山本修司先生
東京大学医科学研究所細胞プロセッシング研究部門
客員研究員、東北大学大学院工学研究科COEフェロー
いち早くIntel プロセッサ搭載Macにネイティブで対応した100%無償のDICOMビューアOsiriXの最新版(Version 2.3.1)。PowerBook G4から大幅にパフォーマンスアップしたMacBook Proでどの程度のパフォーマンスを発揮するのでしょうか。OsiriXのパワーユーザであり、医学分野と工学の交わる領域でビジュアリゼーションを中心にさまざまな研究・開発に携わっている山本修司先生(東京大学医科学研究所細胞プロセッシング研究部門客員研究員、東北大学大学院工学研究科COEフェロー)にお話を伺いました。
RSNA2005で見せた4つのキーワード
2005年11月25日から12月2日の6日間にわたって、マコーミックプレイス(アメリカ・シカゴ)で開催されたRSNA(北米放射線学会)2005。OsiriX関連では、1) 新たなプラグインを含めたOsiriX自身の研究開発、2) 臨床で用いられるPACS(画像情報管理電送システム)に装備することの有用性、3) 高次医用画像処理の教育への取り入れ、4) iChat AVと連動させたビデオ会議システムを利用した遠隔医療への応用、という4つのテーマが、それぞれ別セッションで発表されていました。
同学会に参加されていた山本先生も、OsiriXの発表には注目されていたそうです。「いずれも興味深いテーマですね。例えばオープンソースであるOsiriXなら学生達も容易に手が出せますし、ビデオ会議で医療画像を共有しながらディスカッションすることも可能です。今後さらに普及すれば、かなり完成度の高い環境が提供できるのではないでしょうか」と話しています。
OsiriX+MacBook Proのコンビネーションが実現するもの
年々RSNAでのプレゼンスを高めているOsiriXですが、実際、信じられないほどのハイスピードでその進化を遂げている一方、高性能になればなるほどその機能を十二分に発揮させることのできる、高速なマシン環境も必要になってきます。
最新版のOsiriX version 2.3.1をMacBook Proで動作させた山本先生のファーストインプレッションは、「とにかく、信じられないほど速い。OsiriXがUniversalアプリケーションとなっても、レンダリングボードなしで、しかもノートパソコンレベルでは、3Dレンダリングをすると絶対に待ち時間やストレスがあることは否めないと思っていましたので…。これは、今まで高速CPUと大容量メモリのWindowsデスクトップPCを使用していても満足いくスピードが得られていなかったユーザであれば、なおさら信じられないと思います」というものでした。
前回、OsiriXに関する記事で登場いただいた際のインタビューでは、「OsiriXで3次元画像に本格的に取り組むなら、Power Mac G5にVolumeProのようなボリュームレンダリングボードの追加が非常に有効」と語っていた先生でしたが、今回のMacBook Proに関しては、「ボリュームレンダリングでは専用レンダリングボードには確かに及ばないものの、まずストレスなく3次元画像が扱え、それ以外の部分でも驚くほど速くなっています。それが、これだけスリムで軽いノートブックで実現されているというのはかつて例がない。OsiriXとMacBook Proのコンビネーションは、ハイエンドデスクトップのPower Mac G5と同程度以上のパフォーマンスがあると実感しています」と言います。
MacBook Proにおけるスピード、パフォーマンスは、これまでのノートブックマシンに対する固定観念を覆すといっても過言ではありません。
OsiriXが医療現場で必要になってきたその背景には、CTやMRIの進歩が挙げられます。例えば、かつて400枚、500枚でもかなりの枚数と考えられていたCT画像。それが16チャンネルのマルチスライスCTの登場によって画像数は爆発的に増え、64チャンネルも可能になった現在において、すでに1,000枚は当たり前、症例によっては数千枚撮るというケースが出てきています。山本先生によると、例えば交通外傷で救急に運ばれてきた患者さんは、どの部位に重傷性の所見があるかバイタルサインのチェックだけでは分からないので、全身を撮影することになり、そうなると1,000枚を超えることもあると言います。「肝臓がんの精査のケースでは、ご存じの通り、肝臓には門脈をはじめ動脈や静脈が集まっています。造影剤がたどり着くタイミングにズレが生じますから、その度にスキャンを行う必要があり、単純計算で1回に300枚の画像を撮るとしたら、特定臓器の場合でも4回の撮影で1,200枚以上になります」
こうした大量の画像をロードし、診断や研究の参考にする場合、作業に膨大な時間がかかっては業務自体に差し障りが出てきます。MacBook Proの登場によって処理時間が大幅に短縮されたことは、少なくとも臨床の現場において、さらに活用場面が広がったと言えるのではないでしょうか。
「まずは体験して速さを実感してもらいたいですね。軽量型のノートブックであるMacBook ProとOsiriXの組み合わせは、医療におけるモバイル環境では、コスト、パフォーマンスともかつてない最高の医用3次元画像処理環境と言えると思います」
