Final Cut Proによる編集。

必然から生まれた新しいワークフロー


大和第一主砲内編集室。大和の甲板で撮ってすぐ編集が可能。

本作のため、東映では新たにデジタルでのワークフローを形成した。まずVARICAMで撮影した10ビット非圧縮の素材をHDDに収録し、それを東映ラボ・テックのストレージに収納していくことにした。このストレージを中心に、艦内撮影を行った東映京都撮影所や合成・CG制作会社、ポストプロダクションなどとデータのやりとりをしていく。バックアップ用にDVCPRO HDも使用し、万全の体制を整えた。400以上もある合成カットなどを考慮すると、このワークフローには大きなメリットがあったと川田・米田両氏は振り返る。

さらに、このワークフローを導入したことにより、副産物ともいえる利点もあった。PowerBook G4とFinal Cut Proの併用により、現場では撮影監督自ら撮影直後の素材確認を行い、そのQuickTimeビデオをコピーするだけですぐに編集を始めることができたのである。米田氏は次のように話す。

東映 京都撮影所 エディター 米田武朗氏

「その日に撮影した映像をPowerBook G4に取り込み、翌日の撮影時には現場で確認するということが簡単にできました。PowerBook 17インチのディスプレイの映像は屋外でも美しく、周りの反響は大きかったですよ。スタッフ間に監督のイメージもどんどん伝わっていきました。PowerBook G4とFinal Cut Proの導入は編集以外でも役に立ったというわけです」(米田氏)。

本作は甲板目線による戦艦大和を舞台にした人間ドラマ。米田氏は時にはPowerBook G4を抱えて、1分の1の大和の主砲の中で編集するといったことも行った。「これまで編集というと、屋内で画面とにらめっこというのが定番でした。でも、PowerBook G4とFinal Cut Proなら、場所を選ばず、どこでも浮かんだアイディアを生かすことができます。すると次々と新しいアイディアも生まれてくるんですよ」(米田氏)。

「男たちの大和/YAMATO」VFXワークフロー

デジタル中心の新ワークフローの成果に満足


デジタル撮影のメリットは、データの汎用性が高いことも挙げられる。本作の製作時においても、それを象徴するようなエピソードがあったという。「ある日、突然試写することになったんです。ちょうど100人ほど入れる試写室が空いていたので、PowerBook G4のデータを取り出し、松下電器産業のDLPプロジェクターで映し出しました。この汎用性の高さはデジタルならではですよね。7mのスクリーンに画を映し、そのままそこで編集もしてしまいました」(米田氏)。

本作は約2時間30分、約2000カットの大作。「国内でここまでの長尺をFinal Cut Proで編集したものは初めてではないかと、後で聞いて驚きました」と語る米田氏は、これだけのハイレゾリューションをFinal Cut Proで編集できたことに満足しているという。

プロデューサーである川田氏も、このワークフローの成果は次にもつながっていくと語る。「東映は東映ラボ・テックと共に、いち早くデジタル化を始めました。しかし、撮影の段階からフルデジタルで行う機会はありませんでした。今回はそのチャンスに出会えたといっても過言ではありません。『男たちの大和/YAMATO』でできたことは東映として大きな進展です。この成果を元に、今後の製作バリエーションは広がっていくと確信しています」(川田氏)。

取材:2005年8月