Audiを編集する

複雑なコマーシャルが形になるまで

わずか数か月の間に、Trim Editing社には数多くの変化がありました。まず、この小さな編集スタジオはイーストロンドンにある完全に新しい2フロアのスペースに移転しました。編集室の数も2倍の10室になり、増え続ける編集スタッフのためにより良い環境を用意できるようになりました。時を同じくして、Trim社のプロジェクトの領域も大きく広がり、今ではBMW、Nike、Hennessyといった大手ブランドのためのパワフルな新作CMも手がけるようになりました。

エディターのThomas Grove Carter氏にとって最も大きな変化は、Final Cut Pro 10.3の登場です。何年も前にFinal Cut Pro XをTrim社に導入したCarter氏は、このお気に入りの編集ツールの最新バージョンを使うことを心待ちにしていました。そのテストドライブを行ったCMが「Everyday Extremes」。複雑なサウンドデザインと流れるような映像のトランジションが求められた、難易度の高いAudiのプロジェクトです。新しいFinal Cut Proは、Carter氏の高い期待をはるかに上回りました。これまでにない速さで、アイデアを新しい編集に反映できるようになったのです。

Thomas Grove Carter氏はFinal Cut Pro 10.3を使い、「Everyday Extremes」の複雑なサウンドトラックを作り上げました。

目の覚めるような洗練されたデザイン。

Final Cut Pro 10.3を使う楽しさは、最初に起動した瞬間から始まるとCarter氏は言います。「とてもすっきりしたフラットな見た目で、混み合った感じがありません。ビューアを見ている時に、視界の周囲がごちゃごちゃしないのです。ボタンも作り直されて、理にかなった配置になったと思います」

ワークフローに合わせてレイアウトを瞬時に変えられる、インターフェイスのカスタマイズ機能も気に入っているとCarter氏は語ります。「最初の段階で映像を整理する時にはタイムラインをまったく使わないので、それを完全に隠しておけるのは理想的です」。タイムラインを非表示にすることで、Carter氏はフルスクリーン表示でクリップを見たり、選択したクリップにタグを付けることができるようになりました。「おかげで目の前の作業に集中できます」

カスタムウインドウレイアウトなら、ワンクリックで好きなワークスペースに戻ることもできます。「カスタムレイアウトはとても便利です。レイアウトを保存すると、調節した細かなパラメータもすべて保存されます。ウインドウの位置だけでなく、慎重に微調整した設定も保存されるので本当に使いやすいです」

「すっきりしたレイアウトで、すべてが一段とシャープに感じられます。しかも、見た目も美しいのです」

クリップが色分けされているのでタイムラインが整理しやすくなり、Carter氏は一目でプロジェクト全体を把握できるようになりました。

時間を節約できる、タイムラインでの作業。

「Everyday Extremes」では、Audi A4が薄暗いデパートの店内で滑らかなフロアを抜け、急なカーブを曲がり、俊敏に走り回ります。映像だけでも印象的ですが、きめ細かなサウンドデザインが加わると一段と引き込まれます。この複雑なサウンドスケープを組み立てるために、Carter氏は店内をリアルに再現するサウンドのほかに、車のタイヤがきしむ音やエンジンが急回転する音をシミュレートできる新しいエフェクトを幅広く加えました。

Final Cut Pro 10.3の新しいタイムライン機能により、Carter氏は一段とすばやく簡単に作業ができるようになりました。オーディオクリップがロール(オーディオの種類)ごとに自動的にグループ分けされて色分けされるので、異なるカテゴリーのサウンドを一目で識別できるのです。タイヤの音、エンジンの響き、クライアントのAudiから提供されたそのほかのエフェクトに対して、Carter氏はそれぞれ別々のロールを作りました。「これらのクリップの構成も、一つひとつのクリップの意味も、瞬時にわかります」とCarter氏は言います。「タイムラインを見る方法として実に優れています」

