OsiriXをベースにしたPACS導入のケーススタディ
基本となる構成例
OsiriXによるPACSを実際に現場で活用している事例について、片倉病院の例をこちらの記事でご紹介しています。では実際にこのような活用をするために必要な機材や設備はどういったもので、使い始めの設定や基本操作はどのようなものなのでしょうか。システムの構成は利用する環境や規模によって様々に異なりますが、ここでは導入に際して基本となる最小構成例をご紹介します。
OsiriXはオープンソースとして無償で提供されており、基本的にシステム構築はユーザ責任で行う必要がありますが、ユーザの環境に応じた小さなシステムから始められるのが特長です。
なお、OsiriXは頻繁にバージョンアップされ、日々進化しているソフトウェアです。この記事はバージョン2.6をベースにしています。
必要なハードウェアとソフトウェア
ハードウェア
- DICOM準拠のモダリティ機器
DICOMフォーマットでない画像データ(例えば、フィルムをスキャンして得られたJPEGデータなど)はOsiriX内に保存することはできますが、DICOMのヘッダ情報がないため、OsiriXの各種画像解析の対象にはできません。 - 必要な台数のMac
ネットワーク上の構成としては最低1台のサーバと、DICOMビューアとして画像の閲覧に使用するクライアントからなります。サーバ側に、専用のPACSサーバを利用することも可能ですが、ここでは最小構成例としてサーバ、クライアントともにOsiriXをインストールしたMacで構成します。この場合、サーバ側には適当なサイズのストレージが必要ですが、Xserveのようなサーバ専用ハードウエアが必須なわけではありません。
現在、OsiriXが動作する条件はMac OS X 10.4以降がインストールされたPowerPC G4、PowerPC G5、またはIntelのいずれかのプロセッサを搭載するMacですが、こちらのベンチマークを見てもわかるように、Intelプロセッサ搭載Mac上でのOsiriXのパフォーマンスは非常に優れており、サーバ側では大量のデータを管理する役割を担い、クライアントでは閲覧の際にさまざまな画像処理を行うことができます。3D再構成まで視野にいれるなら、クライアント側のマシンパフォーマンスは高いほうがより快適に利用できます。特にMac Proは処理の速さに加え、複数のディスプレイを接続できるアドバンテージがあり、広大なワークスペースで、さまざまな視点から検査データを閲覧するのに適したワークステーションとなります。 - データの保存やバックアップ用のストレージ
大量のデータの保存やバックアップのために、RAIDを構築した外付けのストレージやNAS(Network Attached Storage)を用意します。OsiriXを活用する規模やネットワーク環境などに鑑みて、適切なものを選択します。 - 院内のLAN
TCP/IPベースのLAN。大量の画像データをやりとりするため、Gigabit Ethernetが推奨されます。このネットワークに、モダリティ機器、サーバとなるMac、クライアントとなるMac、必要に応じてNASなどが接続している状態で使用します。
もちろん、Macの台数もストレージの台数や容量も、必要に応じて少しずつ増やしていくことことができます。スケーラビリティに優れたシステムと言えるでしょう。
ソフトウェア
OsiriXはオープンソースに基づいたソフトウェア、つまり無償でダウンロードして利用できるソフトウェアです。OsiriXはUniversalアプリケーションですので、PowerPC搭載MacでもIntelプロセッサ搭載Macでもネイティブに動作します。英語のみのバージョンのほか、メニューなどが日本語にローカライズされたリソースを含むインターナショナルバージョンも用意されています。本記事では、メニューコマンドやツール名などは日本語インターフェイスの用語で解説します。
ダウンロードからインストール、そして設定の流れを見ていきましょう。
OsiriXのインストールから設定まで
- ダウンロードとインストール
OsiriXの公式Webサイトから、ソフトウェアをダウンロードします。Mac OS Xで“パッケージ” と呼ばれるインストーラ形式になっていますので、画面の指示に従って進めていくだけです。サーバとなるMacにもクライアントとなるMacにも、同じソフトウェアをインストールします。 - PACSサーバとなるMacの設定
まず、PACSサーバとなるMac(以下、OsiriX PACSサーバと呼びます)の設定をします。 OsiriXを起動し、OsiriXメニューの「環境設定...」を選んで環境設定を開きます
環境設定>データベース
DICOMデータを外付けのストレージなどに保存する場合は、「場所:」で「その他」を選択し、該当するディレクトリを選択します。
