ハンス・カノーザ : ふたつの "会話"
ふたつのフレーム、膨大なカット
スムーズな集中撮影の終了後、編集者が素材をアセンブルした後まもなくプロジェクトから降りたため、プロジェクトがしばらくの間中断した。3週間、数名の編集者と面接を行ったが不調に終わったため、カノーザはプロデューサーに自分に編集作業をまかせるよう話した。カノーザには、ニューヨークの映画学校在学中に学生が撮った映画をSteenbeckで共同で編集した経験しかなかったため、これは非常に大きなリスクだった。「コンピュータに向かって座り、映画を編集するのはこれが初めてだった。自分でキーをたたいた経験がまるでなかった」とカノーザは語る。
映画では2つのトラックを同時に表示する必要があったため、作業はさらに複雑になった。「2つの画面で作業しなければならなかったため、編集の機会は2倍あった」とカノーザは言う。「編集中のカット1つ1つは、前後のカットに影響されるだけでなく、もう片方のフレームのカットにも影響される。同時に両方のフレームの編集を行うのは、強烈な作業だった」
低コストであり、複数のビデオストリームを処理できることから選ばれたFinal Cut Proについて、コリソンから数時間手ほどきを受けただけで、カノーザは映画全体 — 両方の映像 — を思い通りに編集できた。
「Final Cutは本当にユーザフレンドリーなんだ。すべてのコマンドやショートカットについて習わなかったが、覚える必要はなかった。当時絶対に必要だったのは、とにかく映画の制作を進めることだったんだ」(カノーザ)
手製のエフェクト
Final Cut Proは、「カンバセーションズ」の編集だけでなく、驚くべき数の特殊効果の実装にも有効だった。「この映画は、2人の人物がとても親密なシチュエーションで繰り広げられる映画であり、恐竜や爆発は一切ない」とカノーザは語る。「でも映画には、気付かないほどの視覚効果を使った場面が117箇所もある。ある意味、デュアルフレームであるこの映画全体が特殊効果とも言えるけれど」
当初の見積もりでは、これらの目に見えない視覚効果の費用が100万ドルを超え、低く見積もっても30万ドル以上に達した。そのため、ベテランの視覚効果アーティストであるコリソンが、ダンスホールの複雑で精巧な合成映像を含め、視覚効果の大半をMacの編集ステーションを使って自ら行った。
フレンチキス
2005年、カノーザとコリソンは「カンバセーションズ」を数々の映画祭に出品し、テルライド映画祭、東京国際映画祭で賞を受賞した。フランスで初上映されて以来、作品は絶賛されている。画面を2分割して映画をめちゃくちゃにしたと批判した批評家が1人いたものの、映画は35か国で上映が予定されている。
「僕はかねがね、この映画は2人が会話し、性的関係を持つ"フランス映画"だと言ってきた」とカノーザは語る。「しかし同時に、2人の人間が英語で84分間話す映画だから、外国に売れるのかはわからないとも言ってきた。確かに、2分15秒のセックスシーンはあるが、残りはすべて対話だ」
米国での映画の上映を待ち望んでいたカノーザは、映画の封切りにさほど不安はなく、心から満足している。「前にプロデューサーに力説した通り、これはアートシアター向けの映画だ。だが一部のアートシアターでもこの映画は上映しないだろう」(カノーザ)
カノーザは今後「After Dark」を撮影する予定である。「After Dark」は誰にでも受け入れられる吸血鬼のラブストーリーで、脚本は彼がゼヴィンと共同執筆した。彼はこの映画でも監督と編集を兼任するが、すばらしいことに、カノーザだけでなく、女性吸血鬼をこよなく愛する映像編集者もFinal Cut Proで編集を行うことになっている。
その後は、これもまたゼヴィンの脚本で、同名の小説が原作のロマンチックコメディー「Margarettown」の撮影に入る。彼のスケジュールは常にいっぱいだ。「生まれてから17年間、映画なしの生活だった。できれば、映画制作で残りの人生を埋めたいと思っている。休暇はいらない」(カノーザ)