タイムラインインデックス内の新しいオプションを使えば、必要なオーディオロールだけを必要な場所で必要な時に見ることができます。「ロールの順番を入れ替えられるのが気に入っています」とCarter氏は言います。これはインデックスの中でロールをドラッグするだけで、タイムラインのレイアウトを即座に組み立て直せる機能です。さらにフォーカスボタンをクリックすると、タイムライン上でほかのロールをすべて折りたたんで、例えばタイヤの音のような特定のオーディオロールに集中することができます。全体的なサウンドデザインの作業をする時は「オーディオレーンを表示」で瞬時にすべてのオーディオクリップをロールごとに整理し、それぞれを別々のレーンに配置することで、より複雑なプロジェクトを見やすいビジュアルでチェックできます。

Final Cut Pro 10.3は、オーディオの読み込みプロセスも効率化します。このアプリケーションはロケ現場のサウンドレコーダーで作ったiXMLメタデータを読み込み、その情報を使ってそれぞれのクリップに自動的にロールを割り当てます。すべてのオーディオが読み込まれ、色分けされ、ロールごとにグループ化されるので、Carter氏と彼のアシスタントエディターたちは準備にかける時間を大幅に節約できました。そしてその分の時間を、店内の障害物コースを俊敏に走る車を描写する、複雑なサウンドを作るために使うことができたのです。

「新しいFinal Cut Pro
がクリップを整理して色分けしてくれるので、単純な手作業から完全に解放されました」

新登場の「パラメータを削除」ウインドウにより、Carter氏はレイヤー化されたエフェクトや新しいルックをすばやく試せるようになりました。

編集の手間を減らせる、パワフルな機能。

Final Cut Pro 10.3では、大きな進化のほかにも多くの編集機能が改良され、Carter氏のプロジェクトの高速化をサポートしています。新しいアイデアを試したり編集を磨き上げたい時は、隣接した接続クリップ上でロールトリムができるようになり、便利な「トリム開始」と「トリム終了」コマンドを複数のクリップで一度に使えるようになりました。Carter氏は編集中に色補正とエフェクトを頻繁に適用しますが、「パラメータを削除」の新しいオプションにより、不要な要素を選んで削除する作業をシンプルなインターフェイス上ですばやくできるようにもなりました。

Trim社の活気あふれる新しい仕事場では、一つの編集室のiMacから別の編集室のiMacにプロジェクトを移動させることがよくあります。これまではプロジェクトにMotionのテンプレートや他社製のエフェクトが含まれている場合、それらを一つずつ新しいMacに移さなくてはなりませんでした。Final Cut Pro 10.3を使えば、タイトル、テンプレート、エフェクトをメディアと同じライブラリにまとめておけるので、Carter氏はすべてをプロジェクトと一緒に移動させることができます。

Carter氏のお気に入りの新機能の一つが、ブラウザ内の連続再生オプションです。このオプションを使うと、タイムラインの中で扱いづらいラフ編集を作ることなく、自分のセレクトをすべてチェックすることができます。「今まではセレクトを見るために気に入った部分をすべて集め、それを新しく作ったタイムラインに入れて再生しなくてはなりませんでした。そのためいくつか余計な手順が必要になり、追加したマーカーはすべてタイムライン上に残されていました。でも今ではブラウザを離れずに再生ボタンを押すだけです。ワンクリックで自分のセレクトが見られるのです。これも大きな前進です。私にとっては本当に重要な進化です」

完成したCM「Everyday Extremes」は高い評価を得ました。Trim社の仲間たちにもFinal Cut Pro 10.3の利点を体験してもらいたいとCarter氏は思っています。「新しいインターフェイスは見た目が良くなっただけではありません。ほかのどこにもない機能を使えるので、クリックに費やす時間が減り、編集そのものに時間をかけられます」とCarter氏は言います。「そのためクリエイティブな部分に集中できるようになりました。それは私が最も喜びを感じるところです。クリエイティブな仕事こそ、私がエディターになった理由なのですから」

「新しい機能の数々は、明らかにユーザーの声を聞いて
生まれたものです。Appleはこうした声を、クリーン
パワフルな方法で形にしたのです」