情報番組のリハーサル風景。制作部には、自分の出演する番組のインサートVTRを自ら編集するアナウンサーもいる。
富山テレビ放送株式会社では、Final Cut Proを利用した編集システムを日々のニュースの編集や、情報番組のインサートVTR編集に活用している。2005年秋にはXsanを導入、編集室に3台あるPower Mac G5、およびPowerBook G4から自由にXserve RAID内の映像データにアクセス可能な環境を構築し、作業効率アップを実現した。
報道部カメラマンの波房恵樹氏は、BBTのノンリニア編集システムのシステム管理を担当。
報道部のノンリニアHD編集システムとしてFinal Cut Proを採用
富山テレビ放送株式会社(略称:BBT)は、富山県内を対象地域としてテレビ放送を行う、フジテレビ系列のテレビ局である。同社の報道制作局では、Power Mac G5、PowerBook G4とFinal Cut Proを使ったノンリニア編集システムが稼働。日々のニュースや番組制作に利用している。
2003年秋に、最初にFinal Cut Proを使った編集システムを導入したのは、報道部であった。それまで利用していたリニア編集システムのうちの1台がリース切れを迎えることになり、地上波デジタル放送の開始をにらんでHD編集の可能な新システムを検討した際、候補の一つとして挙がったのが、アップルのFinal Cut Proを利用したソリューションだった。当時、HD編集の可能なリニア編集システム構築には億単位のコストがかると言われていた。テープからテープへ、コピーしながら編集するリニアのシステムでは、1台1千万円はするVTRが最低でも2台は必要だが、ノンリニアの編集システムなら、VTRは1台あれば済む上、編集システムのコストはリニアの約半分程度。Final Cut ProをベースにしたCineWaveのシステムは、他のノンリニア編集システムと比較しても、圧倒的に低コストで構築可能であった。
「どんな編集機材を導入したいかと上司に意見を聞かれたので、MacとFinal Cut Proの組み合わせを使ってみたいという希望を出しましたが、まさか、放送局のような保守的な組織で、Macを使った新システムの採用がすんなりと決まるとは思ってもいませんでした」と、カメラマンの波房恵樹氏は当時を振り返る。ところが、実際に編集システムのデモンストレーションを見てみると、その機能の高さは報道部の面々が予想していた以上であった。「これだけコストパフォーマンスが高いのなら、試してみる価値はあるということで、導入が決まったのです」と語るのは、カメラマンの小島崇義氏だ。
導入はしてみたものの、最初はトライ&エラーの連続だった。何しろ、波房氏、小島氏などごく少数の例外を除けば、スタッフのほとんどがMacに触れたことすらない。中には、ノンリニア編集すら初めてという人もいた。そんな中、最初に新しい編集システムを使い始めたのは、若いカメラマンや記者たちであった。報道部には編集専門のスタッフは常駐していないため、取材から戻ると、その日の夕方の放映に向けてカメラマンまたは記者が自ら編集を行う。「ベテランのカメラマンや記者は、使い慣れたリニア編集室を選びます。空いているのがノンリニア編集室しかないとなると、若いカメラマンや記者は使わざるを得ません」(波房氏)。半ば強制的に新システムの利用を迫られた結果、Final Cut Proを使える人の数は徐々に増え、また利用のスキルも向上していったのだと言う。
Final Cut Proを使って編集する報道部カメラマンの小島崇義氏。
報道部では、毎日のニュースに加え、約1時間のドキュメンタリー番組の制作も行っている。「ドキュメンタリー番組の編集では、素材テープが50〜60本に及ぶことも珍しくありません。Final Cut Proでは、いったんハードディスクに映像を取り込んでしまえば、後はカット&ペーストしていくだけですから、編集の仕上げの部分でじっくりと作り込めるのです」(小島氏)。以前は、1本1本のテープから必要なカットを選び出しては、コピーするという作業の繰り返し。「編集そのものより、コピー作業の負担が大きかった」(小島氏)と言う。
編集のクオリティの面でも、「Final Cut Proによる効果は大きい」と小島氏は語る。「我々も、ドキュメンタリー番組を制作する場合などは、外部の編集者にオフライン編集を委託することがあります。編集者には、事前に撮影したテープすべてに目を通してもらうのですが、Final Cut Proを使う編集者が多いので、リムーバブルのハードディスクに映像を取り込んで、ハードディスクごと送ってしまうという方法が使えるようになりました。以前なら、普段は東京で仕事をしている編集者に依頼する場合、すべての素材を確認してもらうために富山まで来てもらっていましたが、その必要がなくなったのです。編集者の側も、手元にすべての素材があれば都合の良い時間にそれを見ることができますから、時間の節約にもなります。節約した予算と時間を、編集というクリエイティブな活動に充てることによって、編集のクオリティをさらに高めることができます」(小島氏)。
富山テレビ放送が、Final Cut Proを使って制作した初のHD番組「わたしたちにできること〜ごみゼロへの挑戦」は、2004年春にBSフジで放映された。また、不登校の高校生を取材した1時間番組「17才の居場所〜ある高校生の記録〜」(2005年)も、平成17年度の日本民間放送連盟賞、教養部門で中部ブロック2位を獲得するなど、社外からも高い評価を得ている。
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