
![]() 地域の中核病院として年間570例に及ぶ脳神経外科の手術のビデオ作成をMacintosh環境で行い、カンファレンス、学会発表、教育へと活用の幅を広げている済生会熊本病院脳卒中センター。 Macintoshによる手術ビデオの編集システム運用と今後の展望・理想的な環境作りについて、済生会熊本病院 脳卒中センター(脳神経外科) 部長の西徹先生に、お話を伺いました。 手術ビデオをカット編集しカンファレンスの効率をあげる 「手術ビデオの記録を完全にデジタル化してからは、カンファレンス、学会発表、教育の効率は格段に向上しましたね」 と西徹先生は語ります。脳神経外科では2004年の手術用顕微鏡更新を機に、手術ムービーの作成をより効率的に行えるよう、ビデオキャプチャからビデオ編集・DVD制作まで、一貫してMac環境で運用を始めています。 済生会熊本病院脳卒中センター脳神経外科では、年間570例の手術が行われ、その中でも最も多い脳動脈瘤のクリッピング手術は年間に210例にのぼります。これら手術ビデオのアーカイブにアップルのビデオソリューションを活用されています。 脳動脈瘤手術をより安全に行うために、顕微鏡(Olympus OME-8000)の視野内に内視鏡(Olympus ニードルスコープ MSS-28CSシリーズ、外径2.8m、内視鏡用カメラOTV-S)の映像が入るピクチャー・イン・ピクチャーのシステムが導入されています。 内視鏡と顕微鏡からの術野を映し出す2つの映像は合成装置(イメージミキサー)に送られピクチャー・イン・ピクチャーの状態に合成されてモニターに表示されると同時に、ハードディスクに記録されます。オペ中は執刀医の指示により助手やナースが録画/一時停止の制御を行います。顕微鏡操作が終わり閉頭を開始する時にハードディスクからDVD-Rへコピーをはじめ、オペ終了時にはDVD-Rができているので、医局に持ち帰りデジタル処理を行う上で重宝しています。また、記録時には書き込み時に6分ごとのオートチャプターを入れ、再生時にチャプタースキップできるように工夫しています。 この方式により、手術後に患者さんの家族にすぐにムービーを再生して、手術の様子を説明することも楽にできるようになったそうです。 「それまではS-VHSテープで記録していたんです。巻き戻し、あるいは早送りをしながらの再生には時間がかかっていました」 デジタルで手術を再生するようになってからは、 「見せたい箇所を、素早く再生できますから効率はぐっと良くなりましたね」 ![]() ここで記録した動画を西先生をはじめとする脳神経外科スタッフはiMovieで編集してカンファレンスに備えます。 「Power Mac G5デュアル 2.5GHzを使ってiMovieで編集しますが、OS Xになってから動作が安定しているし、処理がきわめて速いため編集作業に全くストレスがないですね」 新患カンファレンスは毎火・金曜日の午前7時30分から8時30分の1時間です。 午前9時からは手術や外来のスケジュールが入っていますから、長引かせられない実情があります。多いときには5日間で9例の動脈瘤クリッピング手術をこなされるそうですから、より“多くの症例”を限られたカンファレンスで効率よく伝える必要があります。 「iMovieで伝えたいポイントを絞り込んだカット編集をしておくことで効率よくカンファレスを進めることができます」 カンファレンスの時間内にビデオで伝えられる症例数が増え、さらにカンファレンスの精度が高まったそうです。 カンファレンスには脳神経外科医7人、神経内科医7人、放射線科医3人に、看護師や理学療法士など、多いときには25人近くが出席します。ビデオは、150型スクリーンにプロジェクタで映し出して説明しており、大人数でも見やすいため、カンファレンスの効率と精度を支えています。 学会のように限られた時間内で発表をしなければならない場合と、講演のように長い時間を使ってプレゼンが行える場合とではビデオ編集の視点が異なります。手術シーンのどこをピックアップして聴衆にお見せするか、その内容が異なりますし、再生時間の長さも異なります。 「DVD-Rに記録しておいた手術動画を元にiMovieで学会用に、あるいは市民講座のような講演用にと、自由に編集を行っています。ドラッグ&ドロップで簡単に編集ができるので、作業はきわめて楽ですね」 西先生は学会用と、講演用とをそれぞれ編集して、より分かりやすい講演を実現しているそうです。 また後進の医学生や医局員の教育用に、ビデオ編集は欠かせないそうです。 「手術のストラテジーを立てられるように指導するのが、現場教育にとって必要不可欠です。 病変部はまさに十人十色。部位が異なれば、患者さんの頭をどの方向に固定するのか、皮膚はどう切開するのか、また、内視鏡と顕微鏡では同じ術野でも視野が全く異なってきます。シェーマと言葉で説明するより、手術例の動画で実際の術野を再生して理解してもらうのがベストでしょう」 ![]() 動脈瘤の手術を例にとれば、動脈瘤に至るまでの静脈の剥離方法から、術野の展開の方法、さらに、動脈瘤の位置、形状、周囲血管との関係、内視鏡による死角部の状態などから、適切なクリップを選択して、クリッピングを行う瞬間までをも数例の動画を使って指導しているそうです。 「内視鏡を用いることにより、顕微鏡では見えない裏側の観察が可能となります。内視鏡映像を含めた手術動画を使うことによって病変周囲の組織、血管をどう傷つけないようにするかまで、適切な指導ができます。iMovieのおかげで教育の質も向上しました。」 iDVDで拡がる動画活用の可能性 「iMovieで編集したビデオをiDVDでオーサリングして、さまざまなオリジナルDVDを制作しています」 と西先生は、これまでに制作したオリジナルDVDを机の上に並べてくださいました。脳卒中センター全体を統括する藤岡正導副院長が中心となって、教育用途の映像がライブラリ化されています。 『脳動脈瘤手術 基本手技とpitfall』は動脈瘤手術の総論から各部位の動脈瘤手術の実際について全5巻にまとめたものです。 『ICLSコース』は、意識障害患者の基本的な蘇生術から、薬物や器具を使った蘇生方法をまとめたもの。 「赤い動脈瘤」は、年間脳動脈瘤件数が200例を越えた記念に、脳動脈瘤診断から入院、手術、術後管理、退院の流れを患者の視点に立ってまとめたものです。 また、2006年は済生会熊本病院の設立70周年にあたります。脳卒中センターの記念事業として患者さん向けのオリジナルDVDを作る計画があるそうです。 「脳動脈瘤、脳梗塞、救急救命をテーマにした3本立てで、2005年9月にクランクインの予定です」 西先生はこのプロジェクトのディレクターを担当される予定で、既にシナリオの構想を検討されているようです。
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