医師が活用するPodcastの可能性
最新ジャーナルの情報収集と動画コンテンツの配信

岐阜県 東可児病院循環器科 進智康先生
今回は、日々の医療活動や病院内外のコミュニティの活性化にブログを活用し、臨床現場ではOsiriXをはじめ、様々なMacソリューションを利用されている進智康先生(東可児病院循環器科:岐阜県)に、日々の業務の効率化、最新の情報を入手・発信する手段として、iPodやMacの活用法を紹介していただきました。
ブログで地域・病院スタッフ•医師同士のコミュニティを活性化
循環器科の専門医、進先生が自身のブログ「東可児第13同盟」を始めたのは、東可児病院に赴任した2005年10月末から。このブログは東可児病院の公式ホームページにリンクする公式ブログとして存在し、日々の活動や病院のニュース・トピックスを始め、患者向けの医療情報など、病院のホームページを補足する内容を配信しています。
そもそも「東可児第13同盟」を始める前からブログに興味を持っていたという進先生。新天地でブログを始めた経緯については、「循環器という自身の専門分野のこと、仕事内容、考え方などについて、皆さんに知ってもらいたいと思ったため。」と話しています。
東可児第13同盟
東可児病院の公式ブログ。日々の活動や病院のニュース・トピックスを始め、患者向けの医療情報などを配信している。
「病院の公式ホームページに載っている情報というのは、所在地や連絡先、診療時間、診療科、担当医など、パンフレットに載っていること以上のものではないです。それに対して当院のブログ『東可児第13同盟』では、病院で働く職員はどのような人達で、医師は普段どんなことを考えて仕事をしているかなど、“人となり”みたいなことが分かるような、少し柔らかい情報も載せています。また、外来では時間がなくてなかなか話せないような内容を書くこともあります。」
実際、コンテンツのカテゴリには「治療」や「検査」のほかに、「忘れ得ぬ患者さんたち」、「がんばれ新人さん」、「恩師 古高(秀喜)医師の想い出」という普通の病院ホームページでは見られないようなタイトルも並んでいます。「どんなに優秀なSEやWebマスターがいても、コンテンツ自体は私たち医師が考えないと、病院の公式ブログとして面白くてためになるものはできない。逆にSEやWebマスターがいなくても、コンテンツさえしっかりしていれば、価値があるものができると思っています。」
ブログの更新はほぼ毎日。日々の診療業務の合間を縫って作業をしているとのことですが、「全然苦にならない」と先生。「ヒゲをそったり、風呂に入ったりするのと一緒で、すでに生活の一部になっています。逆に今は書かないとかえって落ち着かないです(笑)」
日々、話題を見つけて記事を書くという作業を続けられる理由は何か。進先生の話から、医師がブログを立ち上げることのメリットや可能性が見えてきます。そのひとつが「地域や患者のコミュニティになっていること」。進先生は診察時にブログのURLが書かれた紙を患者に渡しています。最近では、ブログの存在を広めるだけにと止まらず、検査結果や治療結果を患者に説明する際に利用することもあるそうです。
「患者さんにブログのことをお話しすると、反応がメールやトラックバックではなく、オフラインでも返ってきます。顔を合わせたときに『ブログ見ましたよ』って声をかけてくれるのです。コンピュータが使えない年配の患者さんの場合だと、『息子が見せてくれました』と。田舎の病院だからかもしれませんが、都会とは違った反応、地方色があっておもしろいですよ。」
同時に患者がブログを見る機会が増えたことで、最近ではとくに患者を意識した内容をブログに載せようになったと言います。「何気ない言葉でも患者さんを傷つけてしまう。言葉の使い方にも配慮するようになりました。」
もうひとつのメリット・可能性として挙げられるのは、「ブログを通じて仲間が増えること」。進先生がブログを始めてから、他の医療関係者のブロガー(ブログを発信する側)の友人ができ、コンタクトを取るようになったそうです。
医師向けのPodcastについて
「東可児第13同盟」では、医師向けの情報としてPodcastを紹介されています。少しずつ医師向けのPodcast番組が増えていますが、いまだに「“iTunesは音楽を聞くもの”と思っている医師も多い」と進先生。進先生が医師向けのPodcastを紹介すると、ほとんどの医療関係者が驚くそうです。
