Nouchine Hadjikhani先生
ニューロイメージング解析を効率化
Dustin Driver
Nouchine Hadjikhani先生はヒトの心に作用する脳科学研究に取り組んでいます。ハーバード大学医学部(Harvard Medical School)附属病院であるMassachusetts General HospitalのMartinos Center for Biomedical Imagingに放射線科医として勤務している先生は、MRIを使って偏頭痛の謎に取り組む一方で、人間の脳における体を使った表現の認識、処理方法を研究されています。
Hadjikhani先生は最近、高機能なMac専用の3次元ニューロイメージング解析アプリケーションであるNeuroLensをPower Mac G5デスクトップシステムで使い始めました。以来、NeuroLensは研究に欠かせないツールになっています。先生は「データのチェックはすべてNeuroLensを使って行っています」と述べています。現在は、FS-FAST、Freesurferといった既存のUNIXパッケージを使ってさらに解析を行う前に、NeuroLensを使って、MRIの検査結果をプレビューしています。
“最初にMacで動作するNeuroLensを見たとき、本当に驚きました。通常なら結果が表示されるまで数日かかるのに、検査室からデータをCDに書き込んで戻ってきて、Power Macに挿入し、NeuroLensをクリックすれば、10分も経たずに結果が得られるのです”
PETからMRIへ
スウェーデンでの博士号取得後の研究中、Hadjikhani先生はPETを使って脳の視覚野をスキャンしました。先生にとって、人の脳の中を覗いたのはこれが初めてでした。先生は「私は視覚と触覚のつながりを理解しようとしていました。ポケットに手を入れ、鍵に触れると、実際に視覚から認知しなくてもどれが鍵だかわかります。そこで疑問になったのが、手で感じたことがどのように視覚化されるのかということでした」と述べています。
1995年、先生は初めてMRIに出会いました。「MRIを見て、これだと思いました。私は自らMRIスキャナに入り、自分の脳の画像を撮影しました。とてもすばらしい瞬間でした。突然、生きた人間の脳をさまざまな面で見られるようになったのです。危険はまったくなく、何度でも脳の組成に関するデータを収集できます」
1996年以降、先生はハーバード大学医学部で放射線科の助教授として活躍されています。視覚野に関する知識が豊富でMRIに精通している先生は、人間にとって最も身近で謎に満ちた病気の1つである偏頭痛に関心を抱いています。
MRIを使った偏頭痛の研究
ほとんどの偏頭痛は前触れなしに起こりますが、偏頭痛患者の約10パーセントで偏頭痛を起こす20分ほど前に目のちらつき — 閃光、もしくは前兆 — が見られます。Hadjikhani先生の研究の1つは、MRIを使ってこの前兆をとらえることです。幸運なことに、バスケットボールをするとほぼ毎回前兆が起こり、偏頭痛になる患者がいました。Hadjikhani先生は「研究所の隣に小さなコートがあり、患者は私達のためにバスケットボールをすることに合意してくれました。バスケット後すぐにMRIで画像検査を行いました。MRIで偏頭痛を見たのはこれが初めてでした」と述べています。
画像は驚くべきものでした。現在、Hadjikhani先生と医師達は、前兆を伴う偏頭痛は、皮質拡延性抑制(cortical spreading depression)と呼ばれる現象によって起こると考えています。基本的には、何かをきっかけに、視覚野とその周辺の神経活動が活発になります。Hadjikhani先生らは、皮質拡延性抑制によって化学物質が発生し、脳を取り囲んでいる神経ネットワークおよび血管を含む髄膜に変化が起こると考えています。その結果、偏頭痛の痛みが誘発されます。
将来、Hadjikhani先生の偏頭痛の研究により、皮質拡延性抑制を抑える薬が開発されることでしょう。「神経細胞膜を安定させる薬を使えば、前兆を伴う偏頭痛を抑制できることは明らかです。現在、抗てんかん薬は存在しますが、効果が多少強すぎて、さまざまな副作用が起こる場合があります。私達の研究により、治療薬としてではなく、発症メカニズムに焦点を当てた薬の開発への道が開かれます」と先生は語っています。
人体の表情を読み取る
また、Hadjikhani先生は、表情や体を使った表現がどのように脳内で認識されるか、についても研究されています。他人の態度の中から恐れ、いらだち、怒りを認識するのは脳のどの部分でしょうか。Hadjikhani先生とオランダ、ティルブルフ大学(Tilburg University)のBeatrice de Gelder先生は共同でその研究を進めています。
Hadjikhani先生は「現代ではより多くの人々が他人の顔を観察しており、顔に関する蔵書の多さは驚くほどです。しかし、通常人は顔だけでなく、体全体を見ています」と述べています。
Hadjikhani先生とde Gelder先生は、体を使った表現の複雑なパターンをライブラリとしてを初めてまとめ、実験で利用することにしました。2人はMRIを使い、灰白質の同じ塊の部分、すなわち扁桃体と紡錘状回が顔と体を使った表現の両方を処理していることを発見しました。
この情報は、自閉症、ウィリアムズ症候群、ハンチントン病、パーキンソン病を研究している医師に役立つことでしょう。これらの疾患をもつ患者は、しかめっ面とはにかんだ笑顔の区別が難しいという症状が見られます。「顔を使った表現を認識できなければ、体を使った表現の理解がいかに難しいかわかりますか」とHadjikhani先生は問いかけます。現時点ではまだ明確な答は得られていませんが、先生の研究が新しい治療薬の開発、治療法の解明につながることを願っています。
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