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生活空間からうまれる響き、その中の個性が面白い
──ICレコーダで日常の音を取りためているということですが。 ■細野:そうですね。いま、生の音が濃密に詰まったアルバムを作りたいんですけど、その時のために、いろいろ録音して素材を集めてます。レコーディングする場所もスタジオは嫌なんですよ。自分が生活する場所で録音したい。 ──細野さんは『HOSONO HOUSE』(1973年)の時も御自宅で録音して作品を作られていましたね。 ■細野:ええ。ただ、当時そういうことをするのは大プロジェクトだったんです。重くて大きい機材を家に運び込まなきゃいけないし、自分以外にもエンジニアやミュージシャンを呼ばないと作ることができなかった。結局、自宅とはいえプライベートな空間ではなくなるわけです。ところが、いまは一人ですべてできる。だから、当時考えていたようなことがようやく実現できるようになりましたね。部屋で録音したいという感覚は、音楽というよりも、自分の響きを取りたいってことなんですよ。響きの中にはその人の個性が入っている。それが一人一人違うから面白いんです。それは作り上げるものじゃなくて、自然に出てくるものだから、その人の生活している空間からじゃないと出てこない。 ──そういう音を作るのに、Macは適してますか? ■細野:そうですね。これまでのレコーディングというのは、エンジニアの領分が非常に大きかったんですよ。自分のいろんなものをエンジニアに委ねなくてはいけないし、彼の感性を通して音が出てくるわけです。画家が塗る色を他人に決めてもらってるようなものですね。でもMacがあると、すべてが自分一人でできる。だからいまは本当に、絵を描くように音楽が作れるようになりましたね。色合いとか、風合いとか、そういう微妙なことがわかるようになってきたんです。 ──すべてが一人でコントロールできるようになった。そこでMacをどう扱うか、というのも重要になってくるのでは? ■細野:コンピュータだとどんな音でも加工してねじ曲げてしまいがちなんだけど、そういうのは簡単だし、すぐに飽きちゃうんですよ。結局、ソフトウェアというのも一つの枠にしか過ぎないわけで、それを主人公にしてしまうと駄目ですね。機能に振り回されずに、自分で発見していったことを追いかけて、自分なりのやり方で作ればいいんです。いろいろと知らない方が面白いですよ。例えば、制作中にエラーが起こって変な音が鳴ったりする。そのエラーが好きになるんです(笑)。様々な制約やアクシデントの中で、一人一人の個性が出てくる。 ──イベントでも言われてたように、その人の感性なり才能なりが重要になってくるということですね。 ■細野:いまは楽器が弾けなくても音楽が作れてしまいますから、そういう人の中からとんでもない才能が出て来る可能性がある。実際、そういうことはもう起こってるんですよ。彼らは、僕たち音楽家にはできないようなことをやってしまう。それはもう育った環境が違うし、僕たちはちょっと苦労し過ぎて(笑)、いろんなことを知り過ぎてますからね。でも僕も、ミュージシャンであることを忘れて彼らのようにやってみたいというのはあります。 ──今後、細野さん御自身はどのような方向性で音楽を作られて行くのでしょうか。また、音楽シーン全体はどのように変化していくと思いますか? ■細野:何かを捨てるってことはないですよね。必要だったらMIDIも使うだろうし、あんまり考えないでやってるだろうし……例えば、家でギターを弾いてデモを取ったりする。でもそのデモ自体が実は自分の音なんですよ。だから、それがCDになる場合もある。場合があるというか、本当はそうしたいんです。 いまは音楽ソフトってまだ取っ付きにくいところがあるけれど、今後はますます使いやすくなっていくと思う。Mac OS XやGarageBandならなおさら楽だし。その中で、音楽を知らない人達がどういうものを作るかって時代ですよね。究極的には音をCDに記録するということ自体も見直されると思うし、音楽のあり方はますます問われていくと思いますよ。それはアップルのテクノロジー次第ですね(笑)。 前ページ:Macには自分の感覚がそのまま反映される |
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