フジテレビジョン スポーツ局:
Xsanによる次世代放送システムへの一歩
アップルの「オープン性」を評価
フジテレビが数あるノンリニア編集システムの中からアップルを選んだのは、社内における次世代放送システムについての検討が進められていたこととも深く関わっていたのだと言う。撮影用のカメラがデジタルになり、映像がデジタルデータとして記録されるようになった以上、今後の放送システムがテープベースからファイルベースへ移行するのは必然であるという認識自体は、社内にも浸透しつつあった。その一方で、特定のメーカーの製品戦略に則ったシステムを構築してしまうと、後から軌道修正ができなくなってしまうのではないか、と危惧する声も少なくなかった。
その点アップルの編集システムなら、ユーザが求める機能要件に合わせて、他社製品と組み合わせた柔軟なシステムが開発できる。加えて、Final Cut Proという編集ソフトウェアは、すでに全世界で50万本以上の出荷実績があり、リーズナブルなコストでシステムが構築できるというメリットもある。スポーツ局がアップル製品を選んだのは、こうした特長を評価した結果だった。
4台の編集端末で同時作業
フジテレビスポーツ局に導入したシステムは、59TBの共用のXsan Volumeにファイバーチャネル経由で、編集用端末として4台のMac Proを接続し、インジェスト用としてPower Mac G5を1台とMac Proを3台、さらにファイルの送出用として2台のMac Proを接続している。インジェスト用のMac 4台は、英Gallery社のPictureReadyを搭載。取り込まれた映像はXsan Volumeに蓄積され、4台の編集端末すべてからアクセス可能になっている。また、VTRから映像を取り込む際は、編集用のMac Pro 4台で行えるほか、インジェスト用の4台のマシンを使用することも可能である。送出用サーバでは、当初英Gallery社のVirtual VTRを使用する予定だったが、現在は、エンドユーザの意見を取り入れて新たに開発したオリジナルソフトウェアSNV Broadcasterを使用している。「Mac Proは従来に比べると起動時間が早くなり、パフォーマンスも期待通りですね」(小川氏)。今後、さらに本格的な運用に向けて、十分な感触を得られているようだ。
出張先でMacBook Proで編集した映像などは、フジテレビが開発したファイル伝送ソフトであるFileCast®を使用し、インターネット網を通じてIP伝送を行っている。これは、Windowsベースのアプリケーションソフトのため、いったんWindows Serverで受信した後、Xsan Volumeに取り込む仕組みとなっている。アップルのBoot Campソフトウェアを用いて、MacBook ProをWindowsで立ち上げることにより、出張先において1台のPCで編集から伝送までの作業を行うことが可能となった。
ファイルベースのワークフロー確立に向けて
「Xsanを導入した結果、格段にテープの量が減っていくことになるでしょう。多くの番組やニュースで同じ映像素材を使いたい場合、これまでは、使う番組の数だけVTRを回していました。Xsanの導入後は、映像素材をいったんストレージに収録してしまえば、4台の編集用端末で共有できます」と小川氏は、新システムのメリットを語る。
PictureReadyを使用すれば、収録開始数秒後には編集が始められる。プロ野球のナイトゲームが終わるのは通常夜9時から10時半。その夜の「すぽると!(SPORT)」用の編集を、試合の終了を待ってから行うのではなく、試合開始直後から始めることも可能になった。また、ヨーロッパでF1や、サッカーの試合が行われるのは、日本時間の深夜だが、PictureReadyを使ってリアルタイムで映像を取り込んでおくことにより、翌日出勤したらすぐに、当日の「すぽると!(SPORT)」用の編集にとりかかることもできる。時間的な余裕が生まれたことで、よりクオリティの高い映像作りに専念できると現場の評判も上々だ。
Final Cut Proでは、素材をつないで白完パケを作るだけでなく、スーパー入れまで行っている。「ただし、このシステムはまだMAには対応していません。MAの必要なものは、いったんテープに書き出すことになります。MAを行う必要のないものに限って、ファイルの状態で送出サーバに送っています」(小川氏)。送出サーバの運用については、まだテスト的な段階だと言う。
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また、実際に利用してみた結果、いくつかの課題も見つかった。「現状ではノンリニアに慣れていない人が多く、このシステムを使いこなせる人が多くない、という点が、まずは解決しなければいけない第一の課題であると考えています。また、Xsan Volumeに取り込まれた素材を、いつまで保存しておくのか、いつどんなタイミングで消去するのか、といったルールがまだ確立されていない、という問題もあります。これは、我々自身が運用しながらルールを決めていく必要があるでしょうね」。
最後に、今後の予定について小川氏に伺った。「フジテレビ全体が、今はベースバンドからファイルへの過渡期です。アップルの製品は、低コストで導入できる上、Final Cut ProやMotionを使えば、映像を作り込むことができるメリットを持っている。近い将来には、今あるリニアの編集システムもノンリニアに置き換わる予定ですし、今後放送システムは劇的に変化していくでしょう」。



