中村成一:
比較として感じる色の面白さ

写真を撮り始めた当時の作品。風で照明を転がしながら撮影。

付箋紙に水の波紋を投影して撮影。常にこうした実験を試みている。

中村氏は写真を撮り始めた当時、千葉県の九十九里浜によく撮影に出かけたといいます。そのときに感じた夜明けの青の印象が現在の表現にも大きく影響しています。資生堂に入社して、次第に早朝撮影に出かけることができなくなった中村氏は、撮影スタジオの片隅に小さなセットを作り、さまざまな表現を模索していきました。プロジェクターで水の影を投影したり、ペンライトでアクセントをつけるなど、水の表情を活かす工夫が何度となく行われました。
「“もう少し引きで”とリクエストされることがありますが、よく聞いてみると周りにトリミング用のスペースがほしいだけだったりします。僕たちの場合“引き”というとパースペクティブが変わってしまうのですが、普通はパースという感覚がすぐに掴めないのも当然です。広角といってもただ周りが多く写るのではなく、どこかで光学的に引っ張られる感覚はフォトグラファーにしかないんです。そういった点で、現物を見せてコミュニケーションするためのツールとしてデジタルカメラとMacはワークフローを大きく変えましたね。」
また、多くのフォトグラファーにとって、ポジフィルムと印刷のイメージのギャップは大きな問題です。Power Macの登場以来Macを使い続けてきた中村氏は、印刷の場合も自分のイメージをプルーフとして渡せば、今はかなりそれに近づけて印刷してくれると言います。 「やはりポジは透過で印刷は反射の世界ですから、印刷するときにはCMYKの色空間に含まれない部分は諦めなければなりません。それでも、印刷でやれることとできないことが分かってくれば、“期待色”を自分のイメージに近づけていくことができます。」
撮影した写真を後から見て「もっと鮮やかだったはず」と感じる“記憶色”。見る人に自然な色合いと感じさせる“期待色”。こうした人間が感じる色の幅に中村氏は注目しています。
「たとえば人の肌にしても、夜のライトにいるときもあるし、日中の明るい光の中にいるときもある。あるいは木陰にいるかもしれないし、曇天の中にいるかもしれない。それぞれ色が全部違って、実際にはものすごく色温度の幅はあるんだけれども、でも人間の目というのは勝手に補正してホワイトバランスをとってますから。比較として感じる色の面白さと、どういう色の中に肌があるとキレイに見えるかといったことは、これからもいろいろな実験をしつつ、見ていきたいなと思います。」