先生自身がよく聞いていて、ブログでも取り上げているPodcastは、NEJM(New England Journal of Medicine)の「NEJM This Week」やNatureが配信している「Nature Podcast」などのジャーナル系、そして専門の循環器系の番組などです。ブログではアメリカの循環器の専門医による「This Week in Cardiology」、アリゾナ心臓病学会の「Cardiovascular Multimedia Information Network」、アメリカ心臓病協会監修の「ACC Conversation」などを紹介されています。なお、アップル Medicalサイトでは医師向けのPodcastを一覧で紹介していますので、ぜひご覧ください。
こうしたPodcast番組の情報は、医学誌や学会誌のホームページでも紹介されてはいるものの、ご自身のブログでも紹介された理由として「ブログで医師向けのPodcast番組を取り上げることで、医師同士の情報交換になれば良いと思った」と進先生は話します。
進先生の場合、Podcast番組を病院内で昼休みや検査や診療の待ち時間、当直中に聞くことが多いと言います。音声や動画番組であるPodcastを評価する点は、「紙ベースの論文やジャーナルと違い、PodcastはiPodに入れておけば、多くの情報を手軽に携帯でき、空いた時間に気軽に聞くことができる」ところと言います。内容に興味を持ったときは、実際の記事や論文に当たることもあるそうです。
さらに昨年11月から先生自身もPodcastの配信を初められています。医師向けのPodcast番組としてはKarl Storzが提供している医師向けのビデオ「Network1」のような手術の動画主体の番組や、京都大学医学部が配信している肝臓移植手術ビデオ、あるいは「JP OsiriX VideoPodcast」のような映像コンテンツに魅力を感じるということで、先生は「急性心筋梗塞のカテーテル治療」「バイパス手術後のカテーテル検査」などの映像コンテンツを配信されています。
Podcastの制作は、Macの中核を成すiLifeソフトウェアのひとつ、GarageBandですべて済ませることができる。
ご自身でPodcastを配信してみた感想は、「思ったより簡単」とのこと。「コンテンツさえあれば、配信はMacであっという間でしたので、苦労はしませんでした。今回の番組はもともとビデオ用、iDVD用として作成したものをWebとPodcast用に加工したもので、画質的にはまだまだ改良の余地がありますが…」と語っています。
Podcast番組を配信することで、映像コンテンツとして多くの人のiTunesライブラリに加えてもらえるメリットもあると進先生。「病院内外問わず、周囲からは『参考になった』という声が多かったので、今後、病院職員の教育や患者さんへの医療教育など役立てそうです」
“ビデオPodcastは新人医師の教育だけでなく、ある程度の経験を積んだ医師にとっても価値がある”
手技の向上に役立つビデオPodcast
Podcastに限らず、期待度が高い動画配信。とくに外科を生業にしている医師にとって、手技の向上のためにも現場を見ることは必須です。「教育に限らず、手技の向上を考えるのであれば、その手法として活字より映像のほうがいいと思います。やはり文字情報より動画情報の方が得られるものが多いいですから」(進先生)
そういう意味では、かつては技術力のある医師の元に足を運び、手術の様子を見学させてもらうのが普通でした。最近では学会や研究会などでライブやデモンストレーションを行うケースも増えつつありますが、日々の診療や手術に追われて参加できない医師もいます。時間が取れない場合は学会や出版社が発行するDVDやビデオを購入し、それを見て学ぶことができるものの、こうした動画の多くは意外と高価です。「そうなると、フリーで手軽に手技の動画が観られるPodcastの存在は大きい。iPod上のディスプレイでも、伝えたい情報は十分伝わると思います」
ビデオPodcastは新人医師の臨床教育だけでなく、ある程度の経験を積んだ医師にとっても価値があると、進先生。「この間、『Network1』のコンテンツを当院の外科部長にも見てもらいましたが、画像の鮮明さと内容の濃さに非常に驚いていましたね」
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