OsiriXベースのPACSでフィルムレス環境を構築
Mac ProのDICOMワークステーションとしての実力
100%無償のDICOMビューアであり、使いやすいDICOMサーバとしての機能も合わせ持つOsiriX。片倉病院(宮城県大崎市)脳神経外科の片倉康喜先生は、2005年秋にOsiriXをベースとしたPACSを導入。MRI、CT、CR、エコーなどのモダリティ機器と連携させて運用されています。また、2006年9月には端末にMac Proと30インチCinema Display 2台を導入してシステムを強化、医用画像に関しては完全なフィルムレス環境を構築されています。そこでOsiriXベースのPACS導入とそのメリット、そしてMac ProのDICOMワークステーションとしてのパフォーマンスについて、片倉先生にお話を伺いました。
効果的なフィルムレス環境の導入
片倉病院が本格的にOsiriXベースのPACSを稼働させたのはシーメンス社製Magnetom Avanto(MRI)が導入された2005年11月。当初はフィルムと併用し、段階的にデジタルに移行。現在はMRI、CT、CR、エコー、マンモグラフィーすべてをデジタル化し、完全なフィルムレス環境で運用しています。
「フィルムの現像代、廃棄コスト、現像機のメンテナンス、フィルムの保管や運搬といったランニングコストをトータルで考えると、フルデジタルのフィルムレスにしたほうがいい。また、デジタル化によってすべての検査画像を半永久的に保存できる点、膨大な数のフィルムの中から必要なものを探し、物理的にフィルムを運ぶというスタッフの労力が大幅に削減される点、いずれにおいてもフィルムレス化する意義は大きいと思います。」と片倉先生。
片倉病院では専用のPACSサーバは用意していません。なぜならOsiriXをPACSサーバとして利用しているからです。MRIなどのモダリティ機器からDICOMデータを直接OsiriXに転送し、そのままストア。OsiriXにはDICOMリスナー機能があるため、IPアドレスを設定すれば、DICOMサーバとしてモダリティ機器から直接DICOMデータを受け取ることが可能です。参考までに、片倉病院の現在のDICOM サーバのハードウェアは、プライマリサーバがiMac(Core Duo)に外付けのハードディスクとしてLacie Biggest 2TB array、セカンダリサーバがMac mini(Core Duo)とLacie Biggest 2TB array。ソフトウェアはOsiriXの2.61です。(2006年12月現在)
“(DICOMデータ共有のための)操作は、DICOMサーバとして設定したOsiriXのマシン上で、“OsiriX 共有”のチェックボックスをチェックするだけ。Mac OS XのBonjour機能を介して、LAN上にあるほかのOsiriXマシンからでもサーバ上のDICOMデータベースを見ることができます。”
現在、Bonjourでつながっているクライアントの数は、院内で7台(脳神経外科2台、外科/整形外科外来1台、内科外来1台、放射線科2台、ナースステーション1台)。OsiriXのユーザは、片倉先生含め医師7名、放射線技師3名、看護師15名、理学療法士3名です。
OsiriXベースのPACSの使用感
OsiriXベースのPACSを本格的に導入して10ヵ月あまり。使用感について片倉先生は次のように話しておられます。
「“検索項目を入れてクエリのボタンを押すと検索結果が出てくるので、それをクリックすればローカルのデータベースにコピーされる。あとはそれを開いてください”。これがこれまでの一般的なPACSサーバの使い方だったと思います。それに対してOsiriXのBonjour共有は、画面上に見えているサーバを選んでクリックするだけで、まるでローカルデータベースような動作をします。(リモートのサーバにあるDICOMデータを)手元でインクリメンタルサーチできますし、ソートも可能。スライスのサムネイルが全部見え、それをクリックすれば実際の画像が出てきます。“リトリーブしないと絵が見えない”というものとは、まったく別ものです。」
OsiriXのBonjour共有は非常に分かりやすく、操作が簡単なため、これまでパソコンユーザではなかった病院長も、特に導入トレーニングをしなかったにもかかわらず、OsiriX のフィルムレス環境を使いこなしているそうです。「これが、通常のクエリ/リトリーブ方式だったら、“絵が出ない!”と大騒ぎになると思います(笑)。」
さらにMac OS Xで動作するOsiriXならではの便利さとして先生は、①コメント欄に症例などのキーワードを入れられる、②スマートアルバムを作っておけば、コメントをつけた段階で疾患ごとに自動的に分類され、患者数なども自動的に集計、表示される、などを挙げています。
PACSとしてのOsiriX、その選定理由と拡張性
MRIを選定する際、いろいろな環境を検討したという片倉先生。PACSも高額なワークステーションも含め、OsiriX以外のシステムも一通り見て回ったそうです。またWindowsベースのDICOMサーバ、Conquestも使ってみたそうです。
