カラーマネージメントワークフローの構築
 

中村成一:
“水の表現”と肌のトーン

フォトグラファーやプロの印刷の世界では、より忠実な色再現とともに「記憶色」や「期待色」という言葉を使うことがあります。「記憶色」は、撮影者が写真に定着させたいと思った感動を含めた色合いのことで、一般的には実際の色よりも彩度やコントラストの高い画質に補正されます。一方「期待色」は、カラーフィルムのRGBデータを印刷用のCMYKで再現するときに、できるだけ「それらしく」表現する色のことを言います。

写真や印刷のデジタル化が進む以前からこのような言葉が使われてきたように、普段見る写真は決して実物そのままの色ではなく、人間の目による印象や主観、見る環境での補正によって左右されています。

中村成一氏は、「人間の目というのは優秀というか不思議なもので、かなり“比較”で人間は見ています。だから色空間とかシビアな視点で色を捉えることだけがいいことだとは思えません。僕の頭の中では、表現したい色というのはもうちょっと幅の広いもの」と言います。

作品2 作品3 作品4

資生堂という組織に所属しながらも、一人のフォトグラファーとして独自の作品を撮り続ける中村氏は先ごろ、エプソンのイベント用に作品を公開しました。普段はビューティー関連の、滑らかな階調による写真を撮っている中村氏ですが、この作品ではさまざまな色の個性を活かした幻想的な表現を行っています。通常クリエイティブディレクターやデザイナーと共同で進める作業を中村氏一人で行った、まさにフォトグラファーとしての独自性を発揮した作品です。人物の作品では大胆に青味を重ね、中村氏のライフワークともいえる“水の表現”を取り入れています。

「色の使い方は撮影ごとにさまざまですが、肌のトーンそのものは大事にしようと思っています。今回の写真ではすごく青い肌にしていますけれど、他と比較せずに見ると人間の目は白い肌と感じるんです。そういった色を感じる幅というものにすごく興味がありますね。」

水の表現を多彩に行なっている中村氏の作品には青を基調としたものが多く、その表現の幅には目を見張るものがあります。
「色の出しやすさという面では、青よりも赤のほうが出しにくいんです。写真全体にくっついてしまうというか、似たような色になりやすい。青はかなり階調が多く出てくるので幅のある表現ができます。」

青の繊細な階調をペーパーメディアで表現するのは難しいと言われますが、中村氏はMacとインクジェットプリンタの組み合わせによってイメージどおりの出力を実現しています。

「自分でスキャンして、Macでカラーコントロールすることによって、“実際の色”も出せるし、それ以上に強調して自分の“記憶色”にもできる。フォトグラファーにとって、まさに望ましい環境だといえます。」

 
 
 

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