映像作家 新海誠氏

──前作「ほしのこえ」と新作「雲のむこう、約束の場所」の大きな違いは何ですか?

©Makoto Shinkai / CoMix Wave
Power Mac G4 デュアル1GHzのMac OS X上でPhotoshopやAfter Effectsを動かしていたときは、Mac OS 9のほうが速いなぁと感じていたんですけれど、Power Mac G5+Mac OS X v10.3 "Panther"になってからはそういったもたつきを感じなくなりました。もともとMac OS Xはかなり素性のよいオペレーティングシステムですから、今のシステムになってからは、Mac OS 9やWindowsといったよその環境に気を取られることもなくなりました。Power Mac G4 デュアル1GHzで27分ぐらいかかっていたAfter Effectsのレンダリングが、Power Mac G5 デュアル2GHzでは14分で終了したときには、ちょっとした感動でしたね。システム性能と作品の本質はそれぞれ独立していて関係がないと考えていますが、自分の作業環境のパフォーマンスに心配がないということだけで、だいぶ気持ちが楽になりました。メモリも8GBまで増設したのですが、実際にこの膨大な容量を使い切ることはありませんでしたね。昔、大学時代にアルバイトを重ねて、8MBのメモリをPC98ノートに増設したことがありましたけど、8GBって言えばその1,000倍ですからね。

©Makoto Shinkai / CoMix Wave
30インチCinema Displayは、今は23インチCinema Displayとのデュアルディスプレイで使っています。さすがに2,560 x 1,600ピクセルの画面は広いですね。HDサイズの映像を100%で2枚表示しても、まだまだ余裕がある。タイムラインを見通しながらの作業なので、このスクリーンサイズは実に重宝します。「雲のむこう、約束の場所」の制作でももっと早くに届いていたら、大活躍できて嬉しかったですね。今回の作品は約1000カットで、作画に2.5万枚ほどを費やしています。コンポジット(撮影)は全カットAfter Effectsです。カット毎をつなげる編集もAfterEffectsで絵コンテからムービーコンテにして、それを更に完成カットとさしかえていく方法をとっています。最終的にはQuickTimeでハードディスクごとIMAGICAに渡して、フィルムに焼いてもらいました。


外部にいるスタッフとは、FTPを介してネットワーク上で作業しました。アニメーション制作のプロセス自体は、一般的なものとさほど変わらないと思うのですが、スタジオを設けずに進行できたというのが特徴的な部分だと思っています。さすがに最後の3ヶ月は、コンポジットやエフェクトの作業で数名のスタッフが家に泊まり込みになりましたけれど(笑)。

──Macを使い始めたのは?

Macに出会ったのは、社会人になってからでした。5年間、Windows PC向けのゲームの制作会社にいました。会社で最初に手掛けた仕事は、ゲームから派生したイラストなどの二次素材をCD-ROM化して出版するもので、その時に初めてMacに触れました。同時にPhotoshop、Painter、Illustratorをタブレットで使う機会もあって、なんて面白いんだろうって思ったのです。初任給で、Power Mac 7200 90MHzを買いました。あとは給料が入る度に、Photoshop、Illustratorと買い足してきました。Mac OSのFinderのファイル操作も当時は驚きだったし、Illustratorのベジェ曲線も新鮮でした。Photoshopは、いきなり製品版は買えなかったので、まず自宅のPC-9800とWindows3.1でPhotoshop v2.5の体験版で練習しました。あとでMac用の製品版を導入してからは、一気にのめり込んだという感じですね。22歳のころです。ちょうどインターネットが普及し始めた頃で、会社のWebページを作ったりもしていました。社外に委託していたチラシなどの制作も、社内DTPで作ろうということになって、社内のワークフローを組み立てる仕事もしました。3D CGもずっとMacでしたね、そういえば。Mac版のLightWave 3Dが発売になると同時に、だんだんアニメーション制作にも携わるようになりました。

次ページ:新海氏のアニメーション制作
Pro/Film&Video
1: Power Mac 一台 で「ほしのこえ」を制作
2: 前作「ほしのこえ」と新作「雲のむこう、約束の場所」の大きな違い
3: 新海氏のアニメーション制作