Final Cut Pro HDの「ビデオ処理」の設定と正しいガンマ補正
 
Final Cut Pro HDのガンマコントロールの詳細
Final Cut Pro HDにおいても、やはりガンマが考慮されます。しかし、"コンピューター"ディスプレイデバイスではなく、"テレビジョン"ディスプレイにおけるイメージ再現性の向上が目されます。一般的なテレビ(ビデオ)のガンマは「2.2」なので、これに合わせてガンマコレクションの仕方も変わります。

まず、Final Cut Pro HDからRGBファイルをエクスポートするケースを考察しましょう。Final Cut Pro HDのビデオクリップはビデオガンマの「2.2」という特性を引き継いでいるものと見なされます。一方、Macのシステムガンマは「1.8」ですから、ガンマが「2.2」であるものを「1.8」に補正すべく、「1.8 / 2.2 ≒ 0.82」のガンマコレクションが自動的に適用されます。

図7 Final Cut Pro HDから出力するリニアグラデーションイメージ(YUVビデオクリップ)
図7 Final Cut Pro HDから出力するリニアグラデーションイメージ(YUVビデオクリップ)

図8 図7のイメージをエクスポートした結果のRGBファイルのイメージとガンマ特性(白線)<0.82ガンマコレクションが適用された結果>
図8 図7のイメージをエクスポートした結果のRGBファイルのイメージとガンマ特性(白線)
<0.82ガンマコレクションが適用された結果>

次に、RGBファイルをFinal Cut Pro HDにインポートするケースを考察します。ガンマが「1.8」という特性を持つMacディスプレイ上で作画されたイメージは、やはりガンマが「1.8」だと見なされます。ガンマが「1,8」であるものをビデオガンマの「2.2」に補正すべく、「2.2 / 1.8 ≒ 1.22」のガンマコレクションを適用します。

図9 Final Cut Pro HDに取り込むリニアグラデーションイメージ(RGBファイル)
図9 (RGBファイル)→(RGBファイル、TIFF形式)

図10 図9のイメージをFinal Cut Pro HDにインポートした結果のガンマ特性(Final Cut Pro HDの「ビデオスコープ | 波形モニタ」)<1.22ガンマコレクションが適用された結果>
図10 図9のイメージをFinal Cut Pro HDにインポートした結果のガンマ特性
(Final Cut Pro HDの「ビデオスコープ | 波形モニタ」)
<1.22ガンマコレクションが適用された結果>

このように、Final Cut Pro HDからのRGBファイルのエクスポート、Final Cut Pro HDへのRGBファイルのインポートの場面で、RGB各色のレベルが、その中域で上がったり下がったりするのは、この自動ガンマコレクション適用の結果であることを是非覚えて下さい。

自動ガンマコレクションのキャンセル
Final Cut Pro HDでキャプチャーしたクリップを連番ファイル形式でエクスポートし、これをそのままFinal Cut Pro HDに再度インポートするケースでは、ガンマは「2.2 → 1.8 → 2.2」と推移しますので、元のビデオイメージは正確に保れ、特に問題になることはありません。やっかいなのは、Final Cut Pro HDにRGBファイルを持ち込む際、1.8から2.2へのガンマコレクションが不要なケースです。

ソースのRGBファイルがガンマ1.8といった特性を持たない場合、あるいは意図的にRGBファイルのガンマ特性を無視したい場合は、常に適用されるガンマ1.8から2.2への補正処理 ≒ 1.22ガンマコレクションを見越して、RGBファイルをFinal Cut Pro HDにインポートする前に、予め手動で「自動ガンマコレクションの"効果を打ち消す"ためのガンマコレクション」——1.8 / 2.2 ≒ 0.82のガンマコレクションを適用するようにします。

RGBファイルをAとする場合

 「A × 1.8 / 2.2(手動ガンマコレクション) → 2.2 / 1.8(自動ガンマコレクション) → A」

となり、Final Cut Pro HDにインポート後でも、元のRGBファイルのネイティブ特性が維持されます。1.8 / 2.2 ≒ 0.82の手動ガンマコレクションは、Adobe Photoshop CSの「色調補正 | レベル補正」で、「入力レベル」の中央のフィールドに直接ガンマコレクション値を入力することで対応できます(図11)。