環境設定>リスナー
この環境設定ではモダリティや他のPACSサーバからDICOM画像を受信するための設定します。AEタイトルとはPACSネットワーク上での識別名です。大文字、小文字の区別があり、複数のリスナーを同一ネットワーク上に設定する場合は、それぞれ異なる名前を付ける必要があります。TCP/IPポート番号は、特に事情がない限り初期設定の4096のままでよいでしょう。またTCP/IPアドレスとTCP/IP名が適切であることを確認します。この2つは、Mac OS Xのシステム環境設定の設定が反映されるので、通常変更する必要はありません(IPはあドレスは固定される必要があります)。「以下のパラメータ設定で、OsiriX動作中はDICOMリスナーを起動」にチェックをいれたら設定を有効にするため、一旦、OsiriXを終了して、OsiriXを再起動します。
この、リスナーで設定した項目はDICOMデータを送信するモダリティ機器側に送信先として設定しておく必要があります。
環境設定>場所
他のPACSサーバへのクエリ/リトリーブを利用する場合は、環境設定の「場所」で設定します。接続先のIPアドレスやAEタイトル、ポートなどを登録します。なお、接続先の機器にもOsiriX側のAEタイトル、ポート、IPアドレスを設定する必要があります。また、固定IPアドレスのOsiriX PACSサーバがある場合はここで設定することができます。なお、後述するBonjour経由でOsiriX PACSサーバを利用する場合には、この「場所」設定は必要ありません。
ファイアウォールの設定
このMac本体でファイアウォール機能を使用する場合(Mac OS Xの「システム環境設定」>「共有」>「ファイアウォール」>「開始」を設定している場合)は、4096番(TCP)および8780番ポート(TCP)、5353(UDP)の通信を許可しておく必要があります。OsiriX PACSサーバのデータベース共有にこのポートを使うためです。具体的には、Mac OS Xの「システム環境設定」>「共有」>「ファイアウォール」で「新規…」を選択して上記ポートを追加します。
Bonjourによる共有
このOsiriX PACSサーバでモダリティ機器からのDICOMデータを受信し、OsiriXのローカルデータベースに追加します。また、DICOM CDやストレージに既存のDICOMデータを追加したい場合は、ファイルメニューの「読み込み」を選んで読み込み、OsiriX上で利用することもできます。
次にこのOsiriX PACSサーバ上のローカルデータベースを、ネットワーク上に公開します。データベースのウインドウ上部にある「アルバムとソース」ツールをクリックすると、アルバムとソースのドロワーが開きます。この中にある「以下の名前でデータベース共有」にチェックをつけ、適切な名称に入力します。これだけで公開されますが、公開したデータベースをセキュリティ保護したい場合は、「パスワード保護」にもチェックをつけ、このローカルデータベースにアクセスする際に必要なパスワードを入力します。
クライアントとなるMacの設定
OsiriXを起動し、データベースのウインドウ上部のツールバーににある「アルバムとソース」ツールをクリックしてドロワーを開くと、「ソース」欄にOsiriX PACSサーバで共有しているデータベースの名前が見えます。これをクリックし、必要に応じてパスワードを入力するだけで、サーバ上のデータベースを閲覧することができます。
ドロワーの「ソース」欄にOsiriX PACSサーバが見えない、あるいはサーバ自体は見えているのにデータベースに接続できない場合はファイアウォールによってポートが閉じている可能性があります。上記「ファイアウォールの設定」を参考にサーバ、クライアントともに指定のポートが設定されていることを確認します。
デュアルディスプレイ時のレイアウト
OsiriXでは複数のディスプレイでの表示に対応しており、環境設定>「ビューア」>「スクリーン&ウインドウサイズ」で設定することにより、データベースウインドウとビューアウインドウを別々のディスプレイに表示したり、すべてのディスプレイを使って複数の画像を表示させたり、といった設定が可能です。例えば、Appleの30インチCinema HD Displayを2台使うことで合計8Mといった広いワークスペースで作業を行うことができます。
Mac、Apple Cinema DisplayおよびApple Cinema HD Displayは医療機器ではありません。導入および運用に関しては、医師や医療機関の裁量に委ねられています。
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