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Apple Store, Ginzaで行われたこのイベントは、主催である「サウンド&レコーディングマガジン」誌の編集長、國崎 晋氏の司会のもと、細野氏とMacとの出会いの話から始まりました。80年代の終わりに「Performerが使いたくて」Macを入手した細野氏は、以降今日までずっとPerformer、そして進化版であるDigital Performerを使い続けているとのこと。「マニュアルを読まず、ずっと自己流でやってきた」というDigital Performerでの音楽制作やライヴ・パフォーマンスを実演していただきました。また、小型のICレコーダーで日常の様々な環境音を録音して、レコーディングに活かしているという裏話や、ご自分で編集されたというラジオ番組の音源も披露。時にユーモアを交えながら、「取り込んだ生活の音を自分の響きにしていきたい」という独自の音楽哲学を話していただきました。 インタビューは、イベントの内容を踏まえつつ、コンピュータについて、音楽について、より踏み込んだ話をたっぷりとうかがいました。 ──今日のイベントではPowerBook G4を使われてましたね。 ■細野:家にあるコンピュータはこのPowerBook G4だけです。音楽制作に限らず、いろんなことに四六時中使ってますね。スケジュールを管理したり、あるいはニュースを集めたり、DVDを見たり焼いたり。 ──イベントでは、いくつかご自身で作られたQuickTimeムービーを流されてましたね。 ■細野:ああいうものを作っては、発表するわけでもなく遊んでるんですよ。最近はGIFアニメにも凝ってます。自分で撮った写真を動かしたりね。Photoshopでいろいろレイアウトして、GIFに落として、独特な動きをさせる(笑)。 ──音楽制作にはかなり早い時期からMacを導入されていたそうですが、他のコンピュータに対しては持てなかった愛着を、Macに対しては持てたそうですね。 ■細野:それはやっぱり、自分の感覚がそのまま反映されるという特性がMacにあったからでしょうね。そういう点でMacは非常に音楽的なツールですよ。楽器と同じで、いじっているうちにだんだんわかってくる。おもちゃの延長線上で扱える訳です。だから、イメージさえあればなんとかなる。以前Swing Slowというユニットをやった時に、50年代的な音を再現したんですけど、これも感覚だけでできるものなんですよ。みんなに「これ、どうやって作ったの?」って聞かれたんだけど、ヴィンテージ・マイクを使ったりとか、そういう特別なことは何もしてなくて、耳とイメージだけを頼りに音を加工していったら作れた。だから、人には「気力だけで作ったんだよ」て言ってるんです(笑)。 ──MacではずっとPerformer、Digital Performerを使っているということですが、その扱い方が変わってきたという話が印象的でした。シーケンサ独特の乗り(グルーヴ)を追求していた時代を経て、現在はレコーディング・システムとして捉えているということでしたが。 ■細野:コンピュータを使い始めた頃というのは、自分の中のミュージシャンシップとコンピュータが生み出すリズムとの戦いがあったんです。機械独特のリズムが快感か、疲れちゃうか、というところで大きな分かれ道があった。例えば多くのドラマーは、あまりに正確なリズムにはもうこりごりだ、と言ってリタイアしていった。残ったのは僕と、(高橋)幸宏と、坂本(龍一)という少数派。そういう過渡期があったわけです。でも時代が過ぎて、音楽の捉え方が皆変わった。今は打ち込みのリズムなんてごく普通のことでしょう? そして、リアルタイムの生演奏をそのままコンピュータに取り込めるようになった。いまのDigital Performerがレコーダだっていうのはそういうことです。あくまで、音を貯めるためのステーションだと思ってるんですよ。 だから最近は、コンピュータでの作業を追求した結果、逆に「普通の音楽」になってきてるものが多い。例えばいま、ギターと歌だけの「これフォークじゃない?」みたいな音楽がいっぱい出てきてる。でもそれは昔の音楽と同じものではなくて、コンピュータとの格闘を経て出てきた音楽なんです。そういう人は生楽器を持って、ベッドルームでMacを使ってレコーディングしている。そこで入ってくる様々な生活音がその人の個性になるんです。でも今の商業音楽は、みんな画一的な音でしょう。80年代以降、同じ機材を使って同じようなスタジオで、という制作スタイルが定着して、プロダクションの均質性が問われてきたけれど、そうじゃないものがいま出てきている。それがとても面白いんです。 次ページ:生活空間からうまれる響き、その中の個性が面白い |
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