(C)2005「男たちの大和/YAMATO」製作委員会

自ら映画撮影用のデジタルビデオカメラの開発に携わり、映画「突入せよ!『あさま山荘』事件」や「あずみ2〜Death or Love」において、デジタルビデオカメラを使った撮影を行ってきた阪本善尚氏。撮影監督として参加した最新作「男たちの大和/YAMATO」(12月17日全国東映系ロードショー)では、全実写シーンのデジタル撮影を敢行。撮影から編集・ポスプロを通じたフルデジタル製作の推進役を果たした。阪本氏を訪ね、映画製作におけるデジタル撮影の現状を聞いた。

撮影監督の目から見ても「デジタル化は必然」


阪本 善尚(さかもと よしたか)氏。J・S・C(日本映画撮影監督協会)会員。「突入せよ!『あさま山荘』事件」にて第26回日本アカデミー賞 優秀撮影賞を受賞。

映画をそれほど見ないという人も、大林宣彦監督が80年代に広島県尾道を舞台に撮った三つの作品−「転校生」「時をかける少女」「さびしんぼう」の名は耳にしたことがあるだろう。70年代後半から80年代にわたる一連の大林監督作品の撮影を手がけてきたのが阪本氏だ。

フィルム映像の世界で数多くの実績を残してきた阪本氏が、フィルムより表現力の点で劣ると考えられてきたビデオカメラでの撮影に取り組むこととなったのは、映画業界全体がデジタル化に向かって歩みつつあることと深く関係しているという。

編集やポスプロ作業のデジタル化、ビデオプロジェクターなどデジタル上映設備の普及、さらには映画そのものをフィルムではなくデータとして映画館に配信する試みなど、製作から上映に至るまで、あらゆる面でデジタル化が進みつつある状況の下、撮影だけがデジタル化を免れることはあり得ない。こう考えた阪本氏は、自らもPanasonicのデジタルシネマカメラVARICAMの開発に携わり、開発の成果を映画「突入せよ!『あさま山荘』事件」(2002/東映)の撮影に活かすなど、デジタル撮影に積極的に取り組む道を選んだ。

映画「あずみ2〜Death or Love」(2004/東宝)では、フィルム撮影とデジタル撮影の併用にも取り組んだ。「最初はすべてフィルム撮影の予定でしたが、CG合成のシーンが150カットもあると分かって、特撮の部分だけフルデジタルで撮影しました。合成用の素材としてフィルムをスキャンするにはコストがかかります。そもそも合成はデジタルで行うのだということを考えれば、最初からデジタル撮影した方が良いのです」(阪本氏)。

しかし、そうなると今度はフィルム撮影した部分と、デジタル撮影+合成カットの色味を合わせ、違和感なく仕上げなければならない。阪本氏は撮影監督として参加したこの作品で、10bitのCineon形式をベースに、フィルムとビデオを混在させた状態で撮影し、ポスプロ・編集を経て上映用フィルムを製作するまでのプロセスを自ら実証した。さらに、映画「ビートキッズ」(2004/松竹)では、全編のデジタル撮影を行い、シネマスコープと10bit非圧縮のHDD収録にチャレンジした。

阪本氏が撮影のフルデジタル化に踏みきることができた背景には、「Macを使えばフルデジタルの編集や合成を高いコストパフォーマンスと安定性の元に行える」という見込みがあったという。

「映画の場合はShakeを使っていると聞いて、作品を見せてもらったら、なかなかいい。しかもそれ以前に、僕もアップルでKONAのボードを使ったデモを見せてもらう機会があり、クオリティも安定性もあるということは実感していました。映画業界では、フルデジタルのHD撮影というと、ポストプロダクションの段階でコストがどうしても上がってしまうと考える人がまだ多いけれど、Macを利用すれば、HD撮影であってもコストを大幅に抑えることができると僕自身は考えていました。それでも、撮影の現場ではMacといえば、コンシューマ向けのものというイメージが強く、これまで専用の編集機器を利用してきた人たちが何となく不安に感じていたという状況がありました」(阪本氏)。

そこで、阪本氏は大作映画をフルデジタルで撮影し、Final Cut ProやShakeを使って編集や合成を行うことを提案し、この不安を一掃しようと考えたのだという。「男たちの大和/YAMATO」(2005/東映)は、戦闘シーンをはじめ、全編にわたって合成シーンが多く、まさにフルデジタル製作のメリットをアピールするのにうってつけの作品であった。事実、撮影後の編集・ポスプロ作業の効率は格段に向上したという。

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