Xsanを使ったストレージネットワークシステム。5つの編集室から、Xserve RAIDへの映像ソースの格納および編集が可能。
編集スタジオの可能性を広げる新システムのメリット
Final Cut ProとXsanによる新編集システムの使い勝手を聞いてみた。薗部氏は「不特定多数のユーザが使用する環境なので、人為的なミスによってトラブルが起きることもあった」と語る。同社に常駐のエンジニアは、ビデオセンター全体で2名のみで、すべてのユーザのトラブルが解決できる体制を整えているというわけではなかった。「そこで、何かあった時はすぐに隣の編集室に移るという運用上の工夫で対処しています。どの編集室からも同じストレージにアクセスできますから、別の編集室に移ってもすぐに作業を続けることができます。従来の編集環境では考えられなかったことです」(薗部氏)。
また薗部氏は、Final Cut Pro 5のマルチカム編集機能を高く評価している。Final Cut Pro 5では、ソースのタイムコードを合わせておけば、複数のカメラで撮影した映像を、最大16個まで同時に再生しながら編集することができるのだ。「この点だけを考えても、Final Cut Proのコストパフォーマンスは非常に高いと言えるでしょう」(薗部氏)。
さらに、薗部氏は新編集システムの導入効果として「ビデオ編集、MAに続く第三のポストプロダクション業務として、字幕放送画面の制作が受注できるようになったこと」を挙げる。現在、「クイズ$ミリオネア」の字幕放送画面は、TDKコア社内の字幕センターで制作している。字幕放送とは、聴覚に障害を持つ人や、高齢になって耳が聞こえにくくなった人が、テレビ番組を楽しめるように開発されたもの。衛星デジタル放送や地上デジタル放送が受信できるテレビには、この字幕を表示する機能が標準で備わっている。また、総務省が公表した指針によれば、すべての地上波テレビ局は、2007年までに一部の生放送を除き、すべての番組に字幕をつけることが目標とされている。これが実現すれば、字幕制作業務は、テレビ番組制作になくてはならないものとなる。
「クイズ$ミリオネア」の場合、放映用のビデオテープはオンエア当日の午前中にならないと完成しない。従来のワークフローでは、放映までの数時間の間に字幕画面を作る必要があり、字幕は放送局内で制作するしかなかった。しかも、字幕制作者の手元には台本すらなく、耳で聞いた音声をたよりに原稿を起こすので、間違った字幕がついたまま放映されてしまうこともあったと言う。
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Xsanのメタデータコントローラ、またファイルサーバとして字幕編集システムなどWindows系の編集システムとのインターフェイスとなるXserve G5(上)と映像ソースを格納するXserve RAID(下)。これらの機器はマシンルーム内に設置されている。
新しいワークフローでは、編集後の映像をFinal Cut Proを使ってMPEG1にエンコードし、Xserve RAIDからLAN経由で字幕制作システムに渡している。「今どきなぜMPEG1なのかと思われるでしょうが、これは、字幕制作システムが現状ではMPEG1の入力にしか対応していないためです。MPEG1のエンコードには時間がかかりますが、それでも、ビデオ編集と字幕制作を同じ社内で行うメリットは非常に大きい。放送前週の土曜日には、字幕制作にとりかかることができるようになりました。また、ビデオの編集担当者も、字幕制作担当者も同じ会社の人間ですから、聞き取りにくい台詞の確認もしやすい。字幕の質は、大いに向上したのではないかと感じています」(薗部氏)。
薗部氏は今回のシステムに対する評価を、次のように語る。「Final Cut Pro 5やXsanは、HD編集をよりカジュアルに行うためのソリューションとして、放送業界、映像制作業界で注目を集めています。画期的なコストパフォーマンスを実現したソリューションであると感じます。とはいえ、他社のソリューションにもそれぞれ特徴やメリットがあります。そのため、アップルのソリューションを中心にしながらも、他社のソリューションも取り入れたワークフローの運用を考えています。プロフェッショナル向けの編集スタジオとしては、選択肢の幅を広げられたということが、一番のメリットでしょう」(薗部氏)。
取材:2006年3月

