©「天使」製作委員会

ソニーPCL株式会社では、フィルムでの制作工程をベースとした、独自のデジタルシネマ制作環境を提供している。2006年1月公開の映画「天使」は、非圧縮10bit RGB4:4:4の制作環境を持つ同社のシステムを使用し、1080/24Pのフォーマットで編集された。

フルデジタルの映画制作システム


ソニーPCL株式会社 デジタルシネマソリューション部デジタルファクトリー課マネージャー/DIスーパーバイザー 田中敦彦氏

2006年1月公開の映画「天使」は、深田恭子演じるキュートな天使の活躍を描いたラブ・ファンタジーである。空中にふわりと浮かび上がる天使、その背中に生えた翼や、宙を舞う1枚1枚の羽の質感などを表現するには、最新のVFXとCG技術の投入が欠かせない。そこで「天使」の制作にあたっては、VFXやCGとの合成シーンに、ソニーのハイエンドHD VTR「HDCAM-SR」が使用され、10bit RGB4:4:4での収録が行われた。このデジタル最高画質とも言うべきフォーマットを自在に扱える編集システムを提供し、「天使」制作をバックアップしたのがソニーPCLである。

映画「天使」では、ソニーPCLが提供するデジタルシネマ専用の映像処理システムが使われている。その特徴は、第一にフィルムによる映画制作プロセスをベースとしたデジタルデータプロセシング(DI/デジタルインターミディエイト)制作環境にある(ワークフロー図参照)。もう一つの特徴が、編集結果を230インチスクリーンの大画面で確認できるという点だ。そして、そのための設備がスクリーニングルーム「シネラピスタ」である。

2K DLPシネマTMプロジェクター、230インチスクリーン、7.1チャンネルサラウンドに対応した映画館音響用システムを備えた座席数30席のスクリーニングルーム「シネラピスタ」では、1080/24Pの10bit RGB4:4:4非圧縮のデータを再生することができる。つまり、この「シネラピスタ」を使えば、230インチの大画面を見ながら、フィニッシング作業が行えるのである。

Final Cut Proによるオフライン編集の結果が、最終的に10bit非圧縮データに反映される。

ソニーPCLのデジタルシネマ制作ワークフローを考案し、システム全体と「シネラピスタ」の設計を担当したのは、同社デジタルシネマソリューション部の田中敦彦氏である。田中氏が、編集用ソフトウェアとして選んだのは、アップルのFinal Cut Proであった。「Final Cut Proを選んだ理由は、コストパフォーマンスという点で、非常に優れているからです」(田中氏)。田中氏によれば、映画の編集は通常、オフライン編集から仕上がりまで約2〜3ヶ月はかかると言う。しかし、制作コストを考えると編集室を長期間押さえておくことは難しい。そこで、従来のポストプロダクションの枠組みではなく、映画制作工程を踏まえながら、高いクオリティにより長期間に渡る編集作業を実現するコストパフォーマンスの高いシステムを構築する必要があった。「Final Cut Proは、1080/24Pの10bit RGB4:4:4非圧縮という、現在扱える中では最高の規格に対応しています。その一方で、価格が安く、ノートパソコン上でも利用できる。そこに着目しました」(田中氏)。

ソニーPCLでは、Final Cut ProをインストールしたPowerBook17インチモデルを用意し、これにオリジナルのデータから変換した編集用のデータを入れて、編集者に貸し出している。編集者が、PowerBook上でオフライン編集した結果をプロジェクトファイルに書き出してソニーPCLに戻すと、ソニーPCL側がこれをラッシュ用のデータに適用し、「シネラピスタ」の大画面で確認上映ができる。このプロセスを繰り返すことによって、効率的かつコストパフォーマンス良く編集作業が進められる。映画「天使」の編集も、この方式で行われた。

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