Mac OS Xネイティブな環境に対応した統計パッケージ

医学研究に不可欠な統計処理において、大規模臨床試験や治験などの研究では、統計の専門家を加えながら行われることが知られています。しかし多くの臨床医が行う症例研究や学位取得のための基礎研究などでは、小規模な観察スタディが多く、個人で統計処理を行っている医師がほとんどでしょう。汎用統計パッケージは幅広い分野のユーザに対応した構成になっているため、多種多様な統計手法を含み、通常の医学研究ではあまり使用しない解析手法も含まれます。

GraphPad Prism 4は臨床研究をはじめとする医学・薬学分野で頻繁に使用される統計手法を網羅した統計パッケージとして開発されているため、個人で研究を行う統計処理に適しています。このため統計学を専門としないユーザでも容易に統計解析が行える設計になっています。 今回ご紹介する統計ソフトウェアPrismは、カルフォルニア大学の薬理学者:H.J. Motulsky, M.D.によって開発されたもので、医療ユーザの視点から開発されています。Prismは医療・生物統計学、科学的なグラフ作成、カーブフィット、実験データの管理を効率よく、スピーディに行うことができ、t検定による有意差の判定、Anova分散分析(一元配置、二元配置:post hocテスト)、生存分析、ノンパラメトリック分析などの統計処理に関してインタラクティブに操作することができます。Prismでは5つのセクション(Date Tables、Info、Results、Graphs、Layouts)で構成されたプロジェクトファイルとしてデータが作成されるため、研究テーマごとに実験データを分かりやすく管理することが可能です。またセクションには複数のシートが作成でき、それぞれが個別に対応するグラフや表などと自動的にリンクしています。これによりデータを編集することによって、即座に分析結果とグラフが自動更新(作成)されます。

これまで医療分野で使用されてきた統計ソフトウェアは、StatView、JMPなどの手ごろなものから、SPSS、SAS 、Systatなど高度な統計解析が行えるものがありました。その中でもメニュー型で直感的に扱うことのできるStatViewは、多くの臨床医、研究者から支持されてきましたが、2002年末をもって開発・販売中止となっており、Mac OS Xに対応した統計パッケージとしてPrismのユーザが急速に増えています。

StatViewをしのぐ特色をもつPrismは、生命科学に特化した表現力に富んだグラフの作成ができるため、Mac OS Xで論文作成、学会発表を行う医師にとって、最適な統計パッケージの1つと言えるでしょう。また海外の著名な学会誌にもトップクラスの採択実績を誇り、統計パッケージとしての信頼性も高く評価されています。しかし現在は日本語版の製品がないこと(日本で販売されているものは、日本語マニュアルが付属しています)や、このソフトウェアに関する書籍がほとんど見当たらないことから、これまでそれほど知られていないようです。

医療統計の分析をスムーズに行うユーザフレンドリーなインターフェイス

統計ソフトには、特有のコマンド処理で記述するタイプと、コマンドをメニューから選択するタイプがあります。Prismはプログラミングの経験がなく、MacのGUIに慣れたユーザにとって使い勝手の良いメニュータイプとなっています。このユーザフレンドリーなインターフェイスにより、統計ソフト特有のコマンドを覚える面倒さから開放され、Macフィールな直感的なインターフェイスから操作が行えます。 Prismによる統計処理フローはデータセット、分析手法の選択、計算結果の確認、グラフ作成・編集、プレゼンテーションレイアウト・ファイルエクスポートの5つのステップにより行います。

1. 対象となるデータの入力

統計解析をはじめるために、まずデータテーブルに解析したいデータを入力します。データはシートに直接入力することもできますが、Excelをはじめとする表計算プログラムや統計ソフトウェアで作成したデータをインポートすることも可能です。

2. 分析手法の選択

次に処理メニューの選択から分析手法を選択します。用意されている分析手法を使って統計処理を行う場合は、セットされたデータから5つの「Type」(Curves & regression、Statistical analyses、Date manipulations、Simulate and generate、Clinical lab)による処理内容を選択し、サブメニューから目的の解析方法を選びます。ここで解析内容ごとに詳細なダイアログが表示され、解析を行う上での注意点や例示があるため、ユーザは画面にしたがって処理を進めていくだけで解析が完了します。一度処理した後でも、誤りに気づいたり、他の分析手法で再解析を行う場合、Analyzeメニューから選択し直すだけで変更が可能です。一元配置と二元配置分散分析(繰り返しの測定を含む)、ノンパラメトリック比較、生存分析など、統計手法にしたがって適切な検定が自動的に行われます。

3. 計算結果の確認

計算結果は、Resultシートに実行したデータ分析の計算結果が表示され、その計算結果からさらに分析を行ったり、グラフに展開できます。データの変更を行う場合、元データは変更されず、新しいResultシートが作られて、そこに変更した値を書き込みます。また実験に関する関連情報(実験者、日付、ロット番号などの定型的な情報と、考察などの不定形データ)などは、Infoシートに自由に記入することができます。

4. グラフ作成と編集

Prismでは、新しいプロジェクトやデータテーブルを作成すると自動的に対応するグラフが描画されるため、「Graph」タブをクリックして画面に表示させることができます。またひとつのデータテーブルから複数の異なるグラフを作成することも可能です。さらに用意された多様なグラフフォーマットから、分析内容を選択することもできます。 グラフの色、シンボル、線や棒の形状、軸の範囲と表示方法など多様な編集機能により、各人の好みにあった表現力豊かなグラフに仕上がります。また軸破断したグラフも、3ステップの操作で簡単に作成できます。データのばらつきを表現するエラーバーのプロットでは、エラーバーの設定変更によりY方向だけでなくX方向にもプロットが可能で、エラーバーグラフを散布図に変更することもできます。こうして作成したグラフは線形・非線形解析による美しい曲線の描画で表示されます。

グラフスタイルやよく使用する分析パターンがある場合にはテンプレートとして保存できますので、個人の研究内容にあわせた環境を作り、作業を効率化することが可能です。

5. プレゼンテーションレイアウト・エクスポート

作成後のグラフは、複数を1ページに配置したり、データテーブル、結果テーブル、テキストオブジェクトなどを配置できるレイアウト機能で、出力したい内容をページ単位にデザインすることができます。
Prismによって作成されたデータは、エクスポート機能により印刷用途にも対応した1200dpiの高解像度画像TIFFをはじめ、JPEG、PICT、PNG、BMP、PCXなど、多様なファイル形式に出力できるため、コンピュータプレゼンテーション、投稿論文作成、Web、学会発表のプレゼンテーション作成と、さまざまなシーンで活用できます。