Mac OS9時代の統計アプリケーションの定番はStatViewでしたが、その開発はOS9版で終了しており、Mac OS Xで使用できる統計アプリケーションを模索している方も多いのではないでしょうか。鳥取大学医学部病態解析医学講座の祝部先生は、日頃の統計解析作業のなかでMac OS Xに対応した統計アプリケーション「Prism」を利用されています。Prismは、日本国内ではまだあまり知られていませんが、医学・生物学研究に必須の生存率解析やt検定、one way ANOVAなどの解析手法を備えており、比較的安価ながら、従来の解析アプリケーションにはない強力なグラフ作成機能を搭載しています。そこで、祝部先生にPrismの特長とメリット、ご自身の日頃の統計解析ワークフローにおけるPrismの位置づけについて伺いました。
統計解析にパーソナルコンピュータを導入したきっかけ
祝部先生のご専門は分子薬理学ですが、統計学的手法を使ったデータ解析のエキスパートでもあり、普段、薬物の作用機序に関する基礎実験データを解析するのみならず、長年の研究生活のなかで循環器や中枢神経系の実験データの解析も数多く手がけておられます。現在進めておられるのは、対象者数約7,000例の臨床アンケート調査で、このアンケートは質問肢が100以上もあるとのことです。これほど大規模な解析も、祝部先生にとっては日常的な作業のようです。そんな祝部先生が、最初にパーソナルコンピュータを導入したきっかけを伺いました。
「パーソナルコンピュータを使う前は、当然ながら、すべての統計解析は手計算でした。はじめてパーソナルコンピュータを統計解析に使ったのは、実はMacintosh SEだったのですが、そのきっかけは、友人が持っていたMacintoshを見たことからです。これはすごいヒューマン・インターフェイスを持ったパーソナルコンピュータだなと。そして、これを使えば解析作業の効率を大幅にアップできるに違いないと思ったのです」 さらにMacintosh IIfxを導入して最初に統計解析に使い始めたアプリケーションはExcel(当時,98,000円)とStatViewだったそうです。「セルにデータを打ち込み、統計手法や変数を選択するだけで結果が出るなんて、電卓を使った手計算から比べれば夢のような進歩だったんですよ」
StatViewを長年使い続けて
祝部先生がStatViewを使用し始めた頃は、StatView IIという名称で、マニュアルも全て英語版でしたが、Excelと合わせて使い始めるまでに、それほど時間はかからなかったといいます。「それ以来ずっとStatViewを使い続けてきました」。 「現在は、OSXのクラッシック環境で起動して使用していますが、幅広い解析手法が採用され、専門的な統計解析にも使えるアプリケーションは限られていますので、StatViewの開発終了は残念です。いずれは他の統計アプリケーションに乗り換えねばならない時が来るのかも知れません」と語ってくださいました。
しかし、一方でSPSSなどの統計解析アプリケーションは操作が複雑であり、とっつきにくい面があるといいます。「今の学生達は、学部でSPSSを学んでいたりしますので、彼らはそれで良いと思います。しかし、これまでStatViewを使ってきた方が乗り換えるのは、なかなか大変です。もし、これらのアプリケーションを使いたければ、最初からじっくり学ぶ必要があるという条件付きですし、どのような統計手法を必要としているのか、果たしてそこまで高度な統計解析アプリケーションが必要かどうかも考えに含めなくてはなりません。高機能なぶん複雑ということがありますので」。いずれにしても、どの統計解析アプリケーションを使うかは、ユーザのスキルや必要とする統計手法などによって変わってくると先生はおっしゃいます。
統計解析ワークフローにおける複数のアプリケーションの使い分け
祝部先生は、統計解析の一連のワークフローのなかで、複数のアプリケーションをどのように使い分けておられるのでしょうか。また、ワークフローにおけるPrismの位置づけについても伺いました。 「基本的なデータ入力と解析は、昔と変わらず、ExcelとStatViewの組み合わせで行っています。しかし、論文作成やプレゼンテーションにおいて、解析結果をビジュアルとして効果的に伝えるには、StatViewだけでは不十分なものがあります。そこで、グラフ作成アプリケーションであるDaltaGraphを使って論文や発表用のグラフを作成したりします。これが、私の場合の基本的なワークフローです。正確には、"従来のワークフロー"は、これでした」。
これまで、StatView+DaltaGraphという組み合せで、ほとんどのグラフを作成していたという祝部先生ですが、Prismに出会ってからは、ワークフローが変わったそうです。 「Prismは、薬物の用量反応曲線のようなグラフ(シグモイド曲線)を非常に綺麗に出力してくれますので、今では、正確な曲線グラフが必要な場合には、StatView+DeltaGraphではなく、Prismを使うようにしています」。DeltaGraphでは、イメージした曲線グラフを書くのに多少の試行錯誤が必要でしたが、Prismでは、これらの作業が実際の数値データに基づいて自動的に行われるので、簡単に正確な曲線が描けます。
Prismとの出会い
祝部先生がPrismを使い始めた理由は、それが Mac OS X対応アプリケーションだったことだけでなく、曲線グラフの作成(特にシグモイド曲線)をはじめとして、各種のグラフ作成機能が優れていたことだそうです。「Prismと出会ったきっかけは、とある海外論文誌を読んでいて、とても綺麗な用量効果曲線のグラフを見つけたことです。一体、どんなアプリケーションを使って描いているのかと興味をもち、調べてみると、Prismが使われていました」。 実際にPrismを使ってみての感想は「Prismに搭載されている解析手法は、医学の臨床研究や基礎研究にフォーカスされています。これは医学以外の統計解析全般を相手にする統計の専門家にとっては、やや物足りない感じもありますが、逆にいうと、臨床医家や医学の基礎研究に携わる先生方にとっては、かゆいところに手が届く設計になっていると思います」とのことでした。
例えば、先生ご自身も、薬理研究などで多用される「50%有効濃度(EC50)」などの数値が自動的に計算してくれる点に感心なさったのだそうです。Prism開発の中心人物が薬理学者であることが、このアプリケーションの医学研究における使いやすさに繋がっているのかも知れません。 いずれにしても、いまや、祝部先生にとっては「用量反応曲線(シグモイド曲線)など、精緻な曲線グラフの作成時には」Prismが必要不可欠なのだそうです。


