©『ヒロイン』製作委員会
「東京国際ファンタスティック映画祭 2005」の招待作品として上映された短編映画『ヒロイン』。制作を担当したグランデでは、かねてよりFinal Cut Proを活用しており、全編HDV1080iフォーマットで撮影されたこの作品の制作においても、取り込みから編集、書き出しまでアップルのFinal Cut Proが使われている。
映像クオリティの向上に挑む短編映画制作
短編映画『ヒロイン』は、ふとしたきっかけから、忘れかけていた夢に向かって再び歩み出し、自らの力で運命の扉を開いていく一人の若い女性の姿を描いた作品である。テレビドラマ「不機嫌なジーン」の脚本で向田邦子賞を受賞し、これまで数多くのテレビドラマの脚本を手がけてきた大森美香氏がメガホンを取り、撮影・福本淳氏、照明・市川徳充氏、録音・伊藤裕規氏という第一線で活躍するスタッフを集めて制作したこの映画で、撮影に使用したカメラは1台、編集機材はPower Mac G5が1台。『ヒロイン』はまさに、少数精鋭のスタッフが、最小限の設備で作りあげた短編映画なのである。
「映画というのは、たとえカメラが1台でもメッセージが伝えられます。そして、映画館という空間では、映像の余韻を楽しむことができます。テレビドラマではなかなかそうはいきません」と語るのは、大森美香監督だ。脚本家としての多忙な日々の合間を縫って映画に取り組む理由を、大森監督は次のように語る。「私自身、もともと物語を作るのが好きですし、自分の作った物語の感想をもらうのも好きなのです。でも、テレビドラマというのは、基本的に大勢で作るもの。私が書いた脚本も、演出する人によって意外な作品になることもあります。そこが面白いところでもあるのですが、短編映画ならもっと少人数で作れる。キャスティングから演出まで、自分の思いどおりにできるのが魅力です」(大森監督)。
短編映画『ヒロイン』について「素敵な作品に仕上がった」と語る大森美香監督。
『ヒロイン』制作のきっかけは、東京国際ファンタスティック映画祭から、招待作品の出品を打診されたことだったという。新しい作品を撮る上で、大森監督の頭にまず思い浮かんだのが、撮影の福本氏、照明の市川氏だった。「お二人とは、以前『恋文日和』(2004)という作品で一緒に仕事をしています。撮影の福本さんは私とセンスが合うような気がしますし、撮影機材に詳しくない私に、具体的にこの機材ではこんな絵が撮れるというのを見せてくれました。機会があれば、ぜひもう一度一緒に仕事をしたいと思っていたのです」(大森監督)。
大森監督に『ヒロイン』をハイビジョンで制作することを勧めたのは、福本氏だった。「家庭のテレビでさえハイビジョン映像が見られるようになってきたというのに、SDで撮るのはもったいない。作品というのは、作り手にとって大切な宝物ですから、より美しい映像で見てもらいたいし、またHDで撮ったほうが、今後、より多くの人に見てもらうチャンスが広がるだろうと考えたのです」(福本氏)。元々、東京国際ファンタスティック映画祭の短編映画部門では、作品はSDで撮影したものしか受け付けない規定だったという。「せっかくHDで撮れる環境があるというのに、SDにこだわる理由が理解できませんでした。主催者に理由を聞いてみると、上映用の設備としてデジタルベータカムのデッキとDVCAMのデッキしかないからだというのです。そこで、デッキを自分たちで用意するということで、主催者の了解を得ました」(福本氏)。
福本氏の提案により、『ヒロイン』の撮影用には、当時発売されて間もなかったソニー HVR-Z1Jを使用し、HDVの1080i方式で収録すること、HDVのネイティブフォーマットでの取り込み、編集、書き出しに対応したFinal Cut Proを使うことが決まった。一般に短編映画は、長編への足がかりとして作られることが多く、あまり予算をかけられないため、クオリティの追求は難しいと言われているが、『ヒロイン』は、その短編映画で高い映像クオリティを実現するという試みに、果敢にチャレンジする作品となったのである。
HDVの取り込み、編集、書き出しの全工程にFinal Cut Proを使用。
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