チームワークの連携を深めるツールとしての映像
「脳神経外科医にとって、映像が持つ意味とはどこにあるのでしょうか?」
こうした問いに、福島先生は実際の手術現場での必要性と、教育材料としての必要性の2種類あると答えます。
「なぜ脳神経外科の手術中に顕微鏡とビデオが必要か。それはチームワークの向上とスピーディーなアシストが可能になるからです」
手術をする患部、つまり脳や脳神経は当然、頭蓋骨に被われています。そこに小さな穴を開け、手術顕微鏡を用いて腫瘍を取り除きます。つまり、顕微鏡を使用している間は、手術の進行過程や状況は執刀医以外、知ることができません。麻酔科医や介助者のナースは執刀医の言葉を受けて、行動することしかできないというわけです。
「リアルタイムの映像をモニタ画面で確認できれば、麻酔科医もナースも状況を把握できますから、アシストが早くなります。それだけ手術時間の削減にもつながりますし、チームワークは格段に良くなります」
もちろん、研修に来ているドクターや研究者たちも福島先生の手術の流れを、リアルタイムで体験することができる点も大きなメリットのようです。

脳神経外科医の教育の現場にリアルな映像を
さらに福島先生は、その現場を撮った記録こそ重要な教育材料となると話します。 「本来なら、こうしたエキスパートが手がけた手術の記録は、脳神経外科医の育成の教育に役立てなければならない。例えばゴルフでいえば、ジャック・ニクラウスやタイガー・ウッズのショットを録画しておく。それを参考にしながら、自分のスイングを直せば、ショットが上達するわけです。手術も同じ、鉗子や吸引管のグリップ・アングル、手順まで熟練者の動きを見逃してはいけない。手術イベントの記録は、うまい手技を習得するための資料として必須だと考えています」
日本国内の場合、福島先生の手術を受けられる病院が約20施設。それぞれの施設がベテランの脳神経外科医をおいています。皆、先生の技術を学ぼうとしている医師です。福島先生によると、「まだ、100%私の代わりができるドクターがいない。それでも悲観はしていません。少しずつ育っていますから。腕も上達していますし、熱意を感じます。彼らにはとても期待しているのです」
鮫島先生も福島先生の手術ビデオ映像をみたのをきっかけに、師事することになった一人です。「手術の達人になりたいなら、世界中の有名な外科医を見て回り、どういう人がどんな技術を持っているのか自分の目で確かめてみるべきです。そういう意味では、現代の私たちは恵まれていると思います。今では現場にいなくても一流の映像を目にすることができるわけですから」(鮫島先生)
「ハイビジョンの鬼」が認めたQuickTimeの映像クオリティ
エキスパートな手術を撮るビデオ映像は世界最高レベルでなければならない──。こう豪語する福島先生は「ハイビジョンの鬼」と自ら名乗るほど、映像にもこだわっています。実際、先生の映像へのこだわりは、今から20年以上も前にさかのぼったころから始まります。「1986年、私たちは世界中のどこよりも早く立体テレビを開発しました。当時解像度1050本のハイビジョンカメラを搭載した手術顕微鏡を用い、120KHzのスイッチャーの液晶でモニタを試みました。1988年には世界に先駆けてハイビジョンの顕微鏡手術を記録しましたし、1994年にはソニーのHDC500という1インチサイズのハイビジョンカメラを使って映像を撮りました」と福島先生。
私の希望を満たすアップルの映像環境は世界一ですよ。(福島先生)
なかでも色合い、解像度、音声には強い思い入れがあると言います。
「いわば脳神経外科の手術はミクロの仕事をしていると言ってもいい。だから映像が鮮明でないと、どのようなことが行われているか画像から読み取れません。術場の音声録音も重要です。(私は)たいてい手術中は術部の様子を解説しているので、それが映像に記録されているのとないのとでは、臨場感がまったく違ってきます。私の希望を満たすアップルの映像環境は世界一ですよ」
基本的には、5〜10時間にも及ぶ1回の手術の映像から必要な箇所を切り取り、1時間程度に編集します。学会が近づくと、どの症例を呈示するか話し合い、準備を進めます。発表時間も限られているため、それに合わせて編集をし直し、3〜5分程度にまとめます。
