株式会社テレバイダー・
エンタテインメント:
映像コンテンツ制作の未来型
2011年の地上アナログ波停波へ向けて、放送業界にいくつかの変化が起こりつつあると言われる。その1つは、本格的な多チャンネル時代の到来である。アナログ波より遙かにデータ量が多いデジタル放送が普及することで、CS放送やケーブルテレビのような多チャンネル放送が一般に広まるという。
しかしその一方で、番組数の増加による制作費の低予算化や、コンテンツの供給不足が起きるのではとも言われている。今回紹介する番組制作会社のテレバイダー・エンタテインメントは、そんな放送業界の未来を考える上で、おもしろいケースとなるのではないだろうか。そして、そのキーとなるのが、MacとFinal Cut Studio 2だ。
放送クオリティのものが簡単に作れる
2001年から2003年の間、東京ローカルながらカルト的な人気を誇った番組があった。東京MXテレビの情報バラエティ番組『テレバイダー』である。エアギターでお茶の間にも知られるようになった、金剛地武志の出世作だ。その内容は、民放キー局の裏番組速報や、無関係のデータでこじつけた天気予報コーナー、当時としては珍しかった番組BBSにその場でレスポンスするコーナーなど極めて個性的で、おもしろいモノにめざとい視聴者の間で大きな話題となった。そのスタッフを中心として2006年9月に設立されたのが、株式会社テレバイダー・エンタテインメントだ。
株式会社テレバイダー・エンタテインメントの始まりは、2005年にさかのぼる。『テレバイダー』のスタッフから、なにかおもしろいことをやりたいという有志が集まって、2005年より『イグザンプラー』というインターネット生放送番組を開始。全くのノンプロモーションだったにもかかわらず、『テレバイダー』を踏襲した荒唐無稽な内容がウケて、2006年4月、テレビ神奈川から『イグザンプラーテレビ』として番組化されることとなり、これを機にテレバイダーが会社化された。
このとき、社名に再びテレバイダーの名を冠したのは、番組名の由来となった“テレビジョン”+“プロバイダー”というコンセプトが、「自分たちで作り、自分たちで視聴者に提供する」という会社の姿勢をよく表していたからと語るのは、株式会社テレバイダー・エンタテインメントのマネージャー・熊沢森郎氏である。実際に、『イグザンプラーテレビ』の後継として放送された『イグザンプラードラマ』では、テレバイダー・エンタテインメントも営業やマーチャンダイジングに参加しており、DVDの販売にも関わっている。
「自分たちで資金を調達して、自分たちで制作して、自分たちで提供しましょうと。まぁ、思い通りにいかないこともありますが(笑)、取り組みとして価値がある。そういうときに、助けられているのがアップル製品ですね」(熊沢氏)
テレビ番組の製作工程は分業化が進んでおり、制作を指揮するディレクターやADのほかにも、撮影ではカメラクルーや音声、ポストプロダクションではミキサーや音効というように、様々なプロが関わって1つの番組を作り上げている。プロ用の放送機材には専用のオペレーターがいることもある。だが、限られた予算の枠内で番組を作り上げるためには、作業の合理化が必要になってくる。そこに役立ったのがアップル製品だ。
「コストを抑えて、少ない人数で制作する手だてとしてMacは非常に有効ですね。それに、操作が簡単なので、番組制作のノウハウさえあれば、放送に乗せられるクオリティのものが作れてしまうんですよ」
その効果が最大限に発揮されたのが、インターネット配信された『イグザンプラー』だった。もともとコマーシャルベースとしてスタートしたものではなかったので、予算は限られていた。MacとFinal Cut Studioによる作業は、少人数でハイクオリティの映像を制作するのに、大いに役立ったという。以後、テレバイダー・エンタテインメントの中で、Macの重要性がさらに高まっていく。
株式会社テレバイダー・エンタテインメント マネージャー
熊沢森郎氏
Macで編集後はテープに落とすだけ
テレバイダー・エンタテインメントが現在手がけているのが、神奈川テレビで毎週火曜夜24時45分より放映中の『すずき』だ。インターネットで検索ばかりしていた罰としてロボットにさせられたという、ウド鈴木扮する検索人間・ウドジンが、いろんな人の質問に対して、ネットを使えず苦悶しながら自分の言葉で答えを導き出すというヒーローものだ。このウド鈴木の話の合間に、関根勤が新しい部活を作るコーナーや、G.M.ナイルが日本の警察を礼賛するコーナーなどが挿入される。『テレバイダー』で見せたような、実験的手法がちりばめられた内容だ。この番組では、Macはどのように使われているのだろうか。
「『すずき』はHDフォーマットで、テロップも加工も全部Macでやって、後はテープをダビングして編集所に持っていくだけ。結構やれちゃうんだなというのが率直な感想ですね」
かつてはMac上で絵だけをつないで尺を作ってから、残りの作業を編集所で行っていた。そこから徐々に、映りよくテロップを入れる方法や、テレビ画面に合わせた色合いの調整法などのノウハウを蓄積して、現在ではMacで編集した後はテープに落とすだけというところまで来た。かつては画質に不安が残った部分も、HDで作業するに至りまったく問題がなくなったという。



