OsiriXで利用可能なリアルタイムレンダリングボード「VolumePro ®」
OsiriXはMac単体でもボリュームレンダリングなどの3D再構成が可能ですが、テラリコン社製のレンダリングボード「VolumePro」とPower Mac G5の組み合わせではボリュームレンダリングの速度を飛躍的に向上させることが出来ます。VTKのソフトウェアレンダリングで利用した場合、その速度はMac本体の性能に依存しますので、3Dオブジェクトの操作をした時に、表示されるまでにどうしても再計算している感じがあります。一方、VolumeProはオンボードのメモリ上にデータを蓄積して、非常に高速でレンダリング処理をしますので、OsiriX上でストレスなく、リアルタイムで3D画像操作をすることが出来るようになります。
そのVolumeProがOsiriXで利用できる意義について山本先生に伺いました。「OsiriXは当初よりVTK(Visualization Tool Kit)、ITK(Insight ToolKit)と呼ばれるオープンソースの3Dイメージングライブラリと高度なセグメンテーション用ライブラリを利用していますが、VTK、ITKは非常に賢いライブラリで科学技術系で使いたい3D処理、解析系のツール、領域抽出フィルタ群を網羅しています。これらの開発には(基礎的な研究レベルから含めると)膨大な時間がかけられていて、とても即興で作れるようなレベルのものではないのですが、オープンソースで提供されているのでOsiriXのユーザはその恩恵を享受できるのです。ただ、難点は(パフォーマンスなどを)最適化して利用しようとするとプログラミングのハードルが非常に高くなってしまうという点だったのですが、VTKがVolumeProをサポートしたので、OsiriXでもVolumeProが利用できるVolumePro対応版の「OsiriXVP」がリリースされています。VolumeProは現在、業界最速のレンダリングボードで実際に非常に高価な専用ワークステーションでボリュームレンダリングエンジンとして利用されています。そういう意味ではOsiriXはオープンソースでありながら、メディカルイメージングの世界で全部王道をいっていますね。この業界で一番有名なイメージングライブラリ、一番速いレンダリングボードという組み合わせは非常にバランスがとれていると思います。」
「現場でのVolumeProの利用メリットは、単に忙しいドクターの作業効率だけでなく、トライアンドエラーを繰り返しながらOsiriXをはじめて操作する際に圧倒的に習熟スピードを短期間にできる点や、細かな設定に挑戦したいと思う人にとっても、ストレスのない効率的な環境を提供する優れたオプションになると思います」 Power Mac G5+VolumeProという組み合わせは、OsiriXの有用性を最大限に引き出すシステムと言えそうです。
未来型メディカルイメージングプラットフォームの可能性
「OsiriXは単なるフリーウエアのDICOMビューアという位置づけにとどまらない革新性を内包しています。OsiriXは完全オープンソースのソフトウェアとして提供されており、今後、さまざまな施設・診療科・コミュニティが独自のプラグインを作成して進化させてゆくことが可能なのです。OsiriXではQuickTimeだけでなく、STLやInventor、VRMLなどいろいろなジャンルのデータフォーマットに書きだせるのも医工連携の観点から他のDICOMビューアにない大きなポイントになるとおもいます。臨床分野だけでなく、こういった構造解析や流体解析といった各ジャンルの標準フォーマットに書き出せるのは、今のところ多くの人には必要ないかもしれませんが、今後の発展を見据えた未来型といえると思います。
これはどういうことかというと、従来は特注で非常に莫大な開発費をかけていたような特定分野に特化したソリューションがオープンソースのOsiriXをベースにしたプラグインの開発によって低コストで開発でき、従来あきらめていたものが実現できる可能性が非常に高い、ということです。例えば、大動脈瘤でどこに一番血流のテンションがかかっているかを計算するものというのは普通にはないんですが、OsiriXが書き出せるSTLとかInventorのファイルを工学の手法を使って解析すれば、生体に関してもそういった流体力学的な解析が可能になる、ということです。従来、こういったシミュレーションは実臨床での現場や工学側単独の臨床アイデアとして絶対にでてこない発想なんですが、医療の場合にはこういったシミュレーションはあくまでも経験を積んだドクターにとってのセカンドオピニオンとしての補助ツールという位置づけになるので有効なんです。同様なアプローチは脳機能解析や手術支援、薬の体内でのデリバリー状態を画像から判断する、といったさまざまな分野での応用が考えられます。また、日本人に多い疾病に特化したプラグインもおもしろいと思います。」と今後のソフトウェアプラットフォームとしてのOsiriXへの期待と展望を語っていただきました。
「当然その場合にシミュレーション結果の表示は2Dより3Dのほうがわかりやすく、より有効といえます。読影の教科書も2次元のスライスデータのことしか書いてなかった時代では、スライスデータから3次元再構築して医学に役立てること自体まだ受け入れられていませんでした。これはほんの5年前のことです。ようするに(この分野では)それだけの劇的な変動があるということです。OsiriXが出てきたことが象徴的ですが、その背景には今のMac OS X環境はUNIX、 JAVA、マルチプラットフォームといったキーワードで語れる未来型の医工連携のツールとしての土台が揃ったといえると思います。90年代前半はMacのDTPでの利用を目的とした環境やツールを学会発表などにも使う、というのが非常に便利で使いやすいと評判だったわけですが、現在のMacはUNIXのコードがそのまま動くということが重要で、UNIXの世界で蓄積されてきたものを使って生のデータや信号を扱えるというのが、これまでとは全然違うポイントですね。展望は明るいと思います。」
