FILM: クリエイターが追い求めた環境

スカイウォーカーサウンドと専用回線で接続

FILMを語る上でもう一つ欠かせないのが、ルーカスフィルムの音響制作部門であるスカイウォーカーサウンドと専用回線で接続されている点だ。この設備の導入には、フジテレビジョンの強い意向が働いていると言う。「フジテレビとスカイウォーカーサウンドとの関わりは、映画『踊る大捜査線2』の国際戦略版『BAYSIDE SHAKEDOWN 2』からです。迫力のある音作りのために、スタッフがサンフランシスコ郊外にあるスカイウォーカーサウンドまで赴いて打ち合わせと確認を繰り返したのですが、そのために莫大な費用と時間を要したと聞いています」(出納氏)。

現在、FILMのメインのデジタル編集システムには、スカイウォーカーサウンドから送られてきた音響データをデコードする「スカイリンク」が接続されている。仕上がった音データは、Final Cut Proで映像と合わせる。この映像は、直接FILM のスタジオ内に設けられた7.1chプレビュールームに出力し、視聴することができる。2006年公開のアニメーション映画「ブレイブ ストーリー」の音響制作では、いったんスカイウォーカーサウンドと打ち合わせた後、制作途中の確認などはいちいち渡米することなく、このプレビュールームで行われた。最終的な仕上がりを確認する際には、再度スカイウォーカーサウンドまで赴いたが、それでも「BAYSIDE SHAKEDOWN 2」の時よりは大幅にコストを下げることができたと言う。

THX認証コーディネートとDVD制作

プレビュールームはソニー製の46V型モニターと、THX Select2の認証を得たONKYOの7.1ch AVアンプを備えており、編集システムからの出力結果のみならず、ビデオ、DVD、HD DVD、BDなど様々なメディアからの再生にも対応している。「残念ながら、視聴室としてのTHX基準は満たしていませんが、アンプもスピーカーもすべてTHX対応のものを使っています」と語るのは、FILMのDVD制作プロデューサー伊尾喜大祐氏だ。

FILM Producer 伊尾喜大祐氏

THXとは、元々映画館の音響に関する規格として、米ルーカスフィルム社が作った基準。その認定部署は、現在独立してTHX社となり、現在は映画館のみならず、アンプやスピーカー、ホームシアター、DVDなど幅広いジャンルで映像と音響の品質チェックを行っている。

伊尾喜氏は、米THX社とコラボレートし、ハイクオリティな画質・音質を誇るTHX DVD制作の日本における第一人者。「アニメを除けば、THX DVDとしては『踊る大捜査線2』が最初の作品です。現在、国内で制作された実写作品としては9タイトルのTHX DVDが出ていますが、そのうち7タイトルは我々が担当しました」(伊尾喜氏)。

伊尾喜氏がプロデューサーとして制作に関わったDVDはすでに100タイトルを超える。FILMでは、映画のメイキングやビデオポッドキャスト番組の監督も務めていると言う。そんな伊尾喜氏とFILMが制作に深く関わったのが、DVD「それでもボクはやってない」だ。

周防正行監督の11年ぶりの新作映画は、痴漢えん罪事件を通じて日本の裁判制度を描いたもの。硬派な題材ということもあり、監督自身が映画のキャンペーンのために日本全国に出向いた。その全国キャンペーンに密着し、ハイビジョン撮影したドキュメンタリー「周防監督 日本あっちこっち」はビデオポッドキャストとして配信された。この企画・制作・配信を手がけたのがFILM。DVDにも特典映像として収録されている。

さらに、全国キャンペーン時に監督自身がデジカメで撮影した写真も膨大な枚数が収録されている。「当初、写真は約5,000枚ありました。その中から約700枚をセレクトしてDVDに収録したのですが、セレクション作業には、PowerBook G4と、iPhotoとiWebが役に立ちました」と伊尾喜氏は言う。セレクトした写真をiWebにアップして、関係者への確認用に活用することで、お互い顔を合わせることなくスムーズな意見交換が出来たと言う。

DVDメニューの制作もFILMのスタッフが担当した。FILMの作るDVDはメニュー画面に3DCGを多用するなど、従来のものとは明らかに違う。メニューの背景映像には裁判所のセットが使われているのだが、その映像は、セットの見取り図から3DCGで起こしたものだと言う。制作期間は約2週間。「おそらく、我々が日本で一番凝ったDVDメニューを作っているでしょうね」(伊尾喜氏)。FILMではDVDメニュー制作に、Final Cut ProとDVD Studio Proを使用している。また効果音作成には、Final Cut ProやSoundtrack Proなどを使用していると言う。

独自コンテンツの制作にも注力

映像編集スタジオ、CGアニメーションや実写映像の制作プロダクション、またスカイウォーカーサウンドの音響制作、THX DVD制作のコーディネーターなど、さまざまな顔を持つFILMの今後について、出納氏は力強く語る。「これまではメイキング映像や予告編、DVDの制作といった映画の周辺の仕事が多かったのですが、これからはFILMという名前が示すように、映画そのものにより深く関わる仕事をやっていきたい」。また今後の方針として、オリジナルコンテンツの企画・開発にも力を入れていくそうだ。FILMというクリエイターのために作られた新しい「場」から、新たな時代を切り開く意欲的な作品が生まれることを期待したい。

 
 
 
 

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