図11 Adobe Photoshop CSの「色調補正 | レベル補正」ダイアログ
図11 Adobe Photoshop CSの「色調補正 | レベル補正」ダイアログ

図12 PNG形式のリニアグラデーションイメージをFinal Cut Pro HDにインポートした結果のガンマ特性(Final Cut Pro HDの「ビデオスコープ | 波形モニタ」)
図12 図9のイメージに対して0.82の手動ガンマコレクションを適用したイメージを
Final Cut Pro HDにインポートした結果のガンマ特性
(Final Cut Pro HDの「ビデオスコープ | 波形モニタ」)

Final Cut Pro HDシーケンス上のRGBクリップの扱われ方
Final Cut Pro HDの場合、シーケンスは、シーケンス上のクリップの種別を問わず、常にオリジナルファイルを直接参照します。Final Cut Pro HDにRGBファイルをインポートする場合——RGBファイルをYUVシーケンスにレコードする場合でさえ、RGBファイルはYUVクリップに変換されたり、別の何かしらの中間ファイルに置き換えられることはありません。RGBファイルはRGBファイルのまま、直接、ファイルパスで参照されているのみです。

以前、XMLインターチェンジフォーマットについて解説したとおり、Final Cut Pro HDからMotionへプロジェクトを転送する場合、Motionが参照するのはFinal Cut Pro HDのシーケンスではなく、元々のオリジナルファイルです。

図13 Final Cut Pro HDとMotionのファイル参照の仕組み
図13 Final Cut Pro HDとMotionのファイル参照の仕組み

よって、Final Cut Pro HDからXMLプロジェクト経由でMotionに持ち込んだRGBファイルに関しては、0.82ガンマコレクション、および1.22ガンマコレクション適用の有無を考慮する必要はありません。Motionはピクセル処理を全てRGBベースで行いますので、Motion上ではRGBファイルはRGBのままネイティブに処理されます。

一方で、Final Cut Pro HDのYUVクリップは、Motion上ではRGBデコードされて処理されることになるので、先に解説したスーパーホワイト成分の欠落の可能性を考慮して作業を行うようにしましょう。
Pro/Film&Video

Final Cut Pro HDの「ビデオ処理」の設定と正しいガンマ補正
1: Final Cut Pro HDのビデオ処理の設定
2: Final Cut Pro HDの自動ガンマ補正機能 1
3: Final Cut Pro HDの自動ガンマ補正機能 2
PNGの利用
PNG形式のファイルは、ファイルガンマ値(埋め込みガンマプロフィール情報、gAMAデータ)を内包します。アプリケーションがPNGファイル内部のファイルガンマ値の読み書きに対応していれば、ガンマを見越して「最終的にこのように表示・処理されるべき」という解釈が行われ、イメージの表示の仕方、処理の仕方が自動的にコントロールされます。
例えば、Shakeで作成したガンマ1のリニアグラデーションイメージをPNG形式で出力し、それをFinal Cut Pro HDにインポートすると、図10に示した結果と異なり、PNGファイルに内包されるガンマプロフィールが優先され、元のガンマ1である状態が保持されます(図12)→(図12に示す結果と同様)。
Final Cut Pro HDのRGBファイル参照方式の利点
Final Cut Pro HDでは、YUVシーケンス上のRGBファイルであっても、元のRGBファイルを直接参照しますので、元のRGBファイルを更新すれば、その更新内容がYUVシーケンス上でも逐次再現されます。これは制作工程上、大変有益な機能です。例えば、テロップファイルをPhotoshop CSなどで作成し、それをシーケンスにレコード後、元のテロップファイルの内容を書き換えれば、その書き換えた内容がシーケンスにも自動的に反映されるのです。
Final Cut Pro HD以外の他社のノンリニアビデオ編集アプリケーションの中には、プロジェクトにインポートするRGBファイルをインポート時に別のフォーマットに変換するものがあります。このような他社のアプリケーションでは、アプリケーション外部で作成されたファイルとアプリケーション内部で管理するファイルの関係が断たれるため、先の例に挙げたテロップファイルの更新といった作業が酷く煩雑です。