新しいトランジション、ベジェ曲線などのグラフィック機能、スライド作成支援機能などの追加で、さらに高い表現力のプレゼンテーションをより簡単に作成することが可能になったKeynote 3。学会発表などでKeynoteを活用され、『Keynote 2プレゼンテーション入門(秀潤社)』の著者でもある杏林大学医学部共同研究施設フローサイトメトリー部門の高橋 良先生に、新しいKeynote 3の機能やプレゼンテーション用資料の作業効率の変化、MacBook Proとの組み合わせによる可能性などを伺いました。

受け手の記憶にどれくらい残るか。視覚に訴えることを重視
文字情報はシンプルに簡潔に視覚に訴える。必要な部分だけをハイライトで見せ、視線を集中させる。起承転結やここぞ、というキメの部分にトランジションを利用する─。高橋先生のプレゼンテーションをひとことで表現するとしたら、まさに「記憶に残させるプレゼンテーション」と言えるでしょう。
こうした訴求力のあるプレゼンテーションを実現させたのがKeynote 2だと評価しておられた高橋先生ですが、バージョン3にアップし、さらに高い表現力でより簡単に魅せるプレゼンテーションが可能になったKeynote 3に対して、「バージョン2の時に“これが欲しい、これを使いたい”と思っていた機能がKeynote 3になって備わった。完全型に近い状態になった感じがします。」とコメントされています。
そもそも、高橋先生が考えるプレゼンテーションとはどのようなものなのでしょう。「全体的にシンプルに仕上げること。そして見せ場を作ること」と2つのポイントを挙げました。
「やはり学会も受け手、つまり聴衆の先生方にどれくらい印象を与えられるかが勝負です。どうしたらインパクトを与えられるプレゼンテーションができるか考えたとき、イメージとして脳にインプットされやすいグラフィカルな視覚情報によって訴えるのが最も効果的であるという結論に行き着きます。例えば、プレゼンテーションのメインとなる場面の直前にトランジションを使って、『ここは注目してほしいところ』だとアピールしたり、タイトルやコメント、図、グラフも整然と並べて洗練されたイメージを与えたりしています。」
Keynoteに切り替えてから『どんなソフトを使っているのか?』と聞かれるようになりました。
さらに発表する場の多くが医学会、医療従事者を想定した依頼講演であるため、当然、アカデミックであることも重要と指摘します。「例えば、単なる棒グラフがただ並んでいるスライドと、エラーバーがある見やすいデザインのグラフが的確な付加情報を伴って整然と並んでいるスライドとでは、どちらのほうに信憑性を持てるでしょう。やはり後者です。発表の場ですから、これまで積み上げてきた研究の成果に対しより信憑性を持たせたいわけで、そのためには見やすく、整然と並べられていて、必要な要素がすべて入った図やグラフが欠かせないのです。」
実際、高橋先生がプレゼンテーション用ソフトをPowerPointからKeynote 2に切り替えて、1年あまり。周囲からのさまざまな反響もあったと言います。
「学会の発表後、『どんなソフトを使っているのか』と聞かれるようになりましたね。最近は発表の内容もさることながら、きれいな画面、スマートなプレゼンテーションなどに興味を持つ先生方が増えてきたのでしょう。」
画像のピックアップから加工までの一連の作業がスムーズに
Keynote 3で高橋先生が高く評価されているのは、新しくサポートされたグラフィック機能。とくにiPhotoからの画像の取り込みからイメージ調整の連携、ベジェ曲線のサポート、そして任意の図形によるマスク機能の3つです。

どの画像素材をピックアップして、どのように加工するとプレゼンに使えるか、そのための最良な選択を検討する。これは思った以上に時間を取られる作業だと言います。「管理している素材のなかから必要なものだけをピックアップするのは、素材が増えれば増えるほど面倒になりますが、iPhotoで管理している素材であれば、Keynoteのメディアブラウザを通してドラッグ&ドロップでシームレスにKeynoteに取り込むことが可能なので、非常に使い勝手がいいですね。」
このように画像の選択から加工までの一連の作業がiPhotoとKeynoteだけでできるようになったことに対して、「この連携はすばらしい。これを見せると、きっと多くの人が感心すると思いますね。」と高橋先生。

