「観客に登場人物と心を通わせ、何かを感じてもらいたいと考えていたので、派手なことを思いつくたび、ボツにした。僕の原則は、派手なビジュアルではなく、物語を伝えることだった」

ハンス・カノーザ : ふたつの "会話"

17歳になるまで映画を見たことがない監督が、最初の作品にすべてを詰め込むと思うのは自然なことだ。野心的な初作品「カンバセーションズ(原題:Conversations with Other Women)」を撮影し、全編デュアルフレームで編集、同時上映される2本の映画 — 正確に言えば1本の映画の2つのバージョン — を観客に見せたハンス・カノーザ監督ならなおさらだ。

しかしそう思うのは間違いだ。ストーリーとバックストーリーの安易な融合と考えると、保守的なキリスト教宣教師の家庭で映画を見ずに育ったカノーザが、「カンバセーションズ」の撮影に入る前の2年間を絵コンテ作りに費し、撮影角度の割り出しと映像の重みのバランスに没頭した、きわめて慎重な監督だという事実を無視することになる。

入念に練られた映画に無関係な映像を押し込む余裕はなかったし、その必要もなかった。「カンバセーションズ」は、アーロン・エッカート演じる弁護士とヘレナ・ボナム=カーター演じる花嫁の付添人の代理を務めた既婚女性の2人の主要人物の視点、最小限の言葉やアクション、積み重ねによってストーリーを構築している。

他の映画では単に奇抜な思いつきにしかならないデュアルフレームでさえ、物語での役割をしっかりと果たしている。「観客に登場人物と心を通わせ、何かを感じてもらいたいと考えていたので、派手なことを思いつくたび、ボツにした。僕の原則は、派手なビジュアルではなく、物語を伝えることだった」とカノーザは語る。

物語から脚本へ

過去に愛した人との機会がもう一度与えられたらどうするかという、個人的な体験で生まれた素朴な疑問からカノーザの物語が誕生した。しかし、その答は複雑だったため、カノーザは2つの画面で答を語ることにした。

この昔からあるテーマに対する新たな試みとして、2分割された画面で男と女を等しく描き出すことにした。カノーザが、ハーバード大学在学中に演劇を監督していた時に出会った脚本家のガブリエル・ゼヴィンにこのアイデアとエピソードを伝えたとき、彼女はこれを執筆中だった結婚式をテーマにした物語に取り入れ、わずか3週間で台本を書き上げた。カノーザは、多少手直しを加えただけで、この台本を基に絵コンテを作り、映画を撮影した。

「映画のせりふや進行は、すべて彼女が書いた台本の通りなんだ」(カノーザ)

ゼヴィンはこれを通じ、仕事が早いだけでなく千里眼の人でもあることを証明した。「ガブリエルは、まるで数年前に実際に話したような脚本を書き上げた」とカノーザは言う。脚本に書かれた感情の適切さ、広がりは、後にボナム=カーターとエッカートがそれぞれ撮影中に、あまりに自分達に近い役柄を演じることに幾分不安を感じるとカノーザに告白したことから立証された。

脚本からスクリーンへ

多くのインディーズ映画と同様、映画にしたい物語を見つける方が実際に映画にするよりもはるかに容易だった。しかし、「カンバセーションズ」では、これまで複数のプロジェクトで映画を共同製作した制作責任者のクウェシ・コリソンのおかげで、カノーザはプロジェクトを成し遂げるのに十分な資金を得ることができた。「クウェシの知り合いの知り合いに資金を調達できた人がいたおかげで、話がトントン拍子に進んだ」(カノーザ)

少額だが十分な資金とすばらしい独自の脚本を得たカノーザは、実力のある俳優を映画に引きつけることはできたが、常にやっかいな問題がつきまとった。「ガブリエルの脚本のおかげで、常に誰かが興味を持ってくれたが、2人が同時に興味を持ってくれることがなかった」(カノーザ)

ようやくボナム=カーターとエッカートと話をまとめた頃には、撮影開始までの準備期間が2週間しか残されていなかった。彼の執拗なまでの絵コンテ作りは、2台のカメラでの効率的な撮影に不可欠であったことが証明された。役者それぞれにカメラが1台割り当てられ、2フレーム分の映像が撮影された。

「映画の大半は対話だ」とカノーザは語る。「そのため、クローズアップであれ、肩越しショットであれ、場面ごとに他の場面が違うことを確認した。焦点距離さえ毎回違う。あるシーンで50mmだった場合、次のシーンでは75にしてレンズを伸ばして、映像の奥行き感をなくし、より深く内面に入り込めるようにした」

 
 
 
 

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