福島オフィスで最初に購入したのは、Windows環境。「パフォーマンスの高いマシンだったのですが、ビデオを再生する際、けっこう頻繁にコマ落ちがしました。また、記録したテープをキャプチャするときも、同じテープなのに微妙に色が変わったりするなど安定感がありませんでした。クリアな映像を残したい我々としては、それは致命的です」
そこで、2004年にPower Mac G5を購入。最高の環境でビデオ編集を行いたいということで、ディスプレイはCinema HD Displayにしたそうです。アプリケーションはiMovie、FinalCut Pro、MS Officeなどを使用しています。
「Macに変えてから、パソコンにキャプチャしても、コマ落ちがほとんどありませんでしたし、20年前の映像も非常に安定して取り込むことができました。それ以来、Macを使い続けています」
OMDESSの導入で、より快適なビデオ編集が可能
編集に対する問題は解決したものの、それでもまだワークフローがスムーズになったとはいえなかった。「問題は画像を記録するメディアにあったんです」。
「デジタル環境で編集できるようになったものの、映像記録はまだテープで行っていた。コンピュータへのムービーキャプチャが予想以上に大変でした」
具体的には、鮫島先生はアナログテープをいったんオフィスに持ち帰り、ビデオデッキとコンバータを使って、コンピュータに取り込みます。その作業は手術をした時間だけかかってしまう。そこから編集が始まるわけですから、1本10時間ともなると、想像もつかないような、時間と手間がかります。
「MacのOMDESSのシステムなら、術場で直接キャプチャが行われます。デジタルからデジタルにデータを落とすだけですから、手軽にムービーデータの活用ができます。それにもまして大きいのは、時間の短縮。正直言いまして、いちばん煩わしかったところがすべて無くなるわけです。これは非常に楽です」

OMDESSシステム構成例
ハイビジョンの鬼である福島先生の場合、クオリティを最優先にしているため、キャプチャしたデータをMPEG圧縮せず、DVコーデックのまま取り込んでいます。そのため、ハードディスクの消費量がものすごいそうです。
福島先生のオフィスには、外付けのハードディスクが20台ほどあるそうです。最初に250GBのハードディスク(HDD)を10台買い、その後300GBのHDDを10台追加購入しています。それでもすでに残りわずか。「今後はXserve RAIDの導入により、すべての映像データを一元管理できるOMDESSアーカイブシステムを導入します。
「最近気づいたのは、それだけの膨大の量を20台のHDDに入れると、HDD間のアクセスが非常に大変だということです。どの映像がどのHDDに入っているかは、ノートに書いて管理していますが意外と面倒。いつの手術で、どの腫瘍の摘出手術で、いつ編集したのか。それらが一括してわかり、管理できるようになれば、それは編集する者ものにとって、最大のメリットでしょう」
iPodも活用し、移動中も映像を確認
今回アップルから、世界中を手術して回る福島先生ならではのソリューションを提案しました。日本を始め、移動先の病院で行った手術映像をiPodに保存して持ち運び、帰国後Xserve RAIDシステムにムービーを統合します。60GBの容量を誇るiPodなら外部ストレージとして最適なソリューションとして利用できるのです。
iPodがこんなに画像がきれいだとは思わなかった。それにこれほどまでの量の映像を取り込めることはすごい。
さらに編集された映像は、iPodビデオとして取り込むことで、移動中も映像を見ることができます。福島先生はこうした使い方にも非常に興味をお持ちのようです。
「こんなに画像がきれいだとは思わなかった。それにこれほどまでの量の映像を取り込めることはすごい」と大絶賛。
iPodに入れることで、ネットワークを介さなくてもデータのやりとりができるという点も大きなメリットだと言います。「DUKE大学のネットワークはそれほど大きくないため、メディアを使って持ち運ぶのが一番確実で早い」と鮫島先生も言います。
Macを使ったビデオ編集ソリューションは、まだまだ福島先生を魅了してやまない。今後はさらなる大きな展開も考えているそうです。

