ディスバウンドディメンション:
Shakeでデジタル合成をスピードアップ

スキルのない人でも短期間で戦力に

Shakeによる「分業」は、実際にはどのようにして行われているのだろう。尾小山氏は、そのポイントが「ワークフローの確立にある」と語る。「現在、肌修正専門のプロジェクトが動いていますが、これに関してはすべてShakeの中でのフローを決めてあります」(尾小山氏)。

肌修正とは、人間の肌にできたシミや皺を消して、肌の表面の色や質感、輪郭などを整えること。化粧品のCMなど、女性の肌の美しさが求められる映像作りには欠かせない作業である。DBDでは、この肌修正を行うための作業を複数の段階に分けて、マスクの切り方、追いかけのやり方、カラコレの方法などの取り決め、どの段階でどのレイヤーを使うか、フォルダの保存場所はどこにするか、といった細かなルールを定めている。

このShakeのフローでは、まずmove2Dを使ってホクロやシミ、皺などの目立つ部分をマスクで囲って消していく。次に、毛穴やみかん肌などmove2Dでは削除しきれないものや、肌のキメ、細かいシワなどをキーヤーで修正する。この段階での作業はぼかしを施し修正するのが一般的だが、DBDでは肌のキメを損なわないよう、キーヤーでマスクを作ってカラコレしたり、きれいな肌の部分と入れ替えるなどして丁寧に補正、目立たなくしていく。最後に、ディレクターの指示の下、目の下のクマや頬の赤みなどをカラコレで補正し、仕上げの修正を行う。ここまでが通常のワークフローだが、場合によってはワーパーを使って顎を細くしたり、鼻筋を通したり、またシャドウの調整で顔の形や体型を補正することもあると言う。

「最終的な肌の色、チークの色やリップの艶などはクライアントが決めますが、誰が見ても消した方がよいとわかる部分を消したり、完全な肌の状態に補正する作業までを分離し、ワークフローをマニュアル化することで、たとえスキルの低い人でも作業できるようにするわけです。学校を卒業したばかりの人でも、1ヶ月ほどトレーニングすれば戦力になります」(尾小山氏)。

DBD独自のShakeによるスピーディな肌修正

操作性に優れたShakeをスタンドアロンで利用

DBDの佐古陽平氏はディレクターとして活躍する傍ら、自らエディターとしてShakeを使用している。そんな佐古氏にShakeの使い勝手について聞いてみた。「僕は、最初Adobe AfterEffectsを使っていて、それからShakeに移行しました。Shakeは、特にコンポジットに関して言えば、緻密な作業をストレスなく行える点が気に入っています」(佐古氏)。

Shakeでの作業には、Power Mac G5ベースのシステムを使っているが、最近はCPUにIntel Core2 Duoを搭載したスタンドアロンのiMacを使うことも多いそうだ。「会社設立の際に、RAID込みで400万円かけてシステムを組んだのですが、今となっては、レンダリングのスピードはiMacとそう変わらない。同じプログラムを動かすならiMacの方が早いくらいです」(佐古氏)。

ディスバウンドディメンション ディレクター/エディター
佐古陽平氏

尾小山氏は、こうしたマシン性能の向上を目の当たりにして、減価償却に対する考え方がすっかり変わったと語る。「マシンに投資した分は、2年程度で採算を取らないと、3〜4年も経つと性能で見劣りがしてしまいます。新人をいかに早く稼げるようにするか、マシンを買ったらそのマシンでどれだけ稼げるか。今の時代はスピードが命ですね」(尾小山氏)。

HD時代のコンポジットにShakeは欠かせない

尾小山氏には、少ない投資額で誰もがデジタル合成処理を行える時代が到来しつつあることへの危機感もある。「Adobe AfterEffectsが登場した時も、ローバジェットの映像を作るプロダクションが次々と出てきましたが、作れる環境さえ持っていれば仕事が来るという時代は終わったのです。でも、いくらソフトウェアが安くなったとは言え、個人では大量の作業はこなせない。だからこそ、ワークフローを確立してチームとして作業することで、安定したクオリティをキープできるという点が我々の強みであり、他社と差別化できる大きなメリットになっていくと考えています」(尾小山氏)。

DBDと尾小山氏が見据えているのは、地上波デジタル放送とともに映像業界に訪れるHDの波だ。「HD化が進むと、映像制作における『仕込み』の作業量は確実に増えます。解像度を考えれば、最低でも6倍になります。6倍の作業量をこなすためには、仕込みとクリエイティブの部分を分離して作業することは絶対に必要だし、HDでは解像度の高い分、ごまかしがきかない。今まで以上にクオリティの高い仕込みが必要になるでしょう。だからこそ、ミドルレンジのマシンをどう使っていくか、Shakeをどこまで使い込んでいけるかが、我々の発展の大きな鍵になっていくでしょうね」(尾小山氏)。

 
 
 
 
 

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