高く評価する点として挙げられたベジェ曲線のサポート。ベジェ曲線はコンピュータで曲線を表現する方式のひとつで、グラフィックソフトのAdobe Illustratorなどで採用されています。これまでのKeynoteには任意の図形を作ったり、写真などの画像を任意の形にマスキングしたりする機能が備わっていなかったため、既存の図形のなかから選ぶか、アドビ社のIllustratorやPhotoshopなど他のグラフィックソフトを利用するかのいずれかの方法しかありませんでしたが、Keynote 3ではベジェ曲線機能がサポートされたため自由な曲線を描けるようになり、思い通りの図形を作成し、さらにそれを画像のマスキングのために利用できるようになりました。
例えば、高橋先生のプレゼンテーションのイントロ部分でよく用いる手法に、まず人体図を出し、そこからある部分にフォーカスを当て、さらにその部分の細胞を見せるというスケールダウンの手法があります。「これからどのような発表を行おうとしているのか、イメージを掴んでもらうには、マクロからミクロへ視点を移していく方法がいい。そして細胞の写真を見せるとき、このベジェ曲線によるマスキングが便利なのです。」
高橋先生が発表に使われるオリジナル写真は顕微鏡写真が多く、細胞が星のように点在しているそうです。「そのなかから見せたい細胞だけを囲んで切り取っていきますが、細胞の位置がバラバラなので四角や丸で囲みきれないこともけっこうあります。それがKeynote 3になって自由な図形でマスキングできるようになり、見せたい細胞だけを切り抜いて見せることが可能になりました。これは画期的でしょう」
また組織図をイラストに起こす際、他のグラフィックスソフトを駆使していたそうですが、「これも必要なくなりました。」とひとこと。
イメージ調整やiPhotoとの連携、ベジェ曲線以外に、オブジェクトのグループ化後のリサイズ、変形、回転機能などもKeynote 3に備わりました。 「結論を言うと、グラフィックに関しては、Keynote 3でほとんど間に合うようになりました。高価なグラフィックソフトが要らないですし、何より、作業効率とスピードのアップが測られたのは大きいですね。体感的ですが、同じ内容のプレゼンテーション用の資料を作る場合なら、おそらく3分の2ぐらいの時間で仕上げることができるのではないでしょうか。どの先生方もそうでしょうが、発表の資料作りがルーティンワークではなく、限られた時間中で作らなければならないということを考えると、作業時間や効率がアップしたというのは、たいへんうれしいことです。」
グラフ機能、スライド作成機能など、そのほかの新機能
Keynote 3にはグラフィック機能のほか、グラフ機能、新しいトランジション、スライド作成支援、発表機能などにも新機能が加わっています。こちらでは「新しいトランジションと、ライトテーブル表示によるスライド入れ替え作業がとくに使いやすい」と先生。

「とにかくKeynote 3になって増えたトランジションは、面白いものばかり。私自身はとくに“反射”に注目しています。学会のような場では使えるものが限られてしまいますが、依頼講演のように少し長い時間枠が設けられているようなケースでは、少し遊び心が入った雰囲気が出せて、見ている人たちを飽きさせない、こういった機能は大いに利用していきたい。もちろん闇雲に使うと全体がごちゃごちゃした感じになってしまい、返ってインパクトがなくなるので、あくまでもほどほどが大切ですが。ライトテーブル表示によるスライドの入れ替えが簡単に行えるようになったのは、これも“本当に欲しい機能のひとつがサポートされたという感じ”がします。」と高橋先生。
グラフ機能は一般的な折れ線グラフや棒グラフに加えて散布図がサポートされ、たいへんきれいな仕上げのグラフが書ける一方で、学会で発表することを考えると、もう少しアカデミックなスタイルが欲しいと先生は指摘します。「エラーバーの表示は学会発表のグラフではもはや必須だといってもいいでしょう。数字を入れるとエラーバーが出るような仕組みがあるといいですね。」と話しています。
「“リハーサル機能”は、地方の学会などに行くときなど、移動中や前日の練習が可能です。まだ使ってはいませんが、話し出すタイミングを教えてくれる“スライド進行インジケータ”や、スライドに張り込んだ動画のコントロールや繰り返し再生ができる“ムービースクラブ”機能により、さらにスマートな発表が可能になると思います。プレゼンテーション資料にスティッキーズのようにメッセージを書き込めるコメント機能も、何人かで共同でスライドを作成する際などに有効でしょう。」