その中からOsiriXを選定した理由を尋ねると、「まずユーザインターフェイスが圧勝でした。サーバ機能がバージョン2.0から入るのが分かっていたので、あとはコスト面を考えるだけでした。それに(OsiriXは)無料なので、万が一不都合があっても、その時点でシステムを軌道修正することもそれほど難しくはない、そういった判断もありました。あとは柔軟性の問題ですね。専用ワークステーションやサーバの場合は、システムの更新の自由度が低く、更新するとなるとユーザ側の(予算的な)体力も必要です。一方、OsiriXはソフトウェアのバージョンアップが早く、世界中の現場の医師からのフィードバックを得てどんどん進化する、さらにそれに対するハードウェアであるMac、特に最近のIntel Macはパフォーマンス向上のサイクルが早く、どんどん使いやすくなっています。そういった点でも勝っていました」
このように完全なフィルムレス化をスムーズに実現させた片倉先生も、完全なフィルムレスにそのまま移行するのが難しいケースもあるといいます。「例えば、フィルム上の何ミクロンといった銀の粒子を読むような読影スタイルを、そのままフィルムレス環境に持ち込むのは難しいのです。その場合はデジタルの特性を生かし、必要に応じて検査画像の拡大・縮小を行う、ウインドウレベルを変更するなど、読影のスタイル自体を変える必要があるでしょう。」
また、片倉病院の現時点(2006年12月15日現在)でのPACSサーバのデータ量は、画像数が486,801、データ容量は305GBとなっています。当然、DICOMデータは日々増え続けていきます。
将来的なシステム拡張について伺うと「DICOMのデータ量や運用の規模によってはOsiriXベースのPACSが合わない病院もある」としながらも「当院の将来的な拡張性については、万が一、データ量やディレクトリの関係で限界が来てしまった場合でも、専用のいわゆるDICOMサーバを追加するのはしたくない。(クエリ/リトリーブ方式によって)Bonjour共有の手軽さが損なわれてしまうのは避けたいからです。OsiriXはMacさえあれば、簡単にサーバを増やせます。例えば2007年まではこのサーバ、それ以降は別のサーバ、という具合にサーバーを分割していけば、対応は十分できるわけです。実際、当院では複数のOsiriXベースのPACSサーバが動いていますし、サーバの切り替えはワンクリックで済みます。これが高価なサーバが1台で動いているケースだったらどうでしょう。それに限界が来た場合、まずコスト的なところから考えて始めないといけなくなってしまうかもしれません」
PACSはPACSで、(電子カルテなど連動せず)独立したものとして考える方が、進化に自由度があって、結局は使いやすい——。これはOsiriXベースのPACSを導入した先生の現時点での考えです。さらにOsiriXならユーザインターフェイスが良く、DICOMデータが膨大になったとしても、目的の画像へのアクセスは容易に行える。こういった点も含めて評価されています。
「(開業医などから)どの程度の規模のものを導入すればいいか。あるいは何年もつのか。目安を教えてほしい。そんな質問があるかもしれませんが、正直言って、私たちも分かりませんでした。ただ、足りなくなったところを簡単に足すことができ、そのままシームレスに使い続けることができる。これがOsiriXベースのPACSサーバの良さであり、こういうのを本当の意味で“スケーラブルなシステム”と言うのでしょう。」と片倉先生。
PACSとしてのOsiriX、セットアップと導入の実際
MRIなどのモダリティ機器とOsiriXの接続設定は、片倉先生と病院スタッフの2名で行っています。シーメンス社製MRIについては、コンソールのスーパーユーザ権限がユーザ側にないため、PACSサーバのIPアドレスの設定はメーカーにお願いしたそうです。OsiriXの一般ユーザがOsiriXベースのPACSをセットアップできるかと伺うと、「LAN内や個別のパソコンにファイアウォールが設定されているような環境でなければ、決して難しくありません。」という答えが返ってきました。
病院でPACSサーバを2台設置している理由については、OsiriXがバージョン2.0になってしばらくはリモート側からの要求に対してレスポンスなどの面で多少安定性に不安があったことから、「2台のMacを PACSサーバにして、モダリティ機器から同時に両サーバに同じデータを送り、万一、片方がトラブった場合は、もう片方に瞬時に切り替えるという形で運用をしていたため」だそうです。「OsiriXのBonjour共有はversion 2.3でだいぶ改善され、2.5では安心して使えるようになりました。現在、2ndサーバはバックアップ的に使っています」(片倉先生)
病院ではその後、サーバをPowerPC G5からIntel Core DuoのMacに入れ替えています。それからはレスポンス的にも安定しただけでなく、(サーバ上の画像を)クリックしてから手元にくるまでのタイムラグが少なくなり、非常に快適になったとのこと。また、MRIを導入した2005年11月からOsiriXをベースとしたPACSを使っており、当初、データベースの再構築が必要な場面はあったものの、最近ではそれも必要なくなり、アプリケーションの再起動以上のトラブルシューティングが必要な場面は遭遇しておらず、非常に快適な環境下で利用しているということです。
Mac、Apple Cinema DisplayおよびApple Cinema HD Displayは医療機器ではありません。導入および運用に関しては、医師や医療機関の裁量に委ねられています。
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