東映の試写室にて「男たちの大和/YAMATO」におけるフルデジタル編集を語る。
再撮影のリスクを回避し、製作のスピードアップをはかる
デジタル撮影によって、撮影後の映像はフィルム撮影のときよりも格段に自由に扱えるようになったと阪本氏は言う。「僕はPanasonicのAJ-HD1200Aを持っているので、デジタル撮影なら、現場ですぐDVCPRO として映像をMacに取り込めます。DVCPRO形式はデータが軽く、あらゆる面でハンドリングがいい。例えば、10bit非圧縮でやっていると3回くらいしかできない合成処理も、DVCPROならレンダリングが軽いから10回くらいできるのです。同じ時間で倍以上もトライできるわけです」(阪本氏)。
さらに、映像を編集用、合成用に振り分けることが可能となり、製作スピードがアップした。「何より良いのは、デジタル化されているので、色もサイズも絶対に変わらないこと。これはフィルムではありえないことです」(阪本氏)。合成の場合、フィルムで撮っているとスキャンする機械によって色が変わるリスクがあり、作業に大変な手間がかかるのだという。最初からデジタル撮影していれば、こうした問題は起きない。
また、現場で撮影した映像をすぐに確認できること自体、リスク回避につながると阪本氏は言う。「今、中国で新しい映画の撮影をしているのですが、まだデジタルシネマの規格統一がされていないなどの理由からフィルムで撮っています。これが不便で不便で……。デジタルなら現場で最終段階の色をチェックできるからリスクは少ないですが、フィルムだとそれができない。海外ロケだと撮り直しに行くわけにもいかないから、フィルムは怖いですよ」(阪本氏)。
(C)2005「男たちの大和/YAMATO」製作委員会
阪本氏はこうした現場のリスク回避の上でも、今後はデジタル撮影が主流になっていくと予想する。しかも、その変化はMacによって加速度的に進むと考えている。「例えば、『男たちの大和/YAMATO』では、中国にいた僕のところへ、合成後の映像がメールで送られてきました。映像ファイル自体もFinal Cut Pro により非圧縮HDデータをQuickTime のH.264に変換するとISDN回線でも受信できるくらいファイルサイズを小さくできる。その上、圧縮しているのにもかかわらず、ブロックノイズなどがなく、色も変わらないのだから、これは便利ですよ。Mac はデジタル撮影の現場と親和性がとても高いのです」(阪本氏)。
阪本氏によれば、こうした映画製作プロセスのデジタル化は、今日では日本のみならず、アジア全体に及んでいるのだそうだ。「今、アジアでラボを持っている国がMac によって急激に勢いを増しているんです。例えば、タイでもMac とVARICAM を用いて、大規模な映画製作が行われており、タイがアジアにおけるラボの拠点になりそうな勢いを感じました。中国などでも、Mac による映像制作は動き始めています」(阪本氏)。
(C)2005「男たちの大和/YAMATO」製作委員会
しかし、その一方でデジタル撮影にはまだ大きな課題も残されている、と氏は続ける。「映画の長い歴史の中で培われたフィルムならではの色というものがあります。その色合いをデジタルに反映していくことは今後の課題でしょうね。事実、そういう動きはすでにあります。フィルムの良さを使いやすいデジタルが取り込んだ時、映画製作は初めて新しいステージに入るのではないでしょうか」(阪本氏)。
映画の長い歴史を尊重した上で新しい技術にも果敢にチャレンジし、新しい映像制作の現場を作り上げようとする阪本氏は、最後に次のように語った。「今やFinal Cut Pro やShake があれば、映画は作れてしまう。これはすばらしいことで、今までは巨額の資金を投じなければならなかった映画製作が、Macによって変わり始めているといっていい。将来、これらを使って育った若者たちが、新しい映画をたくさん作ってくれることを期待しています。もちろん、私も負けませんけどね」(阪本氏)。
取材:2005年10月