PowerBook G4やPowerMac G5との比較で高いパフォーマンスを実証
実際にOsiriX 2.3とMacBook Proとの組み合わせは、既存の組み合わせに比べてどれほどパフォーマンスの違いがあるのでしょうか。山本先生はMacBook Pro、PowerBook G4、PowerMac G5の3機種において、CT画像945枚のシリーズを用いて比較されています。
| 2Dビューアへの読み込み時間 (初回。945枚のCTスライス) |
ボリュームレンダリング計算処理時間 (945枚のCTスライス, ノンシェーディング) |
|
| PowerBook G4 1.67GHz(PowerPC G4) | 60秒 | 3分01秒 |
| MacBook Pro 2.0GHz(Intel Core Duo) | 16.7秒 | 22.6秒 |
| Power Mac G5 1.8GHz(Dual G5) | 16.2秒 | 17.2秒 |
| Power Mac G5 1.8GHz(Dual G5) +Volume Pro 1000 |
─ | 7.3秒 |
【各マシンスペック】
PowerBook G4 17" 1.67GHz 1GB RAM/128MB VRAM
MacBook Pro 15" 2.0GHz Dual 2GB RAM/256MB VRAM
Power Mac G5 1.8GHz(Dual G5) 4GB RAM
「この比較から分かりますが、MacBook ProとPower Mac G5は5秒前後の差しかありません。ほぼ同じパフォーマンスなのがお分かりになるでしょう。PowerBook G4も200枚程度の比較的軽い画像を研究目的で使用するのであれば悪くはありませんが、やはりノートブックでありながらMacBook Proのパフォーマンスが際立っています。」
今回の比較で山本先生がもうひとつ注目したのは、MacBook Proのメモリへのアクセススピードです。「検査シリーズのDICOM画像945枚をメモリに読み込んだところ、Power Mac G5の16.2秒に対してMacBook Proは16.7秒とほぼ同等でした。驚いたのは、キャッシュが残っている2度目以降の読み込みがMacBook Proではたったの5秒なのです。Power Mac G5でも十数秒かかりましたから、まず、約1,000枚のスライスをまったくストレスなくロードできるということもさることながら、これは驚異的なスピードと言えます。これは実際の利用において繰り返しデータを引っ張り出すことが多いので、かなり使い勝手が向上すると思います」
さらに快適に利用するための簡単なテクニック
山本先生は画像の読み込みや画像回転などでは、簡単なテクニックを用いるだけでさらなるスピードアップが図れると言います。
シェーディング(陰付け)
「OsiriXでは、CTやMRIのボリュームレンダリング時にシェーディングモード(陰付け)とノンシェーディングモードの2通りの表示が可能です。シェーディングはリアルな画像イメージ再構成が可能ですが、その分だけ計算量も多くなります。Ver 2.3ではノンシェーディング時の処理時間が大幅に向上しており、画像を動かした際の再レンダリング時間も少ないので通常はそちらを選ぶといいと思います。MacBook Proで945枚のマルチスライス画像をノンシェーディングモードで処理・表示した場合、24、25秒程度の高速表示が可能です」
実はリンパ節などの淡い形状のものは影付けしてしまうと、かえって観察しにくくなってしまいます。また、ノンシェーディングでも画像の色や濃淡を操作することにより、シェーディングのような画像にすることもできます。「血管などの凹凸表示にリアリティが必要な場合は、あとからシェーディングをかければいいのです。この方法だとストレスもかからないので、スムーズに3次元画像を扱うことができます」

ノンシェーディングとシェーディングによるボリュームレンダリングの比較
3次元画像の効率的な操作とポジショニング
OsiriXではボリュームレンダリングのエンジンをCPU(レイキャスティング)もしくはGPU(テクスチャマッピング)を選択できるようになっています。 OsiriXのユニークな点は、このGPUを環境設定のビューアタブでテクスチャマッピング対象のメモリをコントロールできるところですね。「MacBook Proで両方試してみましたが、現況では、CPUのレイキャスティングのほうが高速で表示でき、かつ画像が美しいように思います。従来のPowerBookでは、回転、移動、ズーミング途中操作の描画レベルの精細度を『最高』にするとCPU演算で重い感じがありましたが、MacBook Proでは『最高』にしてもストレスがなく、最高にしておくことで、移動中の解像度低下も最小限に抑えることができます」と先生。
「3次元画像を動かしながら見たいポイント探る場合、。闇雲に画像を動かすのではなく、冠状断や矢状断、軸位断のプリセットポジションを組み合わせ使うとよいでしょう。これらは『3D Viewer』メニューから選択できる他、ツールバーをカスタマイズし、ボタンとしてツールバーに置いておくこともできます。確認したい部位に最も近い位置まで冠状断、軸位断などで瞬時に移動し、そこを拠点に効率的に画像を動かしていきます」
カスタマイズしたツールバー

