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──新海氏のアニメーション制作 「新世紀エヴァンゲリオン」 (1995〜1996)や「機動警察パトレイバー2 the Movie」(1993)を見た時に、アニメーションの中にレンズの概念が持ち込まれていて、衝撃を受けたんです。「アニメーションでも、そこまでやるのか」と。それらの影響もあって、絵を作るときにカメラの位置とかをきちんと考えるようになりました。今回の「雲のむこう、約束の場所」では、この画面は何ミリのレンズで撮っているのか、ということまで考えるようにしました。3D CGで映像を作っていると、レンズの概念が自然に身に付いてきます。レイアウトを起こす時も、3Dモデルを作って、それの画角やアングルを数値で決めているわけですから。
今回は、200万画素程度のデジカメを持ってロケハンを行いました。意識してテレコンバージョン・レンズを使うなど、ミリ数を考えて撮ってきたものをベースに背景やレイアウトを起こしていきました。こういったことは、ストーリーの流れとは関係ないですが、テンポなどに影響を与える大きい要素だと思います。背景は、デジカメ画像や手描きのレイアウトをベースにPhotoshopとAfter Effectsを組み合わせて作っています。光や陰影の表現がしやすいのです。また、日本のアニメーションの特徴的な手法として、キャラクターの陰影を光源の位置とは関係なく記号的に、貼り付けられたテクスチャのように表現する描き方がありますよね。顔への影の付け方などで特に顕著に見られる手法で、そういう陰影のウソがアニメーションの画面の気持ち良さにつながっているということはありますが、今回の作品ではそういった記号的な陰影付けをなるべく廃してあります。例えば逆光のシーンでは顔の塗り全てを影色にしてしまうということをやっていて、そうするとキャラクターの陰影の情報量は少なくなってしまうわけですが、そのぶん背景とのコントラストを高めるなどして空気感を演出するような工夫を全編にわたって行っています。
──「雲のむこう、約束の場所」を完成して Power Mac G5 + Mac OS Xを制作環境に導入していなかったら、HDサイズの劇場用アニメーションを作ろうとは思わなかったと思います。各カットのビジュアル表現において、エフェクトを重ねることに遠慮することはありませんでした。After Effectsで画面全体のハイライトをふくらませるフィルタがあるのですが、Power Mac G4で制作していたときはこうしたフィルタは本当に最小限に抑えて使っていました。Power Mac G5だとそうした制限も感じず、思い通りの効果が自由自在に使えることになったのが本当に嬉しかったです。Mac OS Xに移行してから、バックグラウンドで重たいレンダリングをしながら、Photoshopで別のカットを描くこともできて作業効率の改善にも役立ちました。 一緒に制作に携わったスタッフのほとんどは、劇場用の長編アニメーションは未経験でした。私たちのようなチームが、スタジオを持たずに自分たちが持てる作業環境だけで、長編アニメーションを完成することができたことを誇りに思っています。やってできないことはない、と自分にとっても、仲間にとっても、大きな励みになりましたね。 取材:2004年11月 |
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