DV、SD、HDに対応のマルチカム編集機能を備えたFinal Cut Pro 5の画面

フジテレビ系列で放映中の人気クイズ番組「クイズ$ミリオネア」。この番組のオンライン編集/オフライン編集/MAと字幕制作を行うTDKコア株式会社では、アップルのFinal Cut ProとXsanを利用したノンリニア編集システムを採用し、デジタイズとビデオ編集の並行作業を実現。短時間での編集作業が求められるレギュラー番組制作に活用している。

Power Mac G5を使ったグループ編集作業環境を実現


TDKコア株式会社は、コンテンツ制作のほか、テレビ番組の編集・MAといったプロフェッショナル向けサービスを提供している。東京・元赤坂のTDKビデオセンター内には、10の編集室と3つのMA室があり、24時間・365日のフルタイムでサービスを提供している。これらの設備に加え、2005年10月には、アップルのビデオ編集ソフトFinal Cut ProとSANファイルシステムXsanを中核に据えた新たなノンリニア編集スタジオAM2S(AKASAKA MULTIMEDIA SPOT)を開設し、サービスの提供を開始した。

TDKコア株式会社 放送メディア部門 クリエイティブディレクター 薗部健氏

同社放送メディア部門クリエイティブディレクターの薗部健氏は、AM2S開設の背景を次のように語る。「非常に低コストで編集室が構築できるという点に、興味を引かれました。今まで新たな編集システムを導入するにあたっては、詳細に設計してから導入していましたが、今回導入のFinal Cut Studioは柔軟性のある統合ソフトということもあり、導入後に設計・運用スタイルを煮詰めていくアプローチを採りました」(薗部氏)。従来のHDリニア編集機器を利用して編集室を作る場合、一部屋あたり、約1億円以上の予算が必要で、機器の設置や部屋の内装を含め、約2カ月程度の工期がかかっていたという。「AM2Sの場合は、5つの編集室の内装や設備、すべてを含めてもその数分の一程度。工期に至っては、わずか数日で完了してしまいました」(薗部氏)。低コストで編集室スタジオを構築できたのには、同社ビデオセンターには、AM2Sの開設以前から100台を超えるVTR機器があり、新たに購入する必要がなかったという事情もあったと言う。

AM2Sは、SPOT1〜5の5つの編集室で構成されており、各編集室には、Power Mac G5 Dual2.7GHzが1台とApple Cinema HD Display 23"が2台設置されている。アプリケーションは、Final Cut Pro 5、DVD Studio Pro 4、Motion 2、Shake 4などが利用でき、ビデオ編集、DVD制作などのニーズに対応している。また、共有ストレージとして用意されたXserve RAID4台、合計22.4TB(RAID0時)に対して、ファイバーチャネルを介して毎秒2GBの高速アクセスが可能となっている。

現在、AM2Sは貸しスタジオとして外部のテレビ番組制作会社などに利用してもらうだけでなく、TDKコア社内のポストプロダクション部門でも活用し、「クイズ$ミリオネア」のオフライン編集作業も、AM2Sのシステムを利用して行っている。週1回のレギュラー番組だけに、編集スケジュールはかなりタイトであるという。「収録は、通常オンエア前週の月曜日に行われます。収録テープ(HDCAM)が運びこまれると、その日のうちにキャプチャーを行います。AM2Sのシステムでは、最大5台のPower Mac G5を同時に使って、デジタイズと並行して編集を行うことができるので非常に効率的です。『クイズ$ミリオネア』の場合、キャプチャーを開始して、1時間後には編集作業を始めることもあります」(薗部氏)。

AM2Sの編集ルーム

AM2Sの5つの編集室では、ビデオ編集だけでなくデジタイズも行える。各部屋のPower Mac G5にはSD/HDの両解像度に対応したAJA VIDEO SYSTEMS社のKONA2が搭載され、DV、HDV、HDCAM、デジタルBETACAM、DVCPRO HDなど、さまざまなタイプのVTRを専用のワゴンに乗せ、それぞれの編集室の間を移動できる仕組みを採用しているためだ。Xsanによって統合されたストレージエリアを使用しているので、4つの編集室でデジタイズを行い、残りの1部屋で編集を始めたり、複数の編集室で同一のソースにアクセスして編集したりと、柔軟な使い方ができる。「クイズ$ミリオネア」のオフライン編集では、その柔軟性を最大限に活用している。

次ページ:編集スタジオの可能性を広げる新システムのメリット