エドツワキ:
表現の未知なる可能性の追求

高原のビーチパラソルの下で、ペンギンとペンギン頭の裸の男が何やら話している、不思議なレコードジャケット。ペンギン・カフェ・オーケストラは、ブライアン・イーノ主催のオブスキュア・レーベルから76年にデビューした。中心メンバーだったサイモン・ジェフスが亡くなって10年が経った今年、彼らのベストアルバム『PENGUIN CAFE ORCHESTRA -best-』とトリビュートアルバム『PENGUIN CAFE ORCHESTRA -tribute-』(共にcommmonsより)が8月8日に同時発売される。トリビュートアルバムには、坂本龍一+高田漣、高橋幸宏、HAASこと高野寛、嶺川貴子、スティーヴ・ジャンセン、高木正勝など豪華な顔ぶれが集う。今回はこの2枚のアルバムのアートディレクションを手掛けたエドツワキ氏に、ペンギン・カフェ・オーケストラへの想いとデザインのこだわり、Macとの付き合い方について伺った。

好きなアーティストの作品に、仲間と共に関われた歓び

「この2枚のプロデュースを手掛けた伊藤ゴローさん(MOOSE HILL名義でトリビュートにも参加)から、1年ほど前にこの企画を打ち明けられたんです。ペンギン・カフェ・オーケストラはずっと大好きだったし、また彼らに光を当てるというのは素晴らしいアイデアだと思ったので、ジャケットのデザインは僕がやる。と答えました(笑) 参加メンバーの中には友人も多かったので、気のおけない仲間と記念すべきプロジェクトに参加できたという嬉しさがあります。トリビュート盤は実写で、ベスト盤はドローイングでと、それぞれ異なった魅力があって、対になるジャケットにしたいと思いました。そこにオリジナルのジャケット・デザインに対するオマージュ、今の時代に出す意味と必然性を表出させたかったんです。」

エドツワキ

トリビュート盤のジャケットには、「ペンギンヘッド」(※エド氏によるネーミング)を被った女性の姿が。これはエドさんのスタッフ、渡辺さんが二週間かけて製作したもの。

「写真は、70年代にソフト・フォーカスのヌード写真で一世を風靡したデビッド・ハミルトンがモチーフになっています。フィルターを数枚重ねて撮影したデータに、更にPhotoshopで何度もフィルターとノイズをほどこしています。ブックレットには、参加アーティストたちがペンギンのぬいぐるみを持ったポートレートが収録されているんですが、ぬいぐるみだけお送りして、自前で撮って下さったものをデータで送り返してもらいました。それぞれ撮影の状況が違うバラバラなクオリティーのものをレタッチしています。この作業は絵を描いている感覚に近いです。」

わかってほしい、でもわかってほしくない

最近は、21_21 DESIGN SIGHT 第一回企画展・深澤直人ディレクション「Chocolate」、Stop-rokkashoのTシャツ企画「NO NUKES, MORE TREES」参加など、ますます活動の幅が広がっているエドツワキさん。その中でも01年から継続しているのが、自らデザインするファッションブランド「nakEd bunch」である。

「何度かもう辞めようと思ったことがあります。こんな気持ちでやっていてはいけないと自分が一番思ってる。これが最後のコレクションだ。とか思って作ったら、評判がよかったり、若いスタッフが育って頼もしくなってきたり、売り上げが上がってきたり....。思いに反して(笑) そういった周りの状況が自分を突き動かしてくれていますね。」

僕は飽きっぽいんですよ、と笑うエド氏。でも、だからこそ一つの領域に留まらず、まったく性質の違う仕事を並行して行う今のスタイルが、一番自然で肌に合っているのだろう。

「一人でコツコツ没頭するのも好きだし、誰かとチームを組んで仕事するのも好きなんですけど、ずっと一貫しているのは、「素直」と「へそまがり」の共存。「わかってほしい」という気持ちと、「そんなにわかったようなこと言わないでほしい」という相反する気持ちが両方あります。」

作品は美しくエレガントなイメージの強いエドさんですが、その裏には鋭い刃がひっそりと仕掛けられているのかもしれない。

完成度を突き詰めるより、未知の可能性を追求したい

91年に初めてMac(IIci)を買い、それ以来Adobe IllustratorとPhotoshop一辺倒だというエドさん。Illustratorのベジェ曲線でドローイングを製作するようになったのは、93年頃のことだとか。

「あの頃は、仕事をもらったはいいけど、“どうしよう?”って悩みながら仕事してました。でもそこでいろいろ試行錯誤しながら、新しい表現方法を見出していったんです。一連の女性のイラストレーションの作風も、その頃に実験したことがベースになっています」

しかしだんだんテクニックが向上し、頭の中で考えたことが完璧に表現できるようになると、自分を裏切るような表現を生み出せないというジレンマに陥ってしまった、とエド氏は語る。

「最初はヘタウマだったのに、いつの間にか速弾きのギタリストになっちゃった、みたいな感じですね。目指していたんだけど、いざ思い通りにできちゃうとつまらないという(笑) その頃から水墨画や、鉛筆で描くことがまた楽しくなってきて、原画をMacに取り込んでレタッチして仕上げる。というプロセスが、今また仕事に繋がってきています」

一見手描きのドローイングに見えるペンギン・カフェ・オーケストラのベスト盤のジャケットも、実は水墨と鉛筆によるテクスチャーをMac上でレイヤーにしたコラージュ作品である。曲タイトルなどのために組まれたタイポグラフィに至っては、Illustratorで組んだ文字をプリントアウトし、一文字ずつ鉛筆で上からトレースしたものをMacに取り込み、Photoshopで再度組み上げるという手の込みよう。アナログとデジタルの手法が渾然となったやり方で、結果的にはそのどちらでもない新たな表現を生み出している。

今のメインマシンは初代G5で、iPodは初代から使っているというエド氏。常に時代と共に変化してきた彼が、これからどんな新しい世界を切り拓いていくのか、その活動から目が離せない。

 
 
 
 

one to one

one to one

専任トレーナーと、お好きなトピックを、あなたのペースで。One to Oneプログラムなら、アップル製品についてさらに深く、もっと速く学べます。

 
さらに詳しく

製品を購入する

Apple Online Storeでは24時間いつでも購入できます。電話での購入はフリーダイヤル0120-993-993まで。