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先例を鑑みれば、RGBとYUV、どちらかひとつである方が便利なようにも思いますが、コンピューターグラフィクスの世界ではRGB、ブロードキャストビデオの世界ではYUVを用いる傾向があります。RGBは光の三原色に基づく、ある意味"素直"なカラーモデルだとして、それでは何故、YUVカラースペースが必要なのでしょう? 結論を先に言うと、「RGBよりもYUVの方がデータ量を減らしやすい」という理由が挙げられます。ブロードキャストビデオの世界では、効率よく視聴者に映像を配信・放送する必要があり、映像の画質もさることながら、映像の記録・ハンドリングに要するデータ量の低減化が求められます。 YUVカラースペースでは、『明暗・輝度の識別には敏感だが、色彩の識別には比較的鈍感』という、人間の脳のイメージ知覚特性を利用した、色彩情報の「間引き(ダウンサンプリング)」を施すことができます。その間引きの様を示す値が「4:x:y」といった数字で、これはYUV各色要素のサンプリング周波数(サンプリング解像度と考えれば良いでしょう)の比率を指しています。業務用デジタルビデオデバイスの多くはYUV4:2:2、DVはYUV4:1:1、DVDやHDV、地上デジタル放送といったMPEG2圧縮フォーマットではYUV4:2:0が採用されています。 隣接ピクセル情報の平均化を行うJPEG的圧縮が施されていなくても、色彩情報の間引きでデータ量を抑えるYUV4:2:2、YUV4:1:1は、圧縮フォーマットであるという見方もできます。理屈から考えれば、こうした情報の大胆な省略により、「画質が著しく劣化するだろう、そもそもイメージとして成り立たないのではないか」と誰もが思うかもしれませんが、不思議なことに、最終的に人間に知覚されるイメージには余り影響がないのです。対して、RGBカラースペースでは各色要素を等価に扱う必要がありますから、その一部の色要素を間引くなどということは不可能です。人間の知覚特性を巧みに利用した、色彩情報の間引きを伴うYUVカラースペースを考案した先人の知恵には、ただただ驚かされるばかりです。YUVカラースペースの存在により、ビデオテープやディスクなど、ある一定の条件の下に容量が限られる記録媒体に、画質をさほど劣化させずに映像を効率的に収めることが可能になったのです。 一方で、YUV4:2:2や4:1:1で、見た目の映像画質にはさほど影響がないとはいえ、それは1秒間に数十コマのイメージが連続的に流れる動画であるからこそで、静止した状態でRGBイメージと見比べれば、両者には歴然とした違いが現れます。色彩情報の省略の度合いが大きいほど、つまり、YUV4:2:2よりもYUV4:1:1の方が、映像の躍動感、生き生きとした様子は失われてしまいます。また、ビデオ合成といった場面では、YUVの個々のピクセルカラー情報の不正確さが合成結果に直接影響します。例えば、色彩情報を元にアルファチャンネル・マスクを生成するクロマキー処理も、 RGBに比べ、YUVの方が不得手となります。ビデオコンポジションを真に目的とするアプリケーション/システムが、YUVネイティブでなく、今なおRGBをベースとするのは、このような明白が理由があるからです。 ノンリニアビデオ編集アプリケーション/システムの多くは、Final Cut Pro HDも含み、現在は主にYUVカラースペースをベースに作業を行いますが、以上に説明したYUVの特性——効率的な映像の記録・データ量の低減と、その代償として避けられない画質/合成処理精度への影響——を、正しく理解するのが良いでしょう。アプリケーションの中で、何がどう処理されているのかを把握することは、決して無駄なことではありません。 |
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