医療従事者にとってのパソコン用途では、ドキュメントの作成が最も頻繁に利用されているようです。Macをドキュメント作成に使用することで、美しい出力から視認性が高まることをはじめ、効率的な文書管理を行えることはもちろんですが、Macに対応したさまざまなツールを活用することで医学・医療で重要な正確で適切な表記を行うことができます。Macに対応した辞書ツールには、ネットワークに接続して使用するオンラインリソース型、Macで作業中に呼び出して自由に使える常駐型アプリ、翻訳ソフトなど専用の機能を持った辞書アプリケーション型の3種類を選択できます。以下にそれぞれの特徴と主なツールを紹介します。
オンラインで利用できる医療辞書リソース
Web上には、さまざまな辞書や翻訳ツール(テキスト変換)、医学用語解説などのサービスが提供されています。その多くは無償で利用することができ、一般的なブラウザのウインドウ内で操作可能なことが特徴です。専用のソフトウェアをインストールする必要もなく、辞書データでハードディスク容量が占有されることもないので、気軽にいつでも利用することができます。
辞書リソースの代表例としては、WebLSD(ライフサイエンス辞書)があげられます。WebLSDは、Life Science Dictionary(LSD)プロジェクトによって作成・管理されている生命科学分野の専門用語辞書であり、教育・研究に利用頻度の高い英和・和英の用語ライブラリをWebおよびCD-ROMで提供しています。オンラインで提供されるWebLSDには、現在、英和4万3千語、和英4万語、用例2万6千文が収録されており、代表的な用語は発音音声(約5千語収録)を聞くこともできます。また同サイトでは、テキストに対するオンライン変換サービスとして「E to J」「E to J Vocabulaly」やオンラインでスペルチェックが可能な「Web Spell」も提供されています。用例は欧米の研究者がコアジャーナルに発表したインパクトファクターの高い論文から抜粋されているため、実用性の高い表現が収載されています。また、さらに進んだ用例として、単語の前後にどういった別の単語が用いられているかという「共起表現」というユニークな検索手法も提供されます。
2. WebLSDによる共起表現での検索結果
その他、「医歯薬英語辞書(MEDS)」では一般的な医学英語単語が幅広く収録された辞書が公開されています。「メルクマニュアル(医家向け)」は、臨床的な医学用語の解説が盛り込まれた情報サービスですが、単語の訳を調べるといった辞書的な使い方も有効であり、ドキュメント作成や翻訳作業にも非常に便利です。
学会が監修する用語辞典も、Web上に公開されており、その専門分野に所属する方にとっては非常に有用です。循環器学用語集(日本循環器学会)、日本救急医学会用語集(日本救急医学会)、日本放射線腫瘍学会用語集(日本放射線腫瘍学会)などが、その例です。
3. 日本循環器学会循環器学用語集
その他、一般の用語の検索に使用できるgoo辞書(三省堂が提供する4つの辞書がベース)、科学以外の様々な分野の用語も網羅されたウィキペディア(wikipedia)、IT用語が検索できるIT用語辞典e-Words、アスキー デジタル用語辞典なども便利な辞書サイトです。簡単な日常表現や単語を翻訳するには、Mac OS X(10.4以降)に搭載されたダッシュボード「翻訳ウィジェット」が利用できます。日英以外の多言語への変換にも対応しており、レターの作成等に使用すると便利でしょう。
これらWeb上のサービスは、ネットワーク環境さえあれば、どのコンピュータからもアクセスでき、常に最新の改訂版を閲覧・利用できる点がメリットと言えるでしょう。普段お使いのコンピュータであれば、汎用する辞典・用語集をブラウザにブックマーク登録しておくと便利です。Safari 2.0では、アドレスフィールドのアイコンをブックマークバーにドラッグ & ドロップするだけで簡単に登録が行えるため、利用頻度の高いサイトを手軽に利用できます。
コンピュータに常駐して活用できる辞書ツール
Web上の辞書リソースに対して、CD-ROM版ライフサイエンス辞書をはじめ、各種の電子辞書・電子辞典がMac起動中のさまざまな環境に呼び出して使うことのできる常駐型ツールを活用することができます。日本語変換プログラム(ことえりやATOK)と組み合わせて使用できる医療・医学辞書などがその代表例です。日本語変換プログラム(ことえりやATOK)に専門用語を組み込んで使用するプラグイン型の辞書は、ワープロソフトやテキストエディター上でインライン変換する形で活用できます。前述のライフサイエンス辞書のCD-ROMには、「ことえり」や「ATOK」に専門辞書を登録できる辞書ファイルが収録されています。書籍「ライフサイエンス辞書」に付属するCD-ROM版ライフサイエンス辞書は、オリジナルの辞書検索システム「Lsd4 suite」(CD-ROM内にバンドル済み)をMacにインストールして使用できます。CD-ROM版ライフサイエンス辞書の収録語数は、前述のWeb版に匹敵する数となっていますので、通常利用においては、Web版と大きな違いはありませんが、Web版における最近の改訂が反映されていない点だけは留意が必要です。 (※LSDプロジェクトのサイトから最新用語を網羅した「かな漢字変換辞書用テキスト2005」をダウンロードできます) 日本語入力ソフトであるATOK 2005 for Mac OS Xには、医療関連の専門用語が約19万語以上収録された辞書がオプションとして販売されており、専門用語のスムーズな入力・変換がおこなえます。同様に、ATOKやことえりに登録して使用できる「南山堂医学用語(医学英和大辞典第11版をもとに制作された約15万語を収録)」などの変換辞書も販売されています。
その他、コンピュータに常駐して活用できる辞書ツールとしては、従来、書籍として販売されてきた辞書・辞典がCD-ROM化された電子辞書・電子辞典があげられます。医療・医学関連のタイトルも多数リリースされており、代表的なものとしては、「今日の診療」、「南山堂医学大辞典」、「ステッドマン医学大辞典 」、「日外25万語医学用語大辞典」、「研究社医学英和辞典」、「研究社理化学英和辞典」などがあげられます。また、「リーダース/リーダース・プラス」のような大型の英和辞典にも、医学専門用語が多数収録されています。これらCD-ROMで提供された「電子辞書」であれば、大きな書籍を持ち歩かなくとも、さまざまな場面で即座に利用できるので大変便利です。
医学・医療分野のドキュメント作成を支援する翻訳ソフト
医学・医療の専門用語が含まれたテキスト翻訳に対応する製品がリリースされています。「MED-Transer」は医学・薬学に特化した英日・日英双方向の翻訳ソフトで、豊富な用語を収録している定本「ステッドマン医学大辞典」を搭載したパックが販売されています。また、「コリャ英和!一発翻訳 for Mac 2005 医学・歯学専門辞書パック」は、「南山堂 医学英和大辞典」、「日外アソシエーツ バイオ・メディカル22万語」などをベースとした専門用語137万語が追加収録された翻訳ソフト・パックです。 「対訳君 医学版/バリューバック」には、英辞郎(81万語)、和英辞郎、ライフサイエンス辞書、医療統計用語辞典が搭載されているほか、「メルクマニュアル第17版」(約7万対訳)や「最新がん情報」(約4万対訳)などの対訳集が搭載されており、これらを手軽に参照しながら翻訳作業を進めることができます。いずれのソフトも医療従事者の使い勝手を最優先して専門用語を搭載していることから、英文の作成時に大変便利なアプリケーションとなります。

