムインテグレーター各社に対し「個別技術ではなく、システム全体を提案してほしい」と要望しました。一般に、情報教育システムに求められる多様な要求を実現するためには、マルチベンダーのシステムにならざるを得ません。だからといって、情報端末はA社、OSはB社、アプリケーションはC社、サーバはD社という形では、統合的にシステムを構築することは難しく、運用管理コストもかさんでしまいます。大学側にとって、これはどうしても譲ることのできない一線だったのです。

しかし、こうした仕様や要望を満たす提案は多くはありませんでした。OS、アプリケーション、情報端末本体、周辺機器のメーカーが異なり、サポートもすべて個別というのでは、導入時の連係や導入後のメンテナンスでも時間や手間がかかります。各種のサーバやネットワーク機器で構成される複雑かつ大規模なシステムの構築や運用のノウハウを持ち、情報端末にはUNIXベースのOSと主要アプリケーションを兼ね備えたiMac+XserveによるNetBootシステムを選択し、求められた仕様を柔軟に高レベルで提案したNECリースが落札しました。


●Xserve上のMac OS Xの起動ディスクイメージを、ネットワーク経由でiMacが読み込んで起動。使用者は、ログイン画面からIDとパスワードを入力。ログイン後は、スタンドアローンのiMacとほぼ同じ感覚で使用できる。

一般にUNIX系OSではMicrosoft Officeシリーズが動作せず、ビデオ・ストリーミングなどのマルチメディアのアプリケーションが少ないという弱点があります。iMacなら、最新の主要アプリケーションが豊富に揃い、パソコン初心者にも親しみやすいユーザインターフェイスを装備しています。この点も大きなアドバンテージとなりました。

もっとも、机上での構想や設計と現実のシステム構築の間には隔たりがあったことも事実です。Mac OS XはUNIXベースとはいえ、ディレクトリ構造など本来のUNIXと異なるなど、純粋なUNIX端末との差があります。しかし、最終的にはNECリース、キヤノンマーケティングジャパン株式会社、アップルの連日の共同作業により、基幹系のシステムとのスムーズな連係を構築した両社の技術力、サポート体制が実を結び、他に類のない大規模かつ複雑な情報教育システムECCS2004が誕生したのです。

複数のOSが混在して動作するクライアントに対して共有ファイルサービスを提供すること、LDAP(Lightweight Directory Access Protocol)により利用者がサーバへログインする際やプリンタの課金システムを使用する際のユーザID・パスワードを一元的に管理すること、USBメモリに格納されたPDFファイルのプリントサービスステーションシステムを実現したこと、いずれも画期的でした。

1,000台規模のNetBoot環境の導入も、世界最大規模の事例です。東京大学では、ネットワーク経由のブートシステムの運用実績はありましたが、今回のシステムではハードディスクを持つiMacと何ら違いのないデスクトップ環境をNetBootで実現するため、予期せぬトラブルが起きるのではないかと心配されました。しかし、はじめての経験にもかかわらず、安東氏をはじめとする情報基盤センターのスタッフやインテグレーターの努力もあって、導入作業は予定通り進行しました。上位システムとの融和もうまく進み、Mac OS Xのもつ親和性の高さも改めて実証されました。旧システムからの移行作業も順調で、完全移行としては最小限の停止期間で済みました。

次ページ:利用環境の改善や提案に学生たちが率先して参加

Solutions/Education

3万人が利用する情報教育システム
1. 新ECCS用端末に求められた3つの要件
2. 世界最大規模のNetBoot環境を支えるXserve
3. マルチプラットフォームのインテグレーション
4. 利用環境の改善や提案に学生たちが率先して参加
5. 導入の効果と今